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傅役と情勢

元亀二年(1571年)八月

毛利元就の葬儀は盛大に行われ、尼子家からも、俺と秋、宇山久兼、筆頭家老牛尾幸清が参列した。父上の時の様なことになることもなく、同盟が長く続いていることから平穏だった。

城に戻った俺は久兼に又四郎の傅役のことを言われ大慌てになった。

既に五歳だが、傅役が付いていなかった。今まで何かと久経と小姓の百地正高がよく相手をして面倒を見ていたので忘れていたのだった。

「久兼、傅役は誰がいいと思う?」

「恐らく、久経は入れるべきかと。既に長い間接してますので外す訳にはいかなくなっていると思われます」

「久経は付けるつもりだが若すぎる。だからもう一人ほしいと思う。正高は家臣として付けるつもりだ」

本来なら傅役は一人だが今回は仕方なく二人にした。

「殿が一番信頼されている者に任せてはどうですか?」

そりゃーそうだなと思い、立原久綱と久経、正高、具教を呼んだ。

「今回呼んだのは、又四郎のことについてだ」

「傅役についてですか?」

立原はなんとなく察した。

「そうだ、又四郎の傅役として久綱、久経に頼みたい。筆頭が久綱、次席が久経だ」

久経は驚いた。

「私なんぞが傅役でよろしいのですか!」

「まだ若いが信頼できるからな。それに今まで見ていたではないか。頼んだぞ」

「ははぁ!謹んでお受け致します!」

久経は嬉しさのあまり泣いていた。

「私も受けさせていただきます」

久綱も受けてくれた。

「そうか、二人とも頼んだぞ」

「ははぁ!!」

「殿、それで私と正高を呼んだのはなにゆえにございますか?」

具教は何の為に呼ばれたか分からなかった。

「具教殿を呼んだのはお願いがあってだ」

俺はわざと殿を着けた。

「何でございましょう」

俺は頭を下げて

「具教殿の子である徳松丸を私に預けてくれぬか」

そう言われて具教は驚いた。

「なにゆえにございますか!」

「又四郎に家臣として友として付けたいのだ。丁度歳も同じだからな」

「義久殿、頭を上げてくだされ。こちらこそどうか我が子をよろしくお願い致します」

と伏して礼をした。

「具教殿、ありがたい。それと、二人の剣術指導もお願いする」

「謹んでお受けします」

俺は礼をした後、正高の方を向いた。

「正高、お主には又四郎の家臣としてと護衛を頼みたい」

「若輩者ながら受けさせていただきます」

こうして又四郎の周りは固めた。

傅役

立原久綱、鉢屋久経

剣術指導

北畠具教

家臣

徳松丸、百地正高


となった。


さて、傅役も決めたことだし但馬も亀井誠秀、牛尾幸清、佐世清宗が統治しているので安定している。馬鹿からの書状は捨てたし後は織田が動くだけか...。

織田は不気味なくらい動かなかった。

信長についての情報も入らない。分かっているのはそれぞれ重臣が兵力増強しているのと、近江の浅井と比叡山に対して侵攻しようとしていることだった。


一方織田家では

信長

「比叡山からの返答は来たか?」

「いえ、まだ何も来ておりません」

信長は比叡山に対して武装解除と土地の明け渡しを要求していた。

「軍の方はどうだ!!」

「そちらは皆様着実に兵を増やしておいでです」

「なんとしても尼子以上の兵を集めておけ。必ず敵対するぞ」

信長は尼子が確実に敵対することを考えていた。その為、四国の長曽我部、武田と結んだり徳川との関係を強化したりしていた。

さらには、丹後、丹波、播磨の調略をしていた。

「調略の方はどうか?」

「はい。織田家ではなく将軍家に忠誠を尽くしているので将軍家の命令なら聞くとしか言ってきません」

「ふん。あの傀儡にも使い道はあるか」

信長は将軍を傀儡としてしか見ていなかった。これが後で痛い目に遭うとは考えていなかった。

「石山本願寺の動きはあるか?」

「いえ、特に変わったことはありません。しかし、雑賀衆が入っているようです」

信長は嫌な顔をした。雑賀衆のせいで死にかけ、現在も戦をするには支障が出る状態にさせられたからだ。

しかし、信長の回復力は凄まじく、既に立ち上がり一人で歩ける程まで回復していた。

「雑賀衆が入っているなら紀州攻めを優先させるか...」

信長は雑賀衆を根絶やしにする気でいた。

「なら今のうち根来衆に接触しこちら側に引きずり込め」

「ははぁ!」

政秀を始めとした近習衆が一斉に動きだした。

「もう少しして返答が来なければ焼き討ちにしてやる...」

信長は尼子が絡んできてから思うようにいかなくなったことで腸が煮えくり返っていた。


「殿、書状が届きました」

書状の表には何も書いてなかった。

「誰からだ?」

「密使だと言うて主の名前を言いませんでした」

信長は書状を読むと笑みがこぼれた。

「これを持ってきた者に伝えよ。書状の件、合いわかった。その時には援軍を送るとな」

まさか、向こうから転がり込んでくるとは...

「これで奴には対抗出来る」

信長の笑みは止まらなかった。


一方二条御所

足利義昭

「誰か返事は来たか!」

「今のところ、浅井、朝倉、比叡山、石山本願寺は協力するとのこと」

藤孝は呆れながら言う。

「他には言ってこないのか!」

義昭は少ないことに腹が立っていた。

「はい。今のところ、何も来ておりません」

義昭は他に、上杉、武田、松永、尼子、毛利、そして何故か徳川にまで書状を送っていた。その為、信長には筒抜けだった。

藤孝は見切りをつけていた。もう、この馬鹿の相手はできないと。

この後、御所を離れた藤孝は二度と戻ることはなく、織田の家臣として迎え入れられた。

この事に義昭は激怒し、また騒ぎまくり残った者達に被害が及ぶだけだった。

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