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久秀の隠居 論功行賞

天正二年(1574年)五月

京に来て五日が経った。織田家は撤退の準備をしていた。そんな中、伝令が飛び込んできた。


「石山本願寺の本願寺顕如様が門徒一万を率いてやってこられました」


「わかった。ここに来られるようにお伝えしろ。門徒は申し訳ないが京の外に居て貰え」


「伝令!松永勢二万が京に入り織田家と一触即発の状態です!」


「織田と松永勢に決して争うなと伝えろ、争えば尼子が潰すともな。久秀殿がおればここに来るように伝えてくれ」

「ははぁ!」

はぁ、呼んだのは俺だけどこんなことになるとは...。


俺は溜め息をついて待っていた。

松永勢は引き返して京の入り口辺りまで下がった。 久秀殿がいたらしく護衛の千人と俺が貸した忍達と向かってきてるそうだ。


顕如殿は下間頼廉と護衛二千を引き連れてやって来た。


「顕如殿、お久し振りですな。今回はここで会うことができましたな」


「義久殿、支援ありがとうございました。お陰で皆問題なく過ごすことが出来ました」


兵糧の他に野菜や干し肉なども多く送っていた。その為前久が旨いものが食えたと言っていたのだ。


「しかし顕如殿、一向衆を相手にはしたくはありませんな」


俺は本音を言ったものの顕如は冗談をと言われてしまった。


「さて、世間話はこれくらいにして、今後どうされるのですか?信長を生かしておいてよろしいので?」


「良くないに決まってるでしょう。しかし、帝の勅命では従うしかありません」

と俺が手をヒラヒラさせると顕如は笑い


「あんさんにも、恐れるものがあるんですな。朝廷は敵に回したくないと言うことですか」


「一定の基準はありますがそうですね。朝敵には絶対になりたくないですね」


「南蛮人についてはどうするつもりです?」

顕如は鋭く突っ込んできた。


「当面は、帝の勅の通りです。布教は大名次第で奴隷貿易は徹底的に潰します」

顕如は溜め息をつき、


「それは分かっています。貴方の領地はどうするのですか?」


「布教は認めますが、恐らくなる者は少ないでしょう。南蛮がしている奴隷貿易の話も領内に流しますからね。流石にまだ占領のことは話せませんけどね」

顕如はまた溜め息をつき


「そうか、認めるんか...」

「ええ、なので顕如殿達に頼みたいことがあります」

俺は顕如達、宗教を束ねる者へ頼むことにした。


「何をや?」

「先の奴隷貿易のこと、大友でしていることを全国に広めて貰えませんか?」

顕如は、先に悪評を広げたらええかもと考えた。


「分かった。南蛮の宗教については日ノ本の各宗教の長達の意見は一致しておる。情報集めて広めましょう」


「宜しくお願いします」

こうしてキリスト教についての対応が決まった。


「それと、顕如殿、怒らずに最後まで聞いてほしい相談があるのですがよろしいですか?」


「なんや?改まって?」


「石山本願寺を譲ってもらえないでしょうか?」

俺は頭を下げてお願いした。顕如は目が飛び出そうなくらい驚いた


「あんた!何を言ってるのか分かってるんかいな!総本山を渡せとはどういうこっちゃ!」


顕如は怒るなと言われていたとしても無理に決まっていた。


「代わりの地を京の嵐山周辺に用意し、建設などはそちらの監修の元全てこちらが行うのでどうか移動していただきたい」


場所を聞いて顕如は驚いた、そう遠くないところに浄土真宗の者にとって大事な土地があるからだ。


「あんた、どうやって調べたんかいな?」

顕如はどうやって知ったか知りたかったが答えは貰えなかった。


「本当は親鸞上人が往生した地にしたかったが、朝廷から許しは得られそうになかった。御所に近いから一揆に巻き込まれたくないのだろう」


顕如は悩んだが一存で決められることではなかった。

「この事は私の一存では決められへん。門徒と話して決めるさかい、時間を貰うで」

