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織田との停戦

天正二年(1574年)五月

先月京へ上ることが決まった後、具教が目を覚ました。顔の傷は運良く目からずれていたので失明せずにすんだ。しかし、当面動くことは医療隊の医師から固く禁じられた。


医療隊に池田恒興、織田信長の怪我についても聞いた。

恒興の方は両足の健を切られているので走るどころか歩くことも出来なくなっており、信長は俺が斬った右腕は動かなくなったと報告が来ていた。


俺は恒興に対して車椅子を貸し出しておいた。これは職人達に戦で腕や脚を無くした者の為に義足と一緒に作ってもらったものだ。まだ現代のものと比べたら最悪な出来だがこの時代においては最高の仕上がりになっていた。


信長と恒興は個室で護衛、監視二百人体勢で見張っている。恒興には人を付けており、ある意味客人対応だった。


他の者は牢屋だが環境は出来るだけ良くしている。信長も腕の傷が塞がれば牢屋行きだ。


信長が個室なのは医療隊からの指示で牢屋だと傷口が化膿して死ぬ可能性があると言われたからだ。


尼子勝久は打ち首にした。

首は晒すことはなく火葬までした。

最後に話したが、やはり父親の恨みを晴らしたかったそうだ。そして幸清達は見つけ次第殺すと誓った。今回の反乱は幸清達が首謀者だった。しかし、旗印にされたのには変わりなく、打ち首は全員からの意見だった。


宇喜多直家と牛尾久信、尼子倫久と中井久家が合流し後は時を見て京へ行くだけだったが、朝廷から使いが来た。


使いは山科言継様と、近衛前久様、一条内基いちじょううちもとと豪華なメンバーだった。


俺達は下座で伏して待っていた。

「面を上げよ」


言継の言葉で全員が頭をあげた。

「義久殿、久しいな。毎回贈り物もありがたい」


「言継様もお元気そうで何よりにございます。戦の影響で少し量が減ってしまったこと申し訳ありません」


「なに、気にすることではない。その分期待しておるぞ!」


言継は楽しそうに言っていた。よほど気に入っていたのだ。


「義久、本願寺以来だな」

前久も声をかけてきた。


「近衛様もお久しゅうございます。それと、申し訳ありません。本願寺が戦場になり、送る物が変わってしまいました」


本願寺に運ばれていた兵糧は尼子が出したものだった。


「それは構わん。その分旨いものを食わせてもらったわ」

と食べる仕草をしていた。


「それで、此度はどのようなご用件でございましょうか?」

そう聞くと、内基が前に出て書状を広げた。


俺達は伏して読まれるのを待った。


「此度は帝からの勅命である。織田家と和解し停戦し捕虜を返還せよ!」


(やはり、朝廷を使ってきたか。信長を始末するか...)

俺は一人思っていた。


「織田家から京、山城、紀伊、河内、和泉と織田信長と正室の濃姫を人質として差し出す」

その言葉に皆驚きどよめきが走った。


「静かにせよ、帝からの勅命を読んでいるところぞ」

前久の言葉で静かになった。


「停戦の期間は十年とする。そして、その間人質が生きていることを証明するために年二回朝廷の立ち会いのもと織田家臣と面会をさせることとする。依存はないな」


「恐れながらよろしいでしょうか?」

俺が言おうとすると一条は舌打ちをしたが前久が許可をくれた。


「どうかしたか?」


「はっ条件を三つほど御願いしたくございます」


「貴様、帝からの勅であるぞ!」


「まぁ、一条殿、変更は認められておりますので落ちつかれませ。それでどうしたいのか?」


前久が大人しくさせたので追加条件をつけた。


「それでは...一つ、同盟国上杉、毛利と松永、石山本願寺を攻めた場合は停戦は破棄したものとする。ただし、攻められた場合は継続する。二つ、領地割譲について先ほどの領地に伊賀を加えること。最後に近衛前久様を関白にする事にございます」


