三村滅亡 宇喜多の敗北と仕官
永禄十一年(1568年)四月
久綱達が無事戻ってきた。
ついでに幸清達も制圧が終わったと報告が来ていた。
「殿、三村討伐無事に済みました」
と久経、久綱、久信の三人が並んでいる。
「よくやってくれた。三村一族と家臣はどうした?」と聞くと
「一応連れてきております。ただ、三村一族は保護を約束してしまいましたので...」
と気まずそうに言うが
「仕方あるまい。高松城は落とせなかったんだ。城主は連れてきてるか」
「はい。保護の約束を確認するために来ております」
久綱が言う。
「すぐに会おう。三村一族も連れて参れ」
すると、三村一族と家臣がやって来た。
「お主が高松城城主か?」
と聞くと
「はっ、高松城城主、清水宗治にございます」
と、一人の男が前に出てくる。
「高松城を守りきるとは見事。引き続き城主を任せたい。後、約束は守ろう。三村一族は保護する」
というと三村一族は安堵していた。
「ははぁ、引き受けます。その代わり約束のほどよろしくお願い致します」
と宗治は頭を下げる。見事な忠臣だと思った。
さて、次は三村一族か。
「お前が三村家親か?」
と聞き
「ははぁ」と頭を下げる。
俺は持っていた太刀を家親の首筋に寄せた。
「殿!!」
久綱が慌てる。
「その方の家臣、清水宗治に感謝するのだな。本来ならここが落ちていたぞ。宗治の忠義が見事だった故に許した」
と言って刀を納めた。
家親は何も言えず頭を深く下げる。
宗治も主が切られると思い前に出ようとしていたが久経に、押さえられていた。
「まず、三村家親、そなたは出家し寺に入り此度の戦で亡くなった者の供養をせよ。お主の息子元親と清水宗治は我が直臣として迎え入れる。その他の者も我が家臣として、迎え入れよう。出ていきたい者は出ていっても構わない」
と、言うと全員残ったのであった。
これで備中は押さえたな。後は備前か。
そう思っていたら数日後悪い知らせが入ってきた。
「宇喜多軍、天神山城で総崩れ。長船城まで退却しましたが長船城が降伏し、岡山城まで撤退しました」
「...誠秀はどうだ?」俺は聞くと
「正永様が助けに入りご無事にございます。」
「我が方の被害は...」
「はっ、鉄砲隊千五百人、槍隊二千人、弓弩隊九百人、計四千四百人死亡でございます」
その報告に俺は唖然とした。総勢六千五百人もの大軍がほぼ全滅したということだから。
永禄十一年(1568年)六月
誠秀と正永が残存部隊を率いて帰って来た。
俺は兵士を解散させ家路へ向かわせた。誠秀と正永は広間来させた。
広間には、宇山久信、鉢屋久経、立原久綱、鉢屋弥之三郎がいた。正永、誠秀と、後、男が一人来た。
「正永...包み隠さず話せ...」
俺は威圧しながら言った。俺に昔から付いていた元近習衆は慣れていたが、初めて体験する誠秀ともう一人の男は怯えていた。
「はっ、まずは状況から説明します。我らが合流した時我が軍は天神山城を包囲しておりました。私は誠秀殿に殿の命を伝えて護衛につきました。それから数日して天神山城の包囲を宇喜多軍に任せ、我らは三石城を囲んでくれと宇喜多殿に頼まれその準備をすることにしました。
それから数日して、交代の日になりました。その日は雨で視界が悪くなっておりました。鉄砲は濡らさないように箱に入れ管理しました。そこへ..」
「そこに敵の奇襲を受けて槍隊と弓弩隊が応戦しようとしたが視界も悪く同士討ちになりかねないと弓などは撃てず、槍隊もまとまって対応しておれば何とかなったかもしれないがまとまれず各個撃破され、鉄砲隊は脇差ししか持たないので逃げ惑い殺されていったってところか」と俺が言うとその通りですと答えた。
丸っきり桶狭間と同じじゃないか。
「誠秀何か言うことはないか」
俺が聞くと
「も、申し訳ありません」
としか言わなかった。
「誠秀その方に命を下す。失った部隊の立て直しを早急に行え。ただし、領民を強制的に兵士にするのは禁じる。出来なければ打ち首と思え」
「ははぁ!!」と誠秀は言う。
「ところで正永、そこにいるのは誰だ?」
威圧したままだから誠秀と同じで汗がだらだら出てるのがわかった。
「宇喜多直家殿にございます」と言う。
「ほぉ、宇喜多直家直々に来るとは何事か?」
俺はつい、威圧したまま言ってしまった。
「宇喜多直家にございます。此度は暗殺に援軍と、多くの御助力をしていただいたのにこの有り様、深くお詫び申し上げます」
「無用じゃ、それで用件はなんだ?」
俺が聞くと。
「はっ、岡山城を差し上げますので家臣にして頂きたくお願いに上がりました」
まさかの発言に驚いた。てっきり、更なる援軍か従属をと言ってくると思ったからだ。
「なぜ、従属ではなく家臣にしろと?」
「従属や援軍は断られることはわかっております。なので、家臣となることを選びました」
「それだけじゃないだろ」と追求する。
「....」無言を通していた。
「あわよくば岡山城を浦上に攻められれば尼子本隊が向かい、備前を獲れると思ったのだろう」俺が言うと
「...その通りにございます」
直家は深く頭を下げる。
「お主の願い聞き遂げよう。されど、備前は諦めろ。毛利の同盟国を攻める訳にはいかん」
「..ははぁ、よろしくお願い申し上げます」
と悔しそうに伏して頭を下げた。
なぜか、直家が家臣となった。
「弥之三郎、あいつに手練れの監視をつけておけ」
「はっ」
さて、毛利に伝えておかないといかんだろうな。嫌がらせも兼ねて浦上にも伝えてやろう。
こうして、備前を巡る戦は終わった。
一方部屋を出た直家
「なんなのだあの男の威圧は...これでは尼子を乗っ取るのは無理だな」
直家はさっきの威圧に恐怖していた。
「どのみち、尼子を裏切っても後がないか」
と諦めるのだった。
謀聖が一人宇喜多が家臣に入りましたが...恐ろしい...
監視は絶対ですね
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