魔王降臨
天正二年(1574年)一月
明智光秀
亀山城に籠城してから一ヶ月が経った。
兵糧は、とうに底を尽き最早籠城をできる状態ではなかった。
信長様からの援軍も来ない...。
「最早兵士達を救うには私の首を差し出すしかないか..」
光秀は最後の評定をしていた。
「殿、ここは全軍で討って出て包囲を破り再起を図りましょう!」
明智秀満は再起を図るしかないと考えていた。
「いや、最早逃げ帰れば追放されるのは分かっている。ここは武士らしく最期を見せつけましょう!」
斎藤利三は最期の突撃をし、明智の名を残すことを考えた。
「...戻っても追放されるならこのまま全軍で尼子に降伏し鞍替えしてはどうか?」
明智光忠は戻っても追放されるならこのまま寝返ろうと思っていた。
「何を馬鹿なことを言っている!寝返ってみろ、残された者はどうなる!皆殺しにされるぞ!」
秀満は激怒した。
「藤孝殿はどう考える?」
光秀は共にいる藤孝に訪ねた。
「ここは再起を図るのが一番。仮に追放されたならどこか他の所でやり直せば良かろう..」
光秀は決心した。
「明日の夜、全軍で敵の包囲を、打ち破り京へ帰るぞ」
一方その頃尼子、波多野陣営
「まさか、ここまで粘るとは...」
重盛は予想以上に粘ったことに驚いていた。
「最早、これ以上はないでしょう。降伏を勧める使者を送りましょう。内容は明智光秀と細川藤孝の切腹で兵士の解放としましょう」
教業は提案した。
「そうだな、使いを出して降伏を勧めよ」
重盛は家臣に対して命令した。
使者は向かうと直ぐに会うことができ、降伏を勧めた。しかし、返答は二日待ってくれと言ってきた。
使者が了承して戻ってきたがこの話を聞いた久家と教業は討って出て来ると予想した。
「重盛殿、この二日間夜間は最大限警戒すべきです」
久家と教業はそう進言した。
「確かにあり得るな...この二日間は篝火を焚き、夜襲に備えさせろ」
「ははぁ!」
その夜篝火が包囲している全ての陣営に焚かれ、城全体が明るくなっていた。
「これでは夜襲は無理だ!」
「恐らく、明日も同じようにするでしょうな」
「誰かに予想されたのでしょう..如何しますか?」
光秀は悩んだが、
「明日の明け方、敵が疲れているところを攻める」
「ははぁ!」
そして二日が過ぎ三日目の明け方、明智軍が包囲している小寺軍を攻めた。
小寺政職は油断していたので混乱していた。
他の所でも奇襲が行われたが、どこも警戒していたのでそこまでではなかった。
「やはり、来たか!皆、敵は腹も減ってまともに戦えない!落ち着いて討ち取れ!」
「おぉぉぉ!」
久家の激で攻めてきていた軍を退けた。
小寺を除く他の場所でもどんどん立て直し明智軍は減っていった。
一刻後、明智光秀達は包囲されていた。
「最早これまでか...」
光秀が死を覚悟した時、法螺貝が鳴った。
これには両軍驚いた。法螺貝が聞こえた方を見ると軍団があった。
旗印は織田木瓜、そして、永楽銭、
織田信長本隊の軍だった。
「光秀達が耐えきった!皆の者!敵を攻め滅ぼせ!」
「おおぉぉぉ!!!」
織田信長本隊が突撃してきた。
重盛は動揺して全軍に撤退を指示した。
「重盛殿!!ここは我らが押さえる!早く退かれよ!教業殿、直正殿も早く!」
殿は久家と幸盛が勤めた。
織田軍の援軍に明智軍の士気は上がり、反撃仕返した。
「信長様が来てくれた!皆のもの反撃せよ!!」
「おおぉぉ!!」
明智軍も反撃し始めた。
幸盛と久家の軍は精鋭だったが数の暴力には抗えず飲み込まれていった。
一刻後、周りには尼子軍の兵の死体で埋め尽くされていた。
久家と幸盛は周りの兵士たちのお陰で逃げることが出来た。
「信長様!」
光秀は信長を見つけると駆け寄った。
「光秀、よく耐えた。我らはこれより八木城を攻める。お主達は亀山城で休んでおけ」
「ははぁ!...信長様、ありがとうございました。しかし他の皆様もいるようですが守りは大丈夫なのですか?」
光秀は援軍が来てくれたのは嬉しかったが数も多く他が手薄になったのではと心配した。
「無用じゃ。既に手は打ってある」
そう言うと信長は行ってしまった。
この後信長達は宇津城、八木城を尽く攻め落とした。
撤退した重盛達は籾井城に集まった。
「重盛殿、今戻りました」
幸盛と久家は無事に戻ったが兵士達は六千まで減った。しかも、生き残った殆どの者が怪我人だった。
「殿に援軍を求めましょう!数が違いすぎます」
「既に送った。今は耐えるしかあるまい」
既に重盛は具教と義久に送っていた。
「直正殿と教業殿、後政職殿は何処に?」
「八上城の波多野殿の元に戻っている。政職殿は知らん」
直正と教業は此度の報告と軍の建て直しに向かった。
政職は城には来ていなかった。小寺軍の者に聞いても
「一番最初に逃げ出した」
としか言わなかった。
今、籾井城には尼子軍一万六千しかいない。
「すぐに織田の軍を調べねば...」
そう言うと偵察を出すのであった。
小寺政職は二度と戻ることはなかった。
数日後、月山富田城では大騒動だった。
「すぐに軍を集めろ!全軍だ!」
すぐに銅鑼が鳴らされ戦の知らせが流れた。
「忍衆、すぐに織田の軍と丹波の様子を調べよ!」
「正永、具教と倫久に出陣し、丹後を固めるように伝令に迎え!」
「ははぁ!」
まさか、信長本人が来るとは...。
一体どれくらい兵が来ているのか...。
俺が軍を整えるのに数日かかった。
兵数は
常備兵 三万
鬼兵隊 五千
鉄砲隊 一万三千
大筒隊 三千
狙撃隊 千
計五万二千
総大将 尼子義久
副将 島左近 藤堂高虎
家臣 三村元親 本城春政 遠藤俊通 遠藤秀清 杉谷善住坊など
他に、宇山久兼、鉢屋久経、にも出陣するように指示をした。
天正二年(1574年)二月
久兼と久経とも合流して総勢七万二千の大軍になった。
道中忍衆の報告で織田軍の全貌が分かった。
滝川一益、 一万
織田信長 三万
丹羽長秀 一万
明智光秀、細川藤孝 一万五千
織田信雄、北畠具房 一万
計七万五千人だと言う。
織田は八木城の改築をしていて、籾井城には攻めてこないようだ。
俺は八上城に寄った。ここには秀治と丹波の赤鬼と青鬼がいた。
「秀治殿、此度は申し訳ない..」
俺は謝罪した。
「いえ、信長本人が来るとは予想しておりませんでしたか」
秀治も信長本人が来るとは全く予想できなかった。
「それで、これからどうするのですか?」
秀治としては奪われた城を取り戻したかった。
「勿論、信長と決戦を致します。奪われた丹波の土地を取り返す為に」
「我々はどうすればいいですか?」
秀治は取り戻す為に戦ってくれることを嬉しく思った。
「また、軍を出せますか?」
「出せますが、被害が多く八千程度しか出せませぬ」
「それでも構いません。お願いします」
「分かりました」
こうして波多野軍八千も加わり、籾井城に向かった。