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二人の帰還

元亀二年(1571年)七月

義久の下に意外な客人が来ている。

「この度は急に訪ねてしまい申し訳ない。是非一度話をしてみたいと思いましてな」

「そうですか。私も是非話してみたいと思うておりました」

俺の目の前にはあの有名な狸こと、徳川家康がいた。後ろには二人の家臣がいた。

俺の後ろには久経と久綱がおり、見えないところで、兵太夫と正永が率いる忍びが護衛していた。正保は情報収集に向かわしていたので居なかった。

「こちらは私の家臣の鉢屋久経と立原久綱といいます」

「立原久綱にございます」

「鉢屋久経にございます」

二人は挨拶をし礼をした。

「これはご丁寧にかたじけない。私の後ろにいるは本多平八郎と服部半蔵にございます」

「徳川家家臣、本多平八郎忠勝にございます」

「同じく服部半蔵正成にございます」

「三河に本多平八ありと言われた本多に伊賀三上忍の服部か...」

俺が言うと二人とも驚いていた。忠勝など自分のことが西国にまで届いているのに内心喜んでいるように見えた。

「二人をご存じでしたか?」

家康は自分の配下のことまで知られていることに少し恐れを感じていた。

「本多殿は姉川での戦いで、服部半蔵は以前から聞いておりました。なぁ、正永」

そういうと、正永が出てきた。

「殿、その者は保長の倅と思います」

「その通りでございます。そういう貴方様は百地正永様にございますね。父から聞いております」

「いかにも。改めて百地正永にございます、以後お見知りおきを」

と礼をした後、俺の後ろについた。

「さて、三河武士はかなり粘り強く強者揃いと聞いておりますよ」

俺は緊張をほぐす為に話をしてみた。

「そう言って貰えると嬉しゅうございますな。しかし、義久殿の近衛兵ですか?あの者達は恐ろしいほど気をたてておったので恐ろしかったですな」

「あれは尼子の中の精鋭部隊ですのでそう言って貰えると嬉しいです」

「そうですか。しかし、羨ましいですな~これだけの数の常備兵を整えて運用できるなど」

家康は本心で羨ましかった。自分とあまり年が違わないのにこんなにも差があることに悔しくもあった。

「銀と貿易のお陰ですな。でなければここまで大きくは出来なかったです」

俺は本当のことを伝えたが家康は他にもあるのではと言いたそうに見てきた。

「家康殿の所では綿花など栽培していると聞きましたが、港を整備して他国や南蛮に流してみては如何ですかな?国内では木綿はまだ価値が低いですが南蛮ではかなり優れた素材として出回っております」

家康はゾッとした。貿易などは家臣と相談した上で決めようと思った。

「そうですな...家臣と相談してからやってみましょう」

この後も少し話をして終わった。


帰り道

徳川一行

「まさか、西国にまで某の名が轟いているのには驚きました!」

忠勝は上機嫌だった。

しかし、家康や正成は違った。

家康の領地について助言できるということは間者が入っており情報が筒抜けになっていると言うことに他ならないからだ。

「半蔵、戻ったら間者を探しだせ。これ以上流されてはいかん」

「はっ」

家康は義久の情報収集能力が高いことが恐ろしかった。情報がいかに大事か家康自身わかっているからだ。

元亀二年(1571年)七月中旬

俺は大和の松永久秀殿のところに行って茶を飲んでいた。

「いつ飲んでも久秀殿の茶は、旨いですな」

「そう言ってもらえると点てる側としても嬉しいですな」

俺は久秀と他愛ない話をしていたが、

「義久殿の送られた書状通りになりましたな」

久秀の言う書状とは永禄の変の前に送ったもののことだ。

「久秀殿、あの書状から大きく変わるかもしれませんよ」

俺はいつの間にか久秀の言う裏の顔になっていた。

久秀は変わったことに驚かず

「やはり、我らは似ているところがありますな」

久秀の顔も不気味な笑みを見せていた。

「しかし、変わるとは尼子は本気で動く気ですかな?」

久秀は尼子が織田と雌雄を決すると思った。

「えぇ、織田が仕掛けたらになりますが、まず間違いなく仕掛けるでしょうからな。尼子は反織田になります」

「して、その後はどうされるのですか?」

「天下を統べ新たな国を作ります。久秀殿、手伝って貰えますかな?」

久秀を誘ったが

「今はまだ織田側におりましょう。その方が面白そうだ。フフフ」

不気味に笑っていた。

「そうですか...では我が配下の忍を数人置いておきましょう。裏切る時には連絡をして下さい。共に織田が驚くことをしましょうぞ..フフフ」

「いいですな、信長はいまだ療養しておるので当面は動きそうにないですが...」

(今動けば大和はわしの物になるが尼子が織田と不戦を結んだから今は静かに待つべきか...しかし、裏工作は続けておこう...)

久秀は裏切ろうとは思っていたが今はまだその時ではないとも思っていた。


「さて、それでは、この二人を戻さないといけないでしょうな」

久秀が手を叩くと三人やった来た。

「二人とも、思う存分武芸を磨けたか?久家、幸盛」

「殿!お久しゅうございます!」

「殿!長きに渡りありがとうございます!」

二人は柳生宗厳殿と一緒に武者修行に出ていた。

「宗厳殿、二人が大変世話になった、お礼を申し上げたい」

と、深く礼をした。

「いえ、私の方こそ助かりました。久家は免許皆伝しております。腕も私と五分にございます」

「...久家は?..」

俺は幸盛の方を見るとまずそうな顔をしていた。

「殿、実は...」

とこれまでの経緯を説明した。師が柳生ではなく、興福寺の胤栄殿で免許皆伝にまで至って槍を頂いたこと。それから宗厳殿と合流して今に至ると。

「まぁ、免許皆伝したなら約束は守ってるではないか。二人とも戻ったら兵士達を鍛えてもらうぞ」

「ははぁ!!」

これで、兵士達も強くなる。

「それでは、今回はこれくらいに致しますか。義久殿、また茶を飲みに来られよ」


こうして久秀との悪だ...話し合いは終わった。

そして二人も帰ってきた。

さて、そろそろ、戻るとするか...。

俺は出雲に帰ることにした。


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