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顕如と、近衛

元亀二年(1571年)六月

糞将...将軍の使いで来た藤孝殿に幕府の御所には行かないことを告げ、石山本願寺に来ている。

本願寺から返答があり会ってくれることになった。

本願寺はまるで城のようであり、城下は何かと賑わっていた。

本願寺山門に着くと下間頼廉が部屋に案内してくれた。

部屋で待ってるとドタバタと走ってくる音がした。

「殿!久しぶりにございますな!」

扉を開けて入ってきたのは鈴木重秀改め鈴木孫一だった。

「孫一、久しぶりだな!まだここにいたのか!」

「本願寺との契約で常時千人ほど雑賀衆を常駐させることになったから居るんだ」

「千人って守りは大丈夫なのか?」

俺は雑賀郷の防備が手薄なのではと思った。

「殿のとこより近いし、根来衆が守ってるからなんとかなる」

と結構簡単に考えていた。

「それならいいが...まぁ約束は忘れるなよ。領地はきちんと残して管理してるんだから」

「分かってるって」

本当に分かってるんだろうか?なんて思ってたら一人の坊さんが、歩いてきた。

「えらいここは賑やかですな~」

「顕如殿!騒がしてすまん、俺達を唯一召し抱えた人だからな」

と孫一は説明していた。

「ほぉ、雑賀衆を召し抱えたんですか」

顕如は驚いた。自分達は雇うことしか出来なかったからである。

「まずは、この度はこの様な場を設けて頂きありがとうございます。私が尼子家当主尼子義久にございます」

「これはこれはご丁寧に。私がここ、石山本願寺の座主の顕如にございます。多くの兵糧助かりました。ここではなんですので移動しましょうか」

と、庭の見える部屋に移動した。

その部屋では一人の男が待っていた。

「顕如殿、遅かったですな。何かありましたか?」

男は聞くと

「いや~客人を連れてきましたのでな。こちらは尼子義久殿です」

「お初にお目にかかります、尼子義久と申します」

「ほぉ、貴方が尼子殿か。秀綱殿には少し世話になったからな」

それを聞いて誰か分かり驚いた。まさかこんな形で会うとは思っても見なかったからだ。

「これは失礼しました。まさか、近衛前久様とはつゆ知らず失礼を申しました」

と謝罪した。

「気にせんでええで。どうせ追放された身や」

「あの馬..将軍はなんで近衛様を追放など愚かなことをしたのですかね」

「今馬鹿って、あんた義昭に付いてるんやないんかいな?」

前久は気になった。

「尼子家は先代義輝の頃に幕府とは手を切りました。それにあんなのに従うなどあり得ません」

元将軍を呼び捨てにし、幕府には従わないと言い切ったことに前久も顕如も驚いた。

「なぜ、幕府に従わないんか?あんたは確か元守護ではなかったか?」

近衛も顕如も気になった。

俺はことの経緯を話した。前久は爆笑した。

「ハハハハ、義輝に喧嘩を売ってよう斬られんかったな!」

「幕臣のお二人がお止めになってましたので」

「御所を出て将軍を討ち取る算段をするなんて恐れ知らずですな~」

顕如は権威もなにも関係ないのかと思っていた。

「それで、今後はどないするんですか?私達と、手を組んで信長に対抗するんですか?」

顕如は味方になるか敵になるか気になって仕方がなかった。

「織田とは不戦の盟約を交わしましたのでこちらからは手を出しません。しかし、同盟国に危害が加えられたら話は別です」

盟約の内容を聞いて二人はなぜ、そんな中途半端な盟約を結んだか考えた。普通、不戦をするなら同盟まで考えるはずだからだ。

「同盟国とは、不戦の盟約を結ぶ前の国のみを言うのですか?」

顕如は同盟を結んで尼子を引き入れたかった。

「恐らくそうでしょう。現状毛利だけですね」

「そうですか...」

顕如は残念がっていたが考えていた前久は何かに気がついたようだ。

「お主、よもや最初から織田や幕府と決戦する気だったのか?」

「近衛殿?」

前久は気がついたようだ。

「さて、なんのことやら?私は内政に取り組みたいだけですよ」

と、わざと誤魔化して言ってみた。

「とんだ狐めが!」

「近衛殿、わかるように言ってもらえると助かるのですが」

顕如は、理解できずにいた。

「こやつはお主(顕如)や毛利を利用して織田と幕府を潰すつもりだ!」

「なんですと!!」

顕如は利用されることと幕府を潰すことに驚いた。

「しかし、なぜ、そんな私達や毛利を利用して倒せるのですか?」

「先程の盟約は大義名分にするためのもの。織田と幕府は共同で署名しておる。もし、織田が破ったとしても幕府が破ったのと同じこと。幕府も共同で署名したからな。幕府自ら進めたものを自分で破っては幕府の存在意義すら危うくなる。信用が全く無くなるからな。」

