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各国の思惑

天正二年(1574年)八月

俺は朝廷に呼ばれてきている。

(なにか、問題があったかな?)

俺はこれまで特に問題になりそうなことは無かったので何事かと思ったら官位を与える為だった。今は従四位下、修理大夫で特別に会うことが許されていたが今回の件を受けて従三位、右近衛大将を貰うことになった。


ついでに元服していないのに、嫡男又四郎に従四位下、修理大夫が与えられた。与えられたというか押し付けられた。流石に断ったが前久に「主上のお心遣いがわからんのか!」

と言われ受け取った。


天正二年(1574年)八月

岐阜城 織田信忠

織田家家臣が集まっている。

先の大戦で亡くなった者を供養した後全員を岐阜城に集めた。


「皆に集まってもらったのは他でもない。織田家の今後について話そうと思う」

信忠は全員に今後について話しておこうと思った。


「尼子には領地と父を奪われ、何とか朝廷を使い停戦には持ち込めた」

集まった者の顔が苦痛に染まる。特にあの大戦に参加してた者ほど悔しかった。


「尼子は毛利、石山本願寺、上杉と同盟を結んでいる。また、上杉領内の開発の一部を尼子がしているそうだ」

この情報に皆驚いた。同盟しているとは言え、普通敵になり得るものを領地に入れることなどないからだ。


「織田は徳川と同盟を結んでいるが徳川は三河のみになり風前の灯火と言っても過言ではない状態に陥っている。我らは上杉と、不可侵を結び武田を攻め滅ぼし、北条と手を結ぶ。そして尼子に再度決戦を仕掛ける」

疑問を持つ者がいた。


「殿、それでは更に尼子に差をつけられます。十年という停戦期間の内に四国、九州を平らげる可能性は十分あります。尼子の兵力や兵器をもってすれば可能です」

そう言うのは戦で脚を斬られ歩けなくなった恒興だった。


「織田では尼子に勝てぬと言うのか!」

そう言って怒鳴るのは塙 直政(ばんなおまさだ。

直政は信盛と共に石山本願寺を囲んでいたが久秀の謀反で敗退して戻った来た人物である。


「勝てぬ!!これ以上差が開いては勝てぬから信長様は決戦を行われたのだ!」

恒興が言いきった。


これには秀吉や長秀など尼子と戦った者にとっては現実にそうであると思っていた。


「恒興、ならどうしろと言うのか?」

信忠は怒鳴りそうになったが思いとどまり落ち着いて聞いた。


「関東方面を制圧し、国力を尼子と同等にして同盟を結ぶのです」

これには周りから怒声が響いた。


「尼子に助けられたからと言って同盟などとは何を考えている!」

「多くの者が死んだのだぞ!」

「やり返さなくてどうする!」

「貴様は織田を尼子に売るつもりか!」

怒声は戦いに参加していない者がほとんどだった。秀吉や長秀、光秀などは苦い顔をしながら事実を重く受け止めていた。


(我らが負けたせいでこのようなことになってしまった...)という自責の念に囚われていた。

「静まれ!!」

信忠が大声で怒鳴り黙らせた。


「恒興、自分が何を言っているのか分かっているのだな?」

信忠の拳が震えていた。完全に頭に来ている。


「はい。分かっているからこそ申しています!尼子と争うのは最早無理にございます!」

恒興は斬られる覚悟で言いきった。織田を残すこと。これが一番の目的だった。


「その方、その足では戦えまい...隠居しろ」

信忠は、恒興が今まで織田を支えてきたことを考えて切ることは止めたが隠居させることにした。


「ははぁ...」

恒興は駄目だったかと悔しがる。


「恒興の言うように関東を制圧して尼子と国力を同じにし決戦を挑む。まず、誰か三河の家康の元に行き織田に臣従するように説得してこい」

これには誰も名乗りをあげなかった。無理に決まっているからである。


「誰もいないのか!!」

信忠は怒鳴るが誰も名乗りをあげなかった。


「林秀貞。そなたが行って参れ」

この最悪な役を不幸にも回されることになった。


「恐れながら不可能にございます。徳川家と盟友としてこれまで共に歩んできました。ですので!」


「しかし、武田の侵攻を防げず今や三河一国のみだ。従わなければ潰せ」

信忠は非情な命を下した。


「お待ち下さい!それでは織田は完全に包囲されます。停戦が切れれば上杉、武田が攻めてきます」


長秀は必死に説得したが聞き入れられなかった。


「長秀、そなたは上杉の元へ行き、織田が能登に関与しないことを条件に最低五年、なんとか十年の不可侵を結んでこい」


信忠は、怒りに任せて命令を下した、


「....かしこまりました」

長秀は、力なく頭を下げた。


こうして織田の今後については非情ながらも決まるのであった。


安芸国

吉田郡山城

今、毛利隆元、吉川元春、小早川隆景、国司元相の四人が集まっている。


「元春、元相、それでどうであった?」

「決戦とはよく言ったものでした。敵味方共に多くの犠牲を出しました。しかし、武将の討ち死にでいえば尼子は少ないくらいです。」

元相はそう報告する。


「なんだかんだ言って武力では織田は軟弱すぎた。鉄砲を使った戦と言っておったが全然じゃった」

元春は弱すぎだと言いきった。


「兄上、毛利はこれからどうするのですか?」

隆景は隆元に問うた。隆景は、このままだと毛利は尼子に従属を迫られると危機感を抱いていた。


「毛利としては更に領地を広げないと危ないかもな...」

隆元も、隆景と同じ考えだった。


「殿、今回尼子は援軍を求めたのですから今度はこちらが求めて四国を攻めてはどうでしょうか?」

元相は大国より小国の乱立している四国を狙うべきと進言した。


「確かに今なら行けますね。大友が動かなければですが...」


毛利家の最大動員数は五万だ。しかし、これには領民兵も多くいる。尼子を見習って常備兵を導入したが二万しかいない。今回の援軍はその内の一万五千を送った。


尼子にはかなりの恩を売ったことになる。

援軍のお返しとして兵糧と銭一万貫が届けられたのには驚いた。


隆元は悩んだが毛利家のため戦うことを選んだ。


「四国を制圧する。尼子に援軍を求めよ。総大将は隆景にまかす。元春は大友に備えて待機だ。」


「分かりました兄上。」

「分かったよ兄者」

こうして毛利の方針は決まり、十一月に出陣に向けて準備を行い始めた。


上野のある寺

ここに三人の男が集まっていた。

武田代表 高坂昌信

上杉代表 直江景綱

北条代表 北条幻庵


「此度は呼び掛けに応じ集まっていただきありがとうございます」

昌信の挨拶から始まった。


「して、どのような条件にするのかね?」

景綱は昌信に聞いた。


「南上野を北条に明け渡し、北信濃を上杉に明け渡し、三家で五年の同盟をと考えております。これはそれぞれが敵に集中するため互いの利益となりましょう」


「北条に異論は御座らん。景綱殿、断るのであれば上杉包囲網が出来ることわかっておいでであろうな...」

昌信は幻庵を前もって味方につけていたのであった


景綱は舌打ちをしながら渋々認めた。

「最早断ることは出来まい。認める」

謙信をなんとか説得して景綱は来ていた。実際南上野はほとんど北条に組み換えをしていた。


「それでは三家の繁栄を願いましょう」

こうして相甲越の三国同盟がなった。この知らせは瞬く間に全国に広がり特に東北勢と織田は恐怖した。


「越後の龍(謙信)、甲斐の若虎(勝頼)、相模の若獅子(氏政)が手を結ぶとは!」

唸る信忠は計画の練り直しを余儀なくされるのであった



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