決着
一刻後
信長が尼子本陣に突撃して一刻が経とうとしていた。
(まだ抜けられないか!)
信長は焦っていた。数が劣る鬼兵隊をまだ抜くことが出来きず、後方は尼子の兵に攻められなんとか持っていた。しかし前は確実に進んではいた。
「なんとしても抜けて尼子義久の首を獲れ~!」
「おぉぉぉ!!」
信長は少しの隙間を見つけ家臣十数人と抜け出す。
目の前には忍に守られた者がいた。
「見つけたぞ!続け!!」
信長達は守られた者に向かって突撃した。
義久視点
俺達は驚いていた。僅かな隙間を抜けてくるとは思わなかったからだ。
俺の周りには鉢屋衆と鉢屋弥之三郎、百地正永、藤林正保がいた。
弥之三郎はすぐに鉢屋衆を迎撃に向かわせた。そのうち勝久と三人の手練れは鉢屋衆では相手にならず弥之三郎、百地正永、藤林正保が相手をした。しかし、一人抜けた。
「殿を守れ~!」
弥之三郎は叫んだが守りに入った鉢屋衆二人を意図も簡単に倒して俺に襲いかかってきた。
俺は刀を抜き相手をした。
南蛮鎧にマントがついていた。
「こんな形で合間見えるとは思っても見ませんでしたな!信長殿!!」
「全くだな!」
俺と信長は斬り合いながら答える。
互いに少し距離をとった。
「貴様の首を上げ、この戦勝たせて貰うぞ!」
「それは断ります!天下泰平の為死ねませんのでね!」
俺がそう言うと信長は突っ込んできた。
「俺が天下をまとめてやる。さっさと死んでおけ!」
信長は全力で斬り込んでいった。義久もなんとかだが全て捌いていった。
「剣の腕もあるとは面倒な奴め!」
「宗厳殿や具教に鍛えられたからな!負けたら地獄で二人に殺される!」
「安心しろ!俺がまとめて地獄に送ってやる!」
そう言うと信長は向かってきた。
場所は代わり尼子右翼の具教と勝家の一騎討ちは決着がついに着いた。
「うぉぉぉ!」
二人共刀で斬り合いをしていたが等々刀が折れた。互いに近くにあった刀を取ったが勝家の方が少し早く斬りかかってきた。
勝家の太刀を避けず具教は一之太刀を放った。
具教は顔に太刀を受け勝家は胴を斬られていた。
互いに倒れたが、立ち上がったのは具教だった。運が良くか悪くか勝家の持った太刀の長さが僅かに短く見た目ほど深く切られてなかった。
「ハァハァ、敵ながら見事なり..」
具教はそう言って勝家に近付いた。
「ワシの負けか...」
勝家は虫の息だった。
「お主の敗けだ」
勝家にそう言うと
「大殿...先に地獄へ..行きま.す...」
そう言って息絶えた。
具教は残った力で大きく
「敵将!柴田勝家!北畠具教が討ち取った~!!」
そう言うとその場に倒れた。
側にいた家臣大橋長時、松田之信によって本陣に運ばれ上杉頼義によって鬼神隊に命令を下した。
「殿が鬼柴田を討ち取った!!皆の者!敵を討ち取れ!!」
「おぉぉぉ!!」
鬼神隊は具教の勝利によって士気が上がり、逆に勝家隊は士気が落ち討ち取られていった。そんな中、鬼玄蕃こと盛政と槍の又左こと利家は必死に立て直そうとしたが勝家と言う大きな柱を失った軍はすぐに崩壊していった。
「利家、ここは俺が引き受ける。生き残りを連れて本陣に引け! これは命令だ!」
鬼玄蕃こと盛政は利家に命令した。
「...分かった。必ず帰ってこいよ」
そう言うと利家は
「全軍撤退!俺に続け!本陣まで下がるぞ!」
そういって周りにいる者からどんどん集まって引いていった。
残った盛政は鬼神隊と対峙した。
「皆、ここで死ぬぞ!死んで後に繋げるのだ!」
盛政は自分の兵の士気を上げ、鬼神隊に突撃した。
左翼でも決着が着いた。
ついに秀吉が全軍撤退の指示を出したのだ。
「皆退け~一人でも多く生きて帰るんじゃ~!」
秀吉は残って一人でも多く逃がそうとしたが小六に殴られ無理やり撤退させられた。
残った小六こと正勝は殿を務めた。
「オメーら!殿は俺達がするぞ!一人でも多く逃がして秀吉の元へ届けるぞ!」
「おぉぉぉ!!」
残ったのは川並衆の者が多かった。始めの頃から秀吉についてきた者達だ。
士気は高く、春政と元親は追撃を断念した。
その頃滝川一益も撤退していたが先回っていた部隊がいた。
鉢屋久経だ。
「待っていたぞ!この前のようには逃がさんぞ!」
久経は前回逃したことを悔やんでいた。今こそ撃ち取ろうとしたのであった。
一益はくそったれと思った。前には久経、後ろには常光と波多野が追撃していたからだ。
「皆の者、前の軍勢を打ち破り撤退するぞ!」
そう言ったもののこちらよりも多くの軍が居たことに滝川軍の士気は下がっていた。
「皆、一人も逃すな!かかれ!」
久経の号令で一気に攻め込んだ。
一益は久経に挑んだが忍でもあった久経に誘い込まれ鉢屋衆に囲まれて討ち取られあっけない最期だった。
中央の長秀の元に勝家討死、秀吉撤退の報が入っていた。中央では鉄砲隊によって多くの犠牲が出ていた。何とか一部、崩せたが兵士が伏せていて八つ裂きにされていた。
「最早これまでか...」
長秀は、苦渋の決断をした。
(信長様、申し訳ありません!)
