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上洛

元亀元年(1570年)十二月

使者に送った者が帰って来た。

「信長には会えたか!」

俺は信長の情報が欲しかった。

「いえ、本能寺に行きましたが会うことは出来ず、書状を近習の方に渡しました」

「それで、返答はなんと?」

「分かったとのことです」

...信長は生きているのだろうか?

「殿、上洛は如何しますか?」

久経は聞いて来た。

「予定通り行おう。何か言ってきたら戻ることも考えよう。但馬だけは攻め落とすぞ」

「はっ!準備を進めます」

とりあえず但馬は取ろう。それで足掛かりを作っておこう。


元亀元年(1570年)十二月

やっと信長が生きていることがわかった。

何故わかったかと言うと、馬鹿将..御手紙将軍が騒いだからだ。

信長の生死が分からないなら信長の持っている官位を朝廷に返上させ、堺などの自治権を取り上げるなどと言う暴挙に出たので信長が生きていることを告げ療養中と教えたらしい。

「馬鹿のお陰で分かったが姿を見せないと言うのはよほど重症なのだろうな」

俺は少し安心はしたが油断は出来ないと思った。

すでに歴史は大きく変わっている。まぁ、原因は俺だろうがな。これからどうなるか分からないが俺は生き残ることを第一でやっていくつもりだ。


元亀二年(1571年)一月

「殿、準備ができました」

久経は俺を呼びに来た。

俺は上洛軍の前に出た。

「今回の上洛は織田家の指示でもあるが、我ら尼子が日ノ本中に名を上げる好機でもある。周りを見てみよ。周りには共に戦う仲間達がいる。決して恐れることはない。我らの力を日ノ本中に轟かせようぞ!!」

「おおおぉぉぉ!!」

「手始めに但馬を落とす。但馬での戦で我らの結束とその強さを見せつけようぞ!」

「おおおぉぉぉ!!」

「ではいくぞ!出陣!!」

「おおおぉぉぉぉ!!」

上洛軍のうち約三万三千は月山富田城から出陣した。このまま因幡の鳥取城で全軍が合流して但馬を攻め落とす予定だ。

三万の内訳は

鬼兵隊(近衛兵)五千人

鉄砲隊 一万人

常備兵一万八千人

忍び衆精鋭約五十人

数日後

二月末に全軍が揃った。

宇山久兼、五千人

立原久綱、五千人

佐世清宗、五千人

本城常光、五千人

牛尾久信、四千人

中井久家、四千人

計二万八千

全軍約六万一千人


それぞれ三部隊に、分かれて制圧していった。

山名祐豊は六万もの軍勢に圧倒されて、居城が囲まれる前に降伏した。

但馬制圧は一週間もかかってしまった。

制圧後はすぐに賦役を課して領民を集め道を整備させた。強制的に集めたが賦役はもちろん食事つきに、僅かな賃金もついてきたので領民は大喜びで作業をしていた。

そんな中知らせが入った。

丹波の領主波多野秀治から使者が参った。

「波多野家家臣、荒木氏綱あらき うじつなと申します。此度参りましたのは、公方様の為に上洛されると思っていますが間違いないでしょうか?」

俺は、

「今回の上洛は織田からの要請と、尼子の力を天下に見せつける為だ。今回公方様は関係ない。もし、邪魔をするなら徹底的に潰すので波多野殿にはそう御伝え願いたい。あぁ~、領民には一切手出しはしないのでご心配なく」

と、言うと青ざめた顔をして戻っていった。

それから数日後、

三月上旬

荒木氏綱と波多野秀治が、やって来た。

「お初にお目にかかります。丹波領主波多野秀治と、申します。」

「私が尼子義久だ。此度はこの様な所まで、ご足労痛み入る。それで、何用か?」

「尼子家と不可侵と軍事同盟を結びたく参りました。結ばれましたら我らも、共に京に上ります。領地は通過されても構いません」

「断る」

そういうと波多野は驚いた。

「なにゆえにございますか!」

「我らに利益が無いからだ。通るのを邪魔するなら攻め滅ぼして通るまでだ」

と、威圧して言ってみた。

「ただし、上洛の為に通してもらえるのなら、上洛後は、不可侵の盟を結んでも構わない」

「分かりました。我が領地に危害を加えないのであればそれでも構いません」

こうして、波多野との不可侵の盟約が決まった。


三月末

丹波から京に入ろうと軍を進めると京の入り口に軍勢が集結していた。

旗印は織田木瓜紋に丸に三つ葉葵、その他多数の旗が見える。

「へぇー織田と徳川の軍勢か。それに、足利二つ引きってことは幕府も来てるのか~」

(さて、どうしようか... 数はこちらが上みたいだが、元々、侵略はしないと書いておいたのにな~)

