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尼子家対織田、勝久連合軍

元亀三年(1572年)十一月

正永の知らせを受け、合流してから攻めかかろうとしたが向こうも援軍が来ることを知って攻めてきた。

今回は野戦な上、数も向こうが有利であった。しかし、全軍が広がれる程の広さは無かった。

中央は勝久、盛清が来ていた。左翼では倫久、久兼親子が織田軍と交戦している。

今のところ堀と柵を用いて鉄砲の釣瓶打ちで防いでいるがいつまで保つか分からない。


右翼は久綱と幸盛が幸清と清宗を相手に善戦している。

まぁ、幸盛が鍛えぬいた私兵がいるのでそんなもんかと思った。


しかし、中央、目の前の敵である勝久はやりづらい。今まで俺の側で仕えていたこともあり同じ戦法を使ってくる。


大盾を隙間なく並べるスクトゥムをして近づいて来た。盾の表面を鉄板で覆ってるので鉄砲が効かないのである。


俺は一応持ってきておいた抱え筒を撃たせた。

効果覿面だったが、すぐに隊列を直して前進してくる

抱え筒の方は数も十丁しかなく、玉込めに時間がかかっていた。

俊通は鉄砲隊に隙間を狙わせていたが効果は今一つだった。


「俊通、鉄砲隊を下がらせよ。槍隊、密集陣形!相手の側面を突け!」

俺は兵士に指示をした。

しかし、見事に側面も固めて来た。

陣形をスクトゥムからテストゥドに変えてきた。

「抱え筒を持ってる者は敵側面を射て!俊通、開いた所を鉄砲隊で一斉射撃しろ!」


「抱え筒放て!」

俺の号令で十丁全て撃ち、

「鉄砲隊射て~!」

俊通の号令で鉄砲を撃ち込み側面を崩した。


「いまだ!槍隊突撃!」

久経の指示で槍隊が突撃し白兵戦に突入した。

誠秀はテストゥドを崩し、四人一組で攻めてきた。

常備兵は三人組手をさせていたが、全員が三人と戦える訳ではないので一人また一人と数を減らしていった。


一刻半後

事態は変わった。

左翼の倫久達に織田軍が奇襲をかけてきた。

それにより左翼戦線は崩壊し始めた。

そんな隙を逃すことなく織田軍は猛攻を仕掛けてきた。


「好機は今だ!かかれ!かかれ!!」

鬼柴田が激を飛ばし突撃してくる。

「くそ、破られた!、久兼、後退して体勢を立て直すぞ!」

「しかし今引いては中央の本隊の横を突かれます!」

「しかし、このままでは全滅するぞ!」

「父上!ここは私が食い止めますので本隊に合流してください!」

久信は五千の兵を率いて殿を務めた。


一方中央の義久にも左翼の情報が伝えられた。

「俊通、久経を呼び戻しすぐに左翼の援軍に向かってくれ!ここは俺達だけで何とかする」

「わ、わかりました!」

俊通は鉄砲隊を先に行かせ、久経に伝令を出した。

「鬼兵隊!!今こそお前達の力を見せろ!!尼子最強の軍団の力、織田と誠秀達に見せつけろ!」

「おおぉぉぉ!!」

「鬼兵隊、突撃!!」

俺は今の手持ちの最強の手札を切った。これで破られればもう後はない。裏切りが続き尼子家は乗っ取られるだろう。


鬼兵隊は、その名の通り戦場を地獄へと変えていった。誠秀の兵士達が案山子のようにどんどん減らされていく。中には集団で対抗しようとして集まった者もいたがこの乱戦なのでまともに対応出来ず殺られていた。


久経の軍はこの乱戦から下がり、何とか左翼に行けたようだった。


右翼は、始めは善戦していたが援軍が入ったことにより、動きが封じられていた。

左翼は誰かが殿をして一時的に保っているようだが時間の問題だ。


「間に合ってくれればいいが...」

この戦、左翼が潰れるか、中央が崩れるかによって決まりそうだった。

しかし、中央は人数が少ないので押しきるのは難しい。敵本陣には忍衆を送り込んで撹乱工作や、暗殺はしているが今一つだった。勝久が上手く防いでいるせいだろう。

正直、こちらが不利であった。


右翼では幸盛が悔しそうにしていた。

始めは善戦してあっという間に崩せると思っていたが敵が援軍を送ってから守りに徹し、中々、崩せないでいた。


「くそ、時間稼ぎか!」

幸盛達にも左翼の情報が伝えられ焦っていた。

「このままでは左翼が崩れて本陣が狙われる。なんとしてもこいつらを始末して向かわなければ!」


久綱も焦ってきた。殿が鬼兵隊を投入したと言うことは守りを捨てたこと。今左翼が崩れれば殿が危ないからである


「なんとしても行きたいが向かえばこちらが崩壊しかねん!」

右翼は既に全軍を突撃させていた。

それなのに崩せないのであった。


一方場所は代わり、備中では尼子家臣一危険な男が裏で暗躍し始めていた。


「浦上を毛利側から織田に鞍替えさせろ。さすれば義久が勝てば備前を奪う口実が出来、万が一負ければ寝返り浦上の援軍を得れる」

「ははぁ...殿、本当によろしいので?」

「なに、ワシは裏切ってはおらん。浦上が裏切るだけじゃ」

「はっ」

(勝っても負けてもワシには得しかないの..フフフ)


出雲に残された秀久は頭を抱えていた。

既に何人か謀反に荷担しようとする動きが出てきたからだ。

「あーもう、こんな時にこんなに反乱に荷担しようとする者がいるなんて..」

弥之三郎達がまとめた反乱に荷担しようとする者の名簿には元、三村家臣や尼子十城の者もいたからだ。

尼子十城の離反者は神西、熊野、馬来、大西の四家だ。

「これ以上抑えるのは無理にございます。暗殺の許可を...」

弥之三郎は秀久に詰め寄る。

「しかし...」

秀久は悩んだ。元三村家臣等は始末しても問題ないが、尼子十城の方は重臣なので問題だった。

「このままでは尼子家は飲み込まれます。どうかご決断を!」


「う~ん...わかった...弥之三郎に任せる」

「ははっ!」


秀久は決断した。これにより、神西、熊野、馬来、大西の一族は全員始末された。

反乱に荷担した元三村家臣も同じように始末された。

後に数の多さから血の粛清と呼ばれることとなった。

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