信長、上洛開始
永禄十一年(1568年)八月末
将軍家から二度目の使者が来た。一度目は上から目線で命令しかしてこなかったので追い出した。
二度目の使者は明智光秀と名乗った。
「明智十兵衛光秀と申します。此度は御会いしていただき恐悦至極にございます。こちらが義秋様からの書状にございます」
と一通の書状を渡した。
信長は読むとニヤリと笑う。前回とは違い下手にでてお願いされるように書かれていた為だ。
「よかろう、将軍家から頼みを受け上洛いたしましょう。すぐに公方様に来ていただけるよう手配をされよ」
信長はそう言うと光秀が
「ありがたき幸せ、これで公方様をお戻しすることができます。あぁ、これは幕臣細川藤孝殿に渡すように言われた書状にございます」
ともう一つ書状を渡した。
「細川藤孝?知らんな」
と書状を見て驚いた。書状の主は藤孝ではなく、義久だったからだ。
「拝啓
これを読んでる時には幕府からの使者が来ているでしょう。藤孝殿に一筆書くと言ったのでこのように書かせてもらいました。
さて、あなたが旗印に使う義秋は将軍の器ではありません。しかし、傀儡として一時的に使うのであれば最適です。しかし、長く使うことはお勧めできません。その辺を考えられてから上洛されるといいでしょう。後、使者が明智光秀という者なら引き抜くことをお勧めします。
その者、用兵に優れ鉄砲の腕前も凄く朝廷や公家などの対応もできる優れた人材です。要らないなら私が欲しいくらいです。
尼子出雲守義久」
信長は義久の掌で踊らされている気がしてきた。
「光秀、その方尼子義久に会ったことがあるのか?」
と聞くといいえと答えた
「その方、俺の部下になれ」
と信長に唐突に言われた。
光秀は「はっ?」と鳩が豆鉄砲を食らった感じになっていた。
「上洛の条件だ。お主がわしの部下になれと言うたのだ」
光秀は悩んだが上洛のために部下になることを選んだ。
「謹んでお受けします」
光秀はすぐに義秋の元に戻り、
永禄十一年(1568年)九月
織田家に義秋と、幕臣を連れて帰ってくるのであった。
「そちが、織田信長か。此度は頼むぞ。それでいつ京都に向かうのか?」
上座から言ってくるのが義秋だった。
「三日後に出陣し、近江を通り京へ上ります。今日は宴を用意しておりますのでどうぞ御ゆるりとしてくだされ」
と言うと義秋と幕臣達が驚いていた。
「まことか!!まことに三日後に出るのか!」
義秋は飛び上がり確認してくる。
「はっ、義秋様が来られる前から準備をしておりましたので兵士が集まればすぐに出陣できます」と説明した。
「それは楽しみにしておるぞ!」
と義秋と幕臣は宴に向かった。残ったのは、明智光秀、細川藤孝、織田信長と、重臣達だった。
「信長殿、この度はありがとうございます。それと、あのように浮かれておること申し訳ありません」
と藤孝が謝罪してきた。
「気にするな、もしもの場合は傀儡になってもらうまでだ」
と藤孝の前で言うのであった。藤孝は驚いたが仕方がないとも思った。
「あやつの書状のようにあの者は将軍の器ではないな」
信長は一人、上洛後を考えるのであった。
三日後
同盟国の浅井や徳川の軍を会わせて総勢六万もの大軍が美濃を出立し、近江征伐を開始した。
信長は南近江に入ると佐久間信盛、木下藤吉郎、丹羽長秀に命じ箕作山城を攻略させた。
三人は夕方に攻め始め、その日の夜には落城させた。
その知らせを聞いて驚いたのは和田山城を囲んでいた西美濃三人衆だった。稲葉一鉄は、同じ三人衆の安藤守就、氏家直元を、呼び出した。
「二人とも聞いていると思うが箕作城が落ちた。」
一鉄が言うと
「このままでは我等も危ういのでは?」
安藤が言う。
「危ういとは立場のことか」
氏家が言うと安藤は頷く。
「織田家に西美濃三人衆ありと見せつけねばなるまい」
安藤は立場が弱くなることを恐れていた。
「確かにそうだ、ならば我らの戦働きぶりを殿に見せようぞ」
一鉄は覚悟を決めた。
「では、今から夜襲をかけるか」
氏家が言うと二人とも頷き、同時に攻めることにした。
その一刻後、三人は一気に攻め立てた。
和田山城では逃げ出す準備をしていたのでまともに防衛など出来なかった。結局何人かは逃げられたが、和田山城もわずか半刻たらずで落ちた。この、結果に信長は大笑いをして聞いていた。
翌日六角氏の本拠・観音寺城を攻める予定にした。
六角はあっという間に箕作山城と和田山城を落とされて、困惑し織田軍を恐れた。
「このままでは...」
六角は親子共々甲賀に逃げるのであった。
翌日、観音寺城を攻めようと軍を進めたら城から使者が来て六角親子が逃げたので降伏したいと申し出てきた。
信長はこれを認め、近江はわずか二日で織田家のものになった。
京に入ると東福寺に陣を構え、先陣の柴田勝家・蜂屋頼隆・森可成・坂井政尚の軍は桂川を越え、勝竜寺の三好三人衆の一人・岩成友通を攻めさせた。
三好勢も抵抗したが結局籠城をするしかなかった。
一方その頃大和の松永は悩んでいた。
「やはり、信長に付くのが一番か...」
久秀はここまで織田軍の進軍が早いとは思わなかった。
史実とは違い、信貴山城は落とされず、筒井も蹴散らし大和を荒らされることはなかった。これは、義久から借りた忍びと雑賀衆のお陰だった。ほぼ。大和を治めていると言っても過言ではなかった。
「殿、同盟を言われてはどうですか?」
家臣が言うがそんなの無理なことはわかっていた。
「信長に降伏する。ただし、大和を治める許しを得る」
久秀は降伏し手土産を持っていくことで賭けることにした。
信長は現実で本当に数日で京まで言ったようです次回は久秀が賭けをします。果たしてどうなるのでょう
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