「全軍撤退!!全員京まで撤退しろ!」
これには光秀と藤孝も同意し、撤退を開始した。
俊通と高虎は追撃するより後方に援軍に向かうことにした。
前方は鉄砲隊のみで守り高虎達一万は、後方の援護に向かった。
本陣後方ではそれぞれ一騎討ちが行われていた。
鉢屋弥之三郎対尼子勝久
百地正永対池田恒興
藤林正保対森長可
島左近 対佐々成政
吉川元春対金森長近
国司元相対不破光治
そして、織田信長対尼子義久だった。
元春と元相は流石と言うか既に首を取っていた。
毛利の武を表した二人だからこそ出来ることだった。これにより、毛利軍と戦っていた織田軍は崩れだしていた。
「織田軍など他愛ないな」
「それは鉄砲が無いからですぞ。武で我らに勝てると思っていたのでしょう。甘いことですな」
元春と元相は織田の弱さに心底飽きていた。
「しかし、本陣を狙うとはいい心がけだな」
元春は、自分達もやってみたいと思っていた。
「まぁ、これで我らの力は見せつけれましたからな?水軍はすでに見せつけておりますから無理なことは言ってきますまい」
元相は毛利の強さを見せつけれたと思っていた。
一方、信長と義久は、互いに言い合いながら斬りあっていた。
「なぜ、俺の下に付かん!お前が織田に付けば天下は盤石と言ってもよかった!」
「始めは考えたさ!だからこそ鉄砲を送ったのだ!」
「なら従え!!」
「断る!!」
互いに全力でぶつかり離れた。
「なぜ、南蛮人をあそこまで受け入れた!奴らの国が、何を狙ってるのかわかってないだろ!」
「わかっている!日の本を飲み込もうとしているのだろう」
信長も情報を集めていたので分かっていた。
「知っていながら何故だ!」
「南蛮の知識を集め対抗する為だ!」
「唐入りを考えたのもその為か!」
そう言うと信長は驚いた。誰にも伝えてないことを言ってきたからだ。
「...何故、知ってる?」
「予想がつくからだ!天下を統一した後南蛮人のように領地を広げるつもりだろう!」
信長の、感情は複雑だった。自分の考えを理解している者がいることとそれが一番の敵であることに。
信長は怒りに任せて突っ込んだ。思いっきり斬りかかった。
「そこまで分かっておきながらなぜ貴様は敵になったのだ!」
俺はなんとか防いだが飛ばされて倒れた。
「殿!」
正保達が叫ぶ。
信長が近付いてきた。俺は立ち上がって刀を構える。俺は信長の後ろを見てあることに気が付いた。
「...信長、尼子のことを知ってるか?」
信長は無視をして近づいてくる。
「尼子の行くところ、常に鉢屋ありだ!」
「殿!!」
恒興の叫びで後ろを振り向いた。
信長は怒りで周りが見えていなかった。
後ろから弥之三郎が棒手裏剣を投げ斬りかかった。
信長は間一髪、手裏剣を避けると太刀で受け止め脇差しを抜いて弥之三郎の腕を斬りつけた。
俺はその隙を逃さず信長を斬った。しかし、信長は太刀を持っていた腕を盾にし、致命傷を避けた。
「殿!!」
叫んだ恒興に隙ができ正永が脚に斬りつけた。
信長は無理な体勢で受けたので倒れた。
「信長を捕らえろ!」
俺が叫ぶと一人の男が信長を組み倒して捕らえた。
藤堂高虎だった。高虎が援軍を率いてやって来たのだった。
「殿!遅くなりました!奇襲部隊はほぼ制圧しました!」
高虎は大声で報告した。
「信長は捕らえた!勝鬨をあげろ!!」
俺は大声で叫び勝鬨が上がった。それによってまだ戦っていた佐々成政、森長可も降伏した。
これにより、尼子と織田の大戦は終決した。