戦をすれば勝てるけど、後がめんどい。

俺は、主な者を集めて話し合うことにした。


一方対陣している織田側でも悩んでいた。

「まさか本当に六万もの軍勢を引き連れてくるとは...」

長秀は半ば嘘であって欲しいと思っていたが現実を見せつけられた。

「こちらは四万、数でも負けている。戦って勝ち目はあるか?」

一益はどう守るか悩んでいた。

「確実な数は分かりませんが、鉄砲もこちら以上に持ってるようですね。前線にいる者は皆鉄砲を持ってるように見えます」

光秀は鉄砲の数を見て、こちらから攻めたら勝てる気がしなかった。

「戦になれば我らの方が不利。今は尼子が動かないから良いもののいつまでこのままかは分からん」

幕府軍を率いている藤孝は尼子が本気で仕掛けてきたらどうするか悩んでいた。

「戦は数ではなく兵の質で決まるもの。あんだけおれば領民兵をつれてきてるに違いない。鉄砲だけなんとかすれば勝てないことはない」

勝家は鉄砲さえ何とかすれば勝てると思っていた。

「それはないでしょう。あれはすべて常備兵でしょう」

と久秀が言う。

「...なぜそんな事が言える?」

勝家は怒りながら聞くと

「私は個人的に義久殿と付き合いがありましてな。手紙などをやり取りしてるのですが、以前やり取りの中で兵士の話をした時、尼子では常備兵を主力として領民兵は最後の最後まで使わないと書いてあったのでな。私もそれを見習って僅かだが常備兵を増やしております」

久秀の言う通り、尼子勢は全員常備兵だった。

「では、まともに戦えば勝ち目は無いと言うことか...」

秀吉の言葉に皆黙り混んでしまった。

「信長殿はなんと指示をされたのですかな?」

家康は、長秀に聞いてみた。

「最低限の守備だけ残して全軍で京の入り口を守れ。こちらからは手を出すなとの指示です」

「これは提案ですが、不戦の盟約を結び京へ招き入れればどうでしょうか?丁度幕府の使いとして藤孝殿もおられることですし」

と家康は不戦を結び招き入れてしまうことを提案した。

「正直厳しいですな。尼子家は幕府とは手を切ると正面切って言われたことがありますし...」

と、藤孝は義輝の時のことを思い出していた。

「本人から聞きましたがあの時は凄かったそうですな~」

と、久秀が笑いながら思い出していた。

何のことか分からない他の者は不思議がっていた。

その為、藤孝が説明すると頭を抱えた。

「将軍を目の前に啖呵を切るとは...」

「そんなに土地が大事なのか?」

「殿(信長)も喧嘩は売ったがそこまでではなかったけどな~」

と色々感想が出る。

「駄目元でもいいので使いを出して見たらどうでしょうか?」

家康はやらないよりはいいと思った。

「では誰が行く?」

勝家は物別れになったときが危ないと思っていた。

「幕府として私が行くしかないでしょう。一応面識はありますし。織田側の代表を決めて下さい」

藤孝は諦めて行くことにした。

「長秀殿が行かれてはどうですか?一応面識はあるのでは?」

光秀が言うと

「私は殿の元に戻りこの事を伝えに行きますので無理にございます」

正直行きたくなかったので逃げた。

「久秀殿、そなたはかなり親しいと言っていたな、行っては貰えぬか?」

と、一益が言うと

「私でよければ行きますが織田の方で無くていいのですか?」

「今回は仕方あるまい。お頼み申す」

と一益と長秀に言われ仕方なく行くのであった。

「条件はどうしますか?」

藤孝が聞くと皆悩んだ。

「無条件だ。こちらから譲ることは一切ない」

勝家は強気で言った。

「では、私は行くのを止めましょう。話し合いにならないでしょう」

久秀は行くのを辞めると言った。

「なんだと...」

勝家は久秀に近付いていく。

「では、勝家殿が行かれてはどうですか?そんなに強気でいられるなら問題ないでしょう」

久秀は勝家の怒りなどそよ風のように感じていた。

「まぁまぁ落ち着きましょう。条件は私と久秀殿に一任していただけますか?その方が話もしやすいでしょう。いいですね?」

藤孝はそう言って全員から承諾を得るのだった。


「それでは藤孝殿、行きますか」

二人は尼子の陣地に向かうのであった。

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