表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/171

戦の終わり

俺が鬼兵隊を突撃させてから一刻半が経っていた。左翼は援軍が間に合ったのか何とか戦線を維持し直していた。右翼は変化が無く、時間を稼いでいるようだった。

中央はと言うと疲れから始めほど圧倒はしていないが押されている程でもなかった。しかし、じり貧なのは間違いなかった。


一方、勝久側も攻めきれないのに苛立っていた。

「中央はたった一万にも満たない、なぜ打ち破れない!」

勝久から見て中央に二万、右翼に織田軍二万五千、左翼に二万三千としていた。

「恐らく義久の鬼兵隊が来たせいかと」

盛清は鬼兵隊が、こんなにも強いとは思ってなかった。

「幸清と清宗は何をしているのだ!」

勝久が怒鳴るのも仕方がない。

元々は中央二万三千、左翼二万だった。

左翼が崩壊し掛けたので三千程、援軍を送り持ち直したのである。

「あれはまさかでしたな。こちらが人数的には有利だったのに崩壊しかけるとは...」

左翼は元々は数的に有利で、幸清も

「左翼は二万もおれば楽勝にございます!すぐに蹴散らして見せましょう!」

と豪語して向かっていっていたのであった。

しかし、一万五千の兵士に戦線を崩されかけたのであった。

「織田も一度は崩したのに立て直されるとはな!」

右翼を見て文句を言う。

「それは仕方ありません、中央から援軍に向かわれましたので」

盛清はなんとか宥めようとするが内心織田が好機を逃したことに腹が立っていた。

「数はこちらが有利です。後は時間の問題です」

「それもそうだな」

勝久は落ち着くように自分に言い聞かせていた。


一方の織田軍

「一度は崩したのにまた立ち直られるとは...」

勝家は建て直されたことに腹が立っていた。

「仕方ありません。あの殿がかなり粘ったので。味方に欲しいくらいです」

与力としてきていた鬼玄蕃こと佐久間盛政は感心していた。殿の大将らしいものと戦ったが討ち取るまでにいかなかった。

「叔父貴、俺達が突撃してもう一度崩してみようか?」

槍の又左こと前田利家がやって来た。

「利家、それは無理だ。鉄砲が邪魔で出来ない」

佐々成政が鉄砲が邪魔なのを言ってくる。

「内蔵助の言う通り、今突っ込めば鉄砲のいい的だ」

勝家も鉄砲に手を焼いていた。

「あの鉄砲が邪魔で仕方無いが、そう長くは続かないだろう」

勝家はそう考えていた。実際最初ほど玉が飛んで来なくなっているからだ。

「一益と、藤孝にもう少し粘り鉄砲が止まるのを待たせろ」

「はっ!」

伝令は二人の元に向かっていった。


倫久、久兼、久経軍

「鉄砲は後どれくらいもつ?」

玉が少なくなっておりいつ失くなるか気が気でなかった。

「後数回が限界です!」

その答えに苦しい顔をした。

「撃ち方をやめ、敵が近づいてくるのを待って斉射しろ!」

それを聞いた俊通はその案に賭けることにした。

「撃ち方止め!号令まで待て!」

その声で射撃が止まった。

織田軍は止まったことに警戒したが何もないことに鉄砲の玉が切れたと思い突撃していった。

「引き付けろ...今だ撃て!」

倫久の号令で再度射撃する。

突撃してきた織田軍を一斉に屠った。

流石に五千を越える鉄砲の斉射で織田軍の損害は酷かった。

「勝手に突撃しよって...」

勝家は部下が我慢できず勝手に突撃し甚大な被害を被ったのに怒りを覚えた。

「叔父貴!死人は少なかったけど、怪我人が多すぎる!」

利家は現状を報告する。

「竹盾を構えさせて、突撃させよ!敵は今のが最後であろう」

勝家の予想は的中していた。


「倫久様、玉が尽きた!鉄砲隊下がれ!」

俊通は鉄砲隊を下がらせた。

「くそ、尽きてしまったか...歩兵前へ!密集陣形!決して臆するな!」

倫久はなんとか士気を高めようと声を張り上げた。

「で、伝令!久経様から敵も遊撃隊を出して来たのでこれ以上隙を突くことは出来ないとのことです!」

