決戦(中編)
中央本陣
尼子義久
続々と両翼の知らせは入ってくる。
右翼は血で血を洗う戦になっている。
鬼神隊と勝家の精鋭がぶつかり合っている。
久家と久兼は立て直しの為に一時後退し、幸盛は生死不明だったが連絡が取れて生きており奇襲を狙っていると報告があった。
対して左翼では久経が春政と元親を、まとめあげて攻めているようだ。
狙撃隊も張り切って援軍に行ったそうなので恐らく、落ちるのも時間の問題だろう。
滝川隊を常光と波多野勢が押さえているそうなので問題はない。
一番の問題は中央だ。
全く動きがないのだ。これだけ戦場が動けば何かしらの行動はあるはずだがそれが全くない...。
探ろうにも、織田忍軍によって完全に守られている。
「何かおかしい...」
俺の呟きに左近が反応した。
「敵が動かないことですよね?」
「あぁ、ここまで動かないのには何かある...何かを待ってる?」
信長が戦った歴史を思い出して考えていた。
今までここまで動かない戦は...
「桶狭間...」
俺はすぐに気がつきすぐに指示をした。
「鬼兵隊後方警戒!!奇襲が来るぞ!」
「殿!伝令です!!」
左近が叫ぶと、忍衆の者が運ばれてきた。
「殿、後方半里(約二㎞)先に敵三万の兵が向かってきています!忍衆で時間稼ぎをしてますが持ちません!」
そう言うと伝令の忍は息絶えた。
「左近、お主の隊と毛利軍を後方に展開しろ!!」
「ははぁ!」
「高虎!」
「これに」
「俊通と共に前方の敵を一人たりとも近付けるな!お前達が崩れれば挟撃される!」
「はは!必ず防ぎます!」
「殿...」
「正永、正保状況は!」
二人は傷だらけだった。
「後数分でこちらの後ろにつきます。これ以上足止めは不可能でした...」
「わかった。忍衆を引かして休め。後は俺達がやる」
「それともう一つ報告が...」
「なんだ?」
「奇襲部隊の大将は信長です!」
「なんだと!」
一方信長は急いでいた。
「急げ!奇襲は気づかれている、対応される前に突撃するぞ!」
「おぉぉぉ!」
「まさか、ここまで忍がうるさいとはな...」
信長は始めは忍からの攻撃に悩まされていたが数の力で押しきったのであった。しかし、僅かに時を稼がれてしまった...。
「勝てたなら忍の使い方を見直さなければな...」
そんなことを思っていたら恒興が来た。
「殿、もうじき敵の後ろです」
「恒興、最後まで付き合ってもらうぞ。もし俺が討たれるなどしたら残りは引かせろ」
「何を縁起でもないことを殿、この戦勝ちますよ」
恒興は昔つるんでいた頃のように言った。
「伝令、先陣の光治様、長近様が突撃しました!」
さて、これが最後だ...尼子義久。
一方尼子側は
忍衆が稼いだ時間のお掛けで鬼兵隊と左近の部隊は展開できたが毛利軍がまだだった。
「秀清、大筒隊は抱え大筒を放った後は前線に行き高虎と合流しろ。乱戦になるのは間違いない」
「ははぁ!」
「伝令!敵が来ました」
忍衆の稼いだ時を無駄にはせん...。
「抱え大筒放て!」
「撃て!!」
秀清の指示で千人の大筒隊が一斉に放った。
それにより、敵前衛は崩れたが後ろからどんどん攻めてきた
「大筒隊下がれ!!」
「全員構えろ!..突撃!」
左近と秀清の指示が飛び交い前線が乱戦に入った。
敵は部隊を分けたのか三部隊で来ていた。
それぞれ左右にいる島左近、吉川元春を押さえて最後の部隊が本陣に突っ込んできた。
「鬼兵隊!お前達の力見せつける時だ!全軍来た敵を一兵残らず叩き潰せ!!」
「おおおぉぉぉぉ!」
