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戦の後始末

織田、勝久連合との戦から十日後

今、竹田城にいる。

「殿、但馬制圧終わりました」

久綱と幸盛が但馬制圧から帰って来た。


「よく戻った。やはりどこにも居なかったか?」

未だに勝久と盛清は捕まっていなかった。

「はい。それと織田軍の撤退も確認出来ました」

織田軍は立て直して来るかと思ったが、数の不利と丹波丹後が不安定な為すんなり撤退したようだ。


「但馬は一旦久経に任せる」

「殿、久経一人では厳しいと思います」

久兼は今まで治めていたのが謀反した三人だったので一人で治めるには厳しいと考えていた。

「誰がいいと思う?」


久兼は考えて、

「一時的にするなら久経の他に秀久様と横路正光がよいかと」

秀久を最前線に送ることを躊躇ったが一時的と決めているので久兼の案を採用することにした。


「秀久に、俺の鬼兵隊を貸しておこう。もしもの時は頼りになるだろう」

鬼兵隊は怪我人は多いが死人はほとんど居なかった。


戦の中、酷い怪我をした者を他の者が後方に下げ庇っていたからだ。

「秀久達が来たら城に戻る。倫久達は先に帰しておけ」


「ははぁ」

久兼は近く居た者に指示をしていた。


「久兼、久信の容態はどうか?」

「はぁ、少なくとも元気はあります。しかし、怪我が深いので当分動くことは出来ないでしょう...」


「そうか...すまなかったな。援軍をもっと早くに送っていればあそこまで傷だらけにならんで済んだものを..」


「いえ、殿を務めても生きていたのでよかったです」

久信は、五千の兵で殿をし織田軍二万五千を受け止めた。


その結果五千人のうち四千人は死亡、生き残った者も重傷者ばかりだった。


「今年はもう動くことは出来まい。ちょうど将軍が信長と敵対してくれたから丹波と丹後が、壁になってくれる。来年までに全てを立て直すぞ。久兼、手伝ってくれ」

「ははぁ!」


数日後

秀久と横路正光がやって来た。

「兄上、今回始末した者の一覧です。尼子十城の者もいましたので、一族全員討ち取っております」

俺はその報告に驚いた。重臣格がそんなに裏切っているとは思わなかったからだ。

「こんなにも居たのか...」

俺は秀久から渡されたものを見てショックが大きかった。かなりの人数が荷担していたからだ。

(俺が失敗したせいでこんなにも失うとは...)



二十日後

月山富田城に戻った俺は主な家臣全てを集めた。

その中には中立を宣言した常光や盛重、謹慎していた牛尾久信などもいた。


「此度集まってもらったのは今回の反乱についてと今後についてだ」

俺は皆に頭を下げた。それには集まった者全員が驚いた。


「此度の反乱は俺の失敗が原因だ。毛利との戦に勝っておきながら停戦どころか同盟を結んでしまった。幸清や清宗はそれが許せなかったそうだ。常光、お主もそうなのだろう?だから一定の理解が出来ると申したのであろう」


