山窩(さんか)との対話と説得
幸盛はすんなり見つかったようだ。
「今回は簡単に見つかりました」
「護衛ということですか、兵士は何人連れて行きますか」
「一人も連れて行かないよ。久信と幸盛だけで十分だ」
「何を考えてるのですか!」
久信と幸盛は同時に言う。
「山窩の者など得体の知れない者も多いのですぞ!」久信は怒鳴り幸盛も頷いている。
「兵士をつれていけば話すことなど出来ないし、変に警戒されてしまう」
「ですが、何かあったときどうするのですか!!」久信も譲らず言ってくる。
「なら、俺一人で行くぞ」そう言い、立ち上がり向かうことにした。
「幸盛、急ぎ二十名護衛を準備しろ。付いていく。」久信はそう言うと急ぎ追いかけてきた。
俺は一人で山窩の者が住む山に向かった。
山の中に入ると人が集まっている所があり、そこで「山窩をまとめる者と話したい」と叫んだ。
人がぞろぞろ集まり毛皮を被った男が「俺がそうだがあんた何もんだ」
「俺は尼子義久。相談したいことがありここに来た」
それを聞いた周りの人間たちは驚きざわめいた。中には殺気に近いものもあり俺は自然と刀に手がかかっていた。
「静かにしねいか!!」
男が叫び周りを黙らせる
「尼子義久といえばこの国の大名の息子じゃないか。そんなのが俺らさげすまれたもの達に何の用だ」
男は威圧しながら言ってきた
「さっきも言ったが相談だ。山窩の民に手伝ってもらいたいことがある」
「俺たちに何の理がある。今までさんざんコケにしてさげすんだお前らが」男が言うと周りも「そーだそーだ」と大声で叫ぶ。
「さげすんできたことに関しては謝罪させてもらう」そう言って頭を下げる
誰かが、「頭下げるだけなんてサルでもできるだろうが」と言った。
「今できるのはこれしかない」今度は土下座をした。
「それでも変わんねぇだろ」周りからはそう言われたがこれしかないのだ。
「静かにしろ!俺らに土下座までした奴はいねぇ。話だけ聞こうじゃないか」まとめ役の男がそう言うと周りは黙った。
「かたじけな…」
「さっさと相談とやらを話しな」言い終わる前に男に遮られた。
「民の食料を山窩の者に取ってもらいたいのとシイタケの栽培をしてもらいたい」
「ふざけるな!シイタケの栽培だと?バカじゃないんか。民の食料って結局かわんねぇじゃないか!」
周りにいた者が騒ぎ出す。
「さっきから静かにしろと言ってるのがわからないんか!!」まとめ役の男が殺気の入った大声をあげる。
一瞬で静かになった。
「あんたよ、話を聞いてやると言ったのは俺だがその内容はふざけすぎにもほどがあるんじゃないか」明確な殺意をあらわに男が言ってくる。
「シイタケの栽培?あれを栽培なんて聞いたこともないしできる訳がない。それに民の食料だ。俺らはあんたの言う民とではないのか。それにまた奪われるだけなんか?」
「出来る」
「はぁ?」
「方法はある。だがこれは山窩の者でなければ難しい。食料についても全てきちんとした価格で買い取る。それを民や流民達に分け与える。俺は貧しい民を無くしたいと思ってる。その為に協力してほしい」そう言って俺は再度頭を下げる。
するとそこへ一人の若い男が慌ててやってくる。
「大変だ!兵士達がこっちに向かってくる。数は少ないけど鎧一式装備してる」
「なんだって!やっぱり嘘だったんじゃないか!こいつを殺そう」周りが騒ぎ出す。
「静かにしろ、移動する、準備のできたものから行け!」まとめ役がそう言うと周りの者が一斉に動き出す。
「話はここまでだ。内容は面白いが信じられない。兵士も来たことだしな」
男はそう言うと立ち去ろうとする。
「おそらく来たのは久信と幸盛と護衛だろう。俺が一人で行くと言ったからな。今回は申し訳ない。また、出直してくる」そう言って土下座をする。
「そうか。俺の名は鉄造だ。」
そう言うと男は行ってしまった
気が付けば周りには何もなくなっていた。そこへ、久信と幸盛がやってくる。
「義久様ご無事で」久信はそう言うと辺りを確認する。
「今回は失敗した。帰るぞ」俺はそう言って城に帰ることにした。
鉄造・・・今度こそ説得しないとな。そう心に誓うのであった。
今回、説得は失敗します。山窩の説得は今後もあります。
山窩のまとめ役がいた方が話が進めやすかったのでオリジナルとして出しました。
また、感想などありましたらよろしくお願い致します。