「大義になるのは分かりましたが、何故、それが私達と関係するのですか?」

顕如は、そこが分からなかった。恐らく、頼廉なら分かったと思った。

「顕如殿、前回あなたはどこに援軍を頼みましたか?」

前久が顕如に聞いてやっと理解できた。

「そういうことですか!」

「でも、それなら最初から敵対した方が早いのとちゃいますか?」

そんな遠回しにするよりは、いいのではと思った。

「それでは織田は倒せても幕府に手出しは出来ん。それこそ三好のように悪逆になるなら、別やけどな」

前久が説明する。

「中々の御彗眼恐れ入ります」

俺は不気味な笑みをしていた。

これには二人ともゾッとした。

「しかし、それでは幕府を討つのには薄いのでは?」

顕如は、懸念を言う。

「その為のワシじゃよ」

前久はもう分かっていた。

「朝廷を動かして倒幕の勅を貰うつもりであろう」


「恐れながらお願いできますか?」

「幕府を潰したその後はどうするのだ?」

前久は返答次第では尼子を潰さなければと思った。

「帝を象徴とした新たな国作りをするつもりです」

「その為に天下を取ると?」

前久には絵空事にしか聞こえなかったがもし実現したらと考えていた。

「はい。私としては本当なら今の領地で民と共に戦がなく平穏に暮らせればいいのですが他国がある以上それは望めず更には外国からの侵略に対抗しなければならないと思っていますので」

それを聞いた前久は一つの疑問を持った。

「ちょっとまて、外国の侵略とは何じゃ?」

俺はキリスト教や十字軍について、日本でもすでに九州では民が拐われ奴隷として外国に連れていかれていることなど二人に知っていることを話した。

二人は驚愕し、顕如に関してはキリスト教は邪教で日本にある宗教全ての敵だと言い切った。

前久は外国との貿易で儲けられることは知っていたがそんなことになってるとは露も知らなかった。

「お主はなぜ、そのようなことを知っておるのか!」

前久は立ち上がり大声で言った。

「私の元に拐われて元奴隷として連れていかれた者が居るのと、呂宋で貿易をしているので情報は入ります」

前久は驚愕し、なんとしても帝にお伝えせねばと思っていた。

「織田は南蛮人とよく居るが知っておるのだろうか?」

顕如は信長が南蛮人を保護していることを不思議に思った。

「話したことがないので分かりませんな」

俺は素直に答えたが近衛にとっては一大事だった。

「義久、お主に手を貸せば防げるのであろうな」

「勿論」

前久は決意した。

「お主に手を貸そう。伝のある上杉にもこの事を伝えておこう。しかし、追放されているから今はそれ以上のことは出来ん。何とかして帝にお伝えせねば...」

前久は義昭のせいで追放されていることに苛立っていた。

「今、山科様を通じて帝に謁見出来るように工作はしております。後、九条様にも伝が作れるようにもしております」

それを聞いて前久は嫌な顔をした。

「今の九条は二条から養子を取っておる。幕府寄りじゃ。止めておけ」

「分かりました。少し様子を見ることにします」

「義久殿、もし帝に謁見すること叶ったなら今のことを必ず伝えてくれ」

前久は本当は自分で伝えたいが義久に頼むことにした。

「私は他の宗派の者にも南蛮のことを伝えましょう」

顕如も宗派を越える必要があると判断した。

「近衛様、いつの日か必ず関白に戻して見せます」

俺はそう言うが絵空事をと言われた。

「さて、話は変わりますが我らは今後どう動きますかな?」

顕如はどうするか聞いてみた。

「御手紙糞将軍から手紙が届いてるでしょうから信長が浅井朝倉と戦をしたら動かれたらいいでしょう。その時は毛利に援軍を頼まれませ。兵糧を運び込ませればいやでも攻撃してくるでしょうからな」

それから俺達三人は今後どう動いていくか相談するのであった。

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