「ははぁ、おっしゃる通りにございます」

常光は正直に言った。


「他に同じように思っている者がいると思う。しかし、俺は毛利との同盟を続けるつもりだ」

その言葉にざわめくが久兼が黙らせた。


「今回の戦で織田とは完全に敵対関係となった。そんな中、毛利との同盟解消は逆に尼子家を危険にさらしてしまう。皆、不服があるかもしれないが協力してもらいたい」


「恐れながら申し上げます。それでは先の戦で捕らえた牛尾幸清様と佐世清宗様の処分はいかがなされるのですか?」

家臣の一人が聞いてきた。


「二人は今までよく働いてくれた。なので二つの選択を与えた。潔く切腹するか、国外追放かだ。二人は国外追放を選び、十日前に丹後に入ったのを確認した」

それを聞いてざわめく。


「それでは久信様はいかがされるのですか?」

牛尾久信について聞いてきた。


「それについては今から説明する。今から七老中と若年寄を発表する。久兼頼む」

そう言って久兼に発表を任せた。


「では殿の代わりに私が発表する」

今回発表するのは久兼と二人で決めたものだ。


「新たな七老中は三人。まず、北畠具教」

北畠具教は驚いた。尼子に来てからまだ短いのに重要な役職を任されたからだ。

周りもざわめいている。


「次に中井久家」

この発表にはなんとなく理解が示された。元々は久包が筆頭家老だった為だろう。


「最後に牛尾久信」

この発表にはどよめきが走った。


「なにゆえですか!」

「幸清は尼子を裏切ったのですぞ!」

「裏切り者の一族を重職にするのですか!」

予想通りというか批判は多い。


「静まれ!」

俺が言うと静かになった。


「幸清は反乱したが久信は自ら謹慎していたので関与なしと判断した。それと久信からは血判状が出されている」

俺はその血判状を見せる。


「これにより、久信にはなんら問題無しと判断し今回七老中に入れることとした」

そう言って説明すると皆静かになった。


「続きを言うが、七老中筆頭家老は本城常光、次席家老を立原久綱とする」

久兼は、発表した。これにより、


七老中

本城常光ほんじょう つねみつ北畠具教きたばたけとものり立原久綱たちはらひさつな宇山久信うやまひさのぶ多胡重盛たこしげもり中井久家なかいひさいえ牛尾久信うしおひさのぶ

となった


「次に若年寄だが、秋上久家と三沢為清みざわためきよとする」


若年寄は

森脇久仍もりわき ひさのり鉢屋久経はちやひさつな秋上久家あきかみひさいえ三沢為清みざわためきよ横道正光よこじまさみつ三刀屋孝扶みとやたかすけ

となった


「さて、尼子家の今後について話したい」

それを聞いて皆一斉に佇まいを直して発表を待った。


「尼子家は泰平の世を目指す為天下を取る」

その言葉にどよめきが起こった。


「今、天下に一番近いのは織田だ。そして今回、敵対したことにより盟約は失くなった」

織田との不戦の盟約は織田によって破られた。


「すでに本願寺と毛利はこちらにつくと言ってきている。上杉とも連絡を取っている」

その事に驚いている者が多かった。


「殿、幕府はいかがするのですか?」

宇喜多直家が聞いてきた。


「昔から言ったであろう。幕府とは縁を切った。もはや関係ない」


「では、丹波や丹後は攻めるのですか?」

「いや、将軍は今や包囲されている。こちらから手を出すことはない。ただ、一色、波多野に文を送る」


「なんと送るのですか?」

直家は分かっていたがあえて聞いた。

「織田に侵略された時、臣従するなら我ら尼子が兵を出す」

これには集まった者も驚いた。


「丹後、丹波を押さえれば京は目の前だ。そうすればあいつが間違いなく動く!」

あいつとは誰か周りの者が話していた。


「あいつと言うのが誰だかわかりませんが、本当に動くのですか?」

「動かしてみせる」

俺は直家に言い切った。


「何か意見がある者は申せ」

「殿、あいつとはどなたのことですか?」

やはり来た。


「私の友人だ。それ以上は伏せたい。もし発覚した時が大変だからな」

何人かは分かったようだが口をつぐむのであった。


「他には無いか?」

皆黙っている。内心不満を持っている者もいるだろう。


重盛が聞いてきた。

「赤穴城、佐世城、神西城、熊野城、馬木城、大西城、但馬は誰が治めるのですか?」


「それについては七老中と決める」


「皆には起請文を書いて貰いたい。拒否してもらっても構わない」

これは久兼の提案だ。今一度尼子を一つにする為だと教えてもらった。

俺がそう言うと常光が出て来て署名してくれた。

「本城常光、これからも尼子家に従うと誓いまする」

「常光、これからも頼んだぞ」

「ははっ!」

常光に続いて多胡重盛も署名してくれた。

これを見て他の者達も署名してくれた。最終的に集まった皆が署名した。その中には宇喜多直家もいた。

(直家は署名したけど守るだろうか?)


その後皆解散し、七老中を集めて領地について話をした。


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