最後の要求に一条が吠えた。


「貴様!そのようなことが認められると思ってか!関白は帝が決められることぞ!」


前久は驚いていたがその後笑っていた。


「義久、お主約束を覚えていたか!」


石山本願寺で話をした時いつか必ず関白に戻してみせると言ったのである。


言継は一人ため息をついていた。


「はぁ、帝のおっしゃられた通りか...」


言継は懐から菊の御門がついた書状を出し読み始めた。


「もし、尼子義久が近衛前久を関白にする事を条件に出した場合、京の都を護ること条件に認めることとする。その際、御所に来ることを命じる。とのことだ」


「はぁー!?帝がそんな事おっしゃる訳が!」

と一条内基は言継の持っていた書状を奪い取り見た。そこには帝の直筆と印が押してあった。まごう事なき本物である。


これには俺も驚いた。たった一度の謁見でここまで予想されて準備をされていたと考えもしなかった。


「我ら、明後日には軍を動かし京に入ります!!」

俺が言うと、その場にいた家臣全員が頭を下げた。


「これで決まりじゃな」

言継は言うが隣で一条が崩れていた。

俺はすぐに全員に指示をした。


「皆のもの!聞いておったな!帝が我らを必要とされておる!急ぎ支度し二日後京へ上るぞ!」


「おおおおぉぉぉぉ!!」

皆、部屋を出ていき支度した。俺は三人を部屋に案内させた後、久秀殿と顕如殿に書状を書いて送った。


二日後、五万の兵で京へ向かった。

京の入り口で守備していた織田軍二万と戦闘になりかけたが、前久と言継のお陰でなんなく京に入った。俺は軍を五つに分けた。


各大将は、尼子義久、尼子倫久、本城常光、宇山久兼、牛尾久信とし京の四方と御所に向かった。その際、各大将に久秀か顕如殿が来たら迎え入れろと言っておいた。


俺は一万の兵を率いて御所に向かった。

朝廷からはすぐに参れと言われたので着替えて向かった。軍は御所の周りに配置した。


俺は前回も来た謁見の間で正親町天皇を待った。

するとすぐにいらっしゃった。


「面を上げよ」

前久が指示をする。


この部屋には一条内基と近衛前久、正親町天皇の他に誰もいなかった。


「尼子義久、久しいな、息災か?」

前久は答えろと指示してきた。


「は!この度お呼び頂き恐悦至極にございます」


「それで、言継に渡した勅命を果たしてくれるか?」


「ははぁ!御所及び都の護りは我らにお任せ下さい!」


「そなたの忠義痛み入る。任せたぞ」

「ははぁ!」

俺は伏したまま答えた。


こうして短い謁見であったが無事に終えた。

戻ると伝令が待っていた。


「殿、織田家から人質交換を行いたいとのことです」

「わかった。明日行うことにしよう。来た使者に織田信長、池田恒興以外の捕虜を引き渡すと伝えよ」


「ははぁ!」


翌日、関白となった近衛前久が立会人となり人質交換が行われた。


池田恒興が居ないことに文句を言われたが恒興の現状を教え後日送ることで合意した。


人質交換には信忠、長秀、貞勝の三人と女性が侍女と、共に来ていた。


「それで、捕虜をお返しする。それでいつ領地を引き渡されるか?」

久兼が代表して聞く。


「申し訳ないが二ヶ月ほど準備を頂きたい」

長秀が代表して言ってきたので久兼は俺に確認し承諾したことを伝えた。


それと一緒にもし破れば信長の命がないことを伝えた。


織田家から女性が一人侍女数名を伴ってやって来た。濃姫だ。


「そなたが尼子義久か?世話になるぞ」

と言って来た。


濃姫は数日京に、滞在した後出雲に送ることになった。信長については既に出雲に送り出した。護衛と監視に鉢屋衆頭領となった鉢屋久経と秋上久家、山中幸盛、本城春政、三村元親率いる合計二万の兵士によって行われた。


こうして人質交換までは無事に終わった。

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