織田中央本陣
丹羽長秀、明智光秀
「敵本陣に動きがありましたな!」
「信長様が突撃されたのでしょう・・・我らも行かなくては」
「そうですな...ここで挟撃し勝たなければ」
光秀と長秀の意見は合い、全軍に指示をした。
「左翼、中央は全軍突撃!右翼には時間を稼げと伝えろ!信長様が奇襲されたとも伝えよ!」
長秀は一斉に指示をした。
「全軍突撃!!」
「おおぉぉ!」
光秀の指示で突撃が始まった。
織田軍左翼の具房と信雄は中央の指示を受けて突撃をしたが、幸盛の奇襲と立て直した久兼、久家の部隊に挟撃されて大混乱に陥っていた。
「何でこんな目に...」
信雄と具房は同じことを言っていた。
また、鬼神隊と柴田軍の戦いは鬼神隊が有利に進めており、ついに具教と勝家の一騎討ちが始まっていた
「前回の借りを返させてもらうぞ!!」
「ワシの受けた屈辱、貴様で晴らさせて貰うぞ!!」
具教と勝家の一騎討ちに周りの者は手を止めて見いってしまっていた。
織田軍右翼は防戦一方で狙撃隊のせいでまともに防衛が出来なかった。
「このままでは全滅じゃぁ」
「んなことは分かってる!大将だろう!何とかせい!」
小六と秀吉は、言い合ったが耐えるしかないと結論付けた。
「信長様が義久の首を取るか、わしらが崩れるか時間の問題じゃ!何としても生き残って帰るぞ!」
秀吉は生き延びることを考え出していた。
尼子中央前線
藤堂高虎、遠藤俊通
「まさか、こんなところまで来るとはな~」
俊通は尼子家に仕官した時のことを思い出していた。
兄秀清と鉄砲隊を任せてほしいと、言ったらすんなり受け入れられ、今では鉄砲隊一万三千の総指揮官となっている。
「ここまで重職になれるとは思わんかったな~」
しかも、重要な本陣前の防衛を任された。
「高虎殿、そなたは此度の戦どう思う?」
俊通は近くにいた高虎に声をかけた。
「私は殿に任されたことはしっかりするつもりだ」
高虎自信、そろそろ判断しようと思っていた。
正直まだ決めきれていなかった。しかし、いきなり一万の兵士を任せてもらったのは嬉しかった。自分だけの兵を鍛えることも出来た。
「俺はこの戦で決めねばな...」
高虎は一人呟いた。
「伝令!!敵中央がこちらに攻めてきました!」
「よ~し!鉄砲隊!三段撃ちで敵を仕止めるぞ!」
「おおおぉ!!」
敵は竹束を持って突っ込んできた。
「構え~...撃て!」
六千五百丁が一斉に放たれたが竹束のせいで防がれたようだ。しかし距離は従来の鉄砲の二倍以上の距離で撃っていた。
「まさか、この距離を当ててくるとは..」
光秀は改良された鉄砲があると聞いていたがここまで強力とは思わなかった。
竹束のお陰で突っ込んだが、従来の鉄砲の距離になると竹束を貫通していった。
「それ!倒れたぞ!どんどん撃ち込め!」
俊通はどんどん撃ち込ませた。
一部、柵に取りついた者達がいたが高虎の兵によって八つ裂きにされていった。
尼子本陣
尼子義久
鬼兵隊と敵奇襲部隊とが激突している。
一進一退の攻防をしていたが左近の部隊の方から僅かな兵士達が飛び出し、鬼兵隊と戦闘している部隊の後ろをついた。
「姉川の借り、返させてもらうぞ!!」
ここまで大声が聞こえた。
(隆基のやつだな。張り切りすぎだな~)
後方に突撃した部隊を見ていると人が飛んでいた....。
どうやら真柄がふき飛ばしているようだった。
(剛力ってのは本当なんだな...終わったら鬼兵隊に入れてみるか)
しかし、数が少ないため押さえ込められた。
時間だけが過ぎていった...。