久経は援軍に来てから敵側面を奇襲し続けていたが一益率いる一団がそれを阻止する為に向かってきたのであった。

ついに倫久と勝家の軍の白兵戦が始まった。

そんな激戦の中、一つの軍勢が現れた。旗印は笹竜胆...北畠具教の軍勢だった。

「やっと来た、待ちわびたぞこの時を!!」

具教は刀を抜き

「皆の者!敵は織田軍!決して一人も生かして帰すな!!」

「おおおぉぉぉぉ!!」

「斬り込み隊、わしに続け~!!」

具教を先頭に勝家本陣に突撃した。

数は五千しか居なかったが士気は最高潮だった。

「敵の新手か!皆の者あの者達を討ちとれ!!」

勝家は本陣と後方の軍を向かわせたが切り込み隊の強さに驚かされた。

勝家の精鋭が蹂躙されているからだ。特に具教に向かった兵士は皆一刀両断されていた。

「おのれ~、わし自ら引導を渡してやる」

勝家は具教を討ちに行こうとしたが

「殿!お退きくだされ!ここは私が殿を務めます!」

柴田家家老山中長俊は必死に勝家を抑えた。

「利家!成政!殿を連れて退け~!」

そう言われて二人は勝家を無理やり連れ出して退き始めた。

「盛政!伝令を出し、藤孝様と滝川様に撤退と伝えろ!お主も退け!」

佐久間自身も退かせようとしたが退かなかった。

「私も残ります。山中様御一人では無理でしょう」

そう言われ腹は立ったが事実なので受け入れた。

「わしはあの鬼の対処をするから、お主は前線の部隊を頼む。殿が退いたらそのままお主も退け」

「分かりました」

そう言うと前線に向かっていった。

「さて、皆のもの殿が退かれるまで粘るぞ!」

「おおぉぉ!」

山中は北畠率いる鬼の軍団に向かった。

前線に向かった盛政は藤孝と合流した。

「北畠には誰が向かった!」

藤孝は具教が居たことに驚き向かっていった部隊が誰なのか気になっていた。

「家老の山中様です」

それを聞いて、撤退できる時間はほぼ無いなと確信した。

「このまま最前線の兵士は見捨てる。今は後ろにいる兵を一人でも多く逃がそう」

盛政は驚いた。助ける為に向かったのに見捨てると言われたからだ。

「何故ですか!今ならまだ、」

「もう、時間が無いからだ!具教に向かった部隊は瞬殺されるだろう。このままでは挟撃され全滅するからだ!」

藤孝は怒鳴った。具教のことを何も分かっていないからだ。

「退くぞ!皆、死にたくなければ走れ!!」

藤孝はそう言うと前線を見捨てて引き上げたのである。盛政も付いていった。

この時すでに具教に向かった部隊は壊滅していた。

一方遊撃とし久経を押さえていた一益はしつこい追撃に苦労していた。

北畠具教が来たと聞いた瞬間撤退を指示したのだ。

「全くしつこい。早く合流しなくては...」

久経はお返しとばかりに追撃した。しかし、戦場から離れすぎたと考え追撃を止めたのである。

「大将首を逃したか...仕方無い戻るぞ!」


一方その頃中央でも変化があった。

久家率いる軍一万が合流していた。

「殿、遅くなりました!」

「いや、助かった!よく間に合ってくれた!」

これで、兵力差はほぼ無くなった。

「全軍を突撃させるぞ。これで、終わらせる」

「ははっ!全軍突撃!」

久家の号令で一万の軍が突撃した。


尼子勝久

この戦は敗けだ。

「退くぞ、幸清と清宗にも伝えてやれ」

「どこに行かれるのですか?」

盛清は聞くと

「織田領に決まっておろう。籠もっても勝ち目など無い。織田軍に合流する」

「では、二人には竹田城に退くように伝えます。時間稼ぎにはなるかと」

盛清は自身が生き残る為に二人を贄としたのである。

「...任せる。早く引くぞ」

勝久は前線の兵士には何も告げず、周りの兵士のみを連れて引いたのであった。


幸清と清宗にも伝令が来て撤退を始めた。二人は指示通り竹田城に向けて撤退をしていたが遠藤秀清率いる鉄砲隊が待ち受けていた。

「放て」

その一言で幸清と清宗の軍は多くの死者を出し瓦解した。追撃に来た幸盛達に二人は捕まったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