そう言って顕如との話し合いは終わった。


二刻後

久秀殿が来て話は茶室で行った。

「久秀殿、今回は見事にやられましたな!」


「なに、そちらほどでは御座らん。見事に打ち破りかなりの領地を手に入れたと聞きましたぞ」


久秀は摂津に若狭、それと停戦した時、京、山城、紀伊、河内、和泉、伊賀を手に入れたのを知っていた。


「増えましたので、統治が大変です」

「次は大和かな?」

久秀は不気味な笑みを浮かべて聞いてくる。


「まさか、久秀殿とは同盟を結びたいものです」


「冗談を申せ!本当は家臣にし大和の半分を取りたいくせに」

俺は諦めた。


「ええ、本当はそうしたいですが久秀殿も家臣も納得しないでしょう」


「条件次第ではいいぞ」

久秀はニヤリと微笑み条件を付けてきた。


「若狭はよくても丹波は無理だぞ」

俺は先に言ったが久秀は驚いていた。


「...なぜ、わかった...」

久秀は睨み付けてきた。


「弟の領地だろ。知らないと思ったか?」

久秀は黙った。そこまで知っていたのかと驚いたのと、義久には敵わないと思う自分がいた。


「他の条件はあるか?」

久秀は考えたが思い付かなかった。


「久通に判断させるか...」

久秀は隠居することにした。


「よろしいのか?」

俺は久秀に確認した。


「わしは隠居する。隠居して茶の道を行くとしよう...」

「...私が逃すと思いますか?」

俺が言うと久秀はニヤリと笑った。


「茶が飲みたければ来ればよかろう。わしは家臣にはならんぞ!」

久秀はそう言って茶を点てた。


後日、久通が臣従を申しでて大和半国譲渡する代わりに紀伊半国を持っていった。領地的には若干増える形となった。久秀殿は宣言通り隠居して茶の湯の道に進んだ。


天正二年(1574年)六月

織田が予定より早く撤退していった。それに伴い若狭、摂津、京、山城、紀伊、河内、和泉、伊賀が尼子家の物になった。


俺は遅くなった論功行賞を行うことにした。


「まず、北畠具教。但馬の領地を召し上げるが、若狭一国と丹波半国とする」

丹波は波多野秀治と話を付けているので問題なかった


「次、鉢屋久経。和泉一国とする」

久経は敵陣に一番乗りし滝川一益の首を取ったので大出世した。


「ははぁ!」

久経は嬉しいあまり涙ぐんでいた。


「次、藤林正保、百地正永。その方ら二人で伊賀の国半国づつとする。しかし、伊賀はかなり疲弊しているので、当面は援助する」

「ははぁ!」

二人は故郷を取り戻すことができた。


「次、島清興、藤堂高虎。そなた達は久通から割譲された大和の一部づつとする」


「ははぁ!」


「本城常光。飛び地となるが山吹城周辺と播磨一国とする。それ以外の石見の土地は召し上げる」


「謹んでお受けいたします」


常光は少し辛い思いをさせることになるがそれだけの成果を出したのでこの結果とした。ちなみに元領主小寺政職は依然行方不明で落武者狩りにあったと判断した。


「次、宇喜多直家。約束通り備前一国とする。ただし、次勝手に影で動いた場合は召し上げる」


「ははぁ!二度と勝手には動かぬと誓います」


勝手に裏で浦上を織田に鞍替えさせたのはこいつだ。なので一国与えるが釘は刺しておく。


「次、杉谷善住坊、城戸弥左衛門、伊賀崎道順。その方達の、狙撃見事。それぞれ紀伊の国を一部ずつ与える」

「ははぁ!」


本当は紀伊を三分の一ずつ与えたかったが久兼に反対されてこうなった。いきなり領主は無理だからとのことだ。なので、城主から始めさせた。


ここにいない秋上久家は丹後一国、山中幸盛は但馬三分の二とした。


牛尾久信は石見の一部(石央)が増えた。


宇山久兼は備中一国を渡そうとしたが断られ備中半国と備後一部となった。


他にも大なり小なりの論功行賞は与えた。


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