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久信の帰還と貿易

永禄九年(1566年)一月

俺は落ち着かなかった。

「殿、落ち着かれませ。そんな事では子が産まれた時、更に慌てますぞ」

と久経に言われ。

「しかしだな...気になって仕方がないんだ」

「先ほど怒られたのではありませんか」

さっき部屋に入ってしまって産婆に怒られたのであった。

何だかんだで一刻がたった頃、赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。

俺はまた部屋に入ろうとしたところを誠秀と久経に止められるのであった。

女中が部屋の外に来て、入っていいと言ったのですぐに向かった。

「殿、おめでとうございます。男の子でございます!」

と言われた。

俺は部屋に飛びこんだ!

「秋、大事ないか!それとよくやった!」

と横になっている秋に声をかけた。

「殿、男子でございます」

秋は起き上がろうとしたので止めた。

「無理をするでない」

「殿、この子に名前をお付けください。」

秋は言ってくる。

「あぁ、もう決めてある。名は又四郎だ。偉大な曾祖父の幼名から取ったものだ」

「又四郎...良い名前ですね」

と言った秋は疲れたのか眠ってしまった。

それから一月後、秋はすっかり回復し又四郎を抱いて部屋に来ていた。

部屋には毛利元就がいる。何故いるかと言うと、秋の出産を聞いてやって来たのであった。

「...一年位前には殺しあってたのに何もなかったかのように来るとは...」

俺は何を考えてるんだ、と思いながら見ていた。

それと一緒に「もし、父上が生きておられたらあんな風に可愛がっていたのかな」

と心の中で思ってしまった。

俺と護衛の久経がいるのに元就は気にせず又四郎をあやしている。

...なんか、あやすの上手くて悔しいな、と心の中で思ってしまった。

元就は数日滞在したのち帰っていった。


永禄九年(1566年)九月

美保関に不審な南蛮船が近付いてきていると連絡があり急ぎ鉄砲隊三千人を率いて向かった。

到着すると船が止まっており、小舟に男が六人乗ってやって来た。俺は警戒したが乗ってる一人の男の一言で緊張が一気に無くなった。

「殿~ただいま戻りました~!!」

石火矢を頼んでいた宇山久信が帰って来たのだった。

この場にいる者は皆口が開いている。

「久信...俺は石火矢を頼んだ筈だが?何故に船だ」

「もちろん石火矢もあります!この船も手に入りました!」

なにやら自信げに言う。

「...久信、一から説明しろ。俺は石火矢を頼んだ。予算は三千貫と、銀一千貫分だったはずだ」

「はい。まず、博多まで行きましたが誰も売ってくれず、博多で知り合った南蛮人が呂宋になら売ってくれる者もいるだろうと言われ呂宋に行きましたら、銀がいつもの五倍近い値で売れましたので中古の船と石火矢三つ購入する事が出来ました」

と自信げに言うが俺達は呆れていた。

「この船を完全に修理してこの者達を使って貿易すれば更に儲けることが出来ます!!」

と、雇ったのか何人か日本人が船から降りてきた。

「なぜに、外国とつくにに、日の本の民がいるんだ?」

と鉄砲隊を引き連れた俊通が聞いてきた。

「なんでも、南蛮に売られた奴隷だそうで偶然見つけて雇いました」

と久信は説明する。

「その方らどこの国のものか」と聞くと

「私達は豊後の国の者です。殿様に売られました」と説明した。

はぁ、やっぱり大友か...

「なぜ、大友は自国の民を売ったのでしょうか?」

久経が聞いてくる。

「恐らく、それだ」

と火薬をさした。

「火薬に必要な硝石を買うために売ったんだろう」

周りでは何て非道な、など罵声が飛び交う。

奴隷は認められてるけど外国まで行ってるとは誰も思わなかっただろう。

「その方名前は」と聞くと

「矢七といいます」

「その方ら南蛮語は話せるのか?」

「少しだけなら話せます」

俺は考え、決めた。

「久信、お前はこの船で銀を呂宋まで運ぶための準備をしろ」

「はっ!」

「誠秀、隠岐に、この船の修理と設計図を作らせろ。数を増やし呂宋との貿易に使う」

「はっ!直ぐに指示してきます」

「久経、久信の持って帰った石火矢を鍛治師達に見せて増産させろ。作りが分からなければ一つはばらしても構わんと伝えろ」

「承知しました!」

「矢七、すまぬがお主を国に帰すことは出来ない。しかし、ここで暮らすことは許す。我が家の為に働いてくれないか?」

「日本にいられるなら、どこでもいいです。外国は嫌だ」

「すまぬがこの船を率いて貿易をしてほしい。一回帰ってくるごとに二月この地で休めばよい」

と言うとなぜか降りて来た他の者も一緒に泣いて受け入れてくれた。これで、銀を適正価格で売れる。

久信が買った船はキャラック船といい貿易に向いた船だった。これの発展版がガレオン船だ。

為清は来るなり口が開いていた。

「こんな造りの船、見たこと無い!」

と内部を見てはしゃいでいた。子供かよ...

「それで、造れそうか?」聞くと

「造れると思いますが銭も時間も造れる場所もありません」

なぜかと言うと俺が水軍の強化をしているからである。

「仕方ない、安宅船を一つ完成させたら、この船を2隻ほど造ってくれ。水軍の船はその後に造ってくれ」と指示をした。


永禄九年(1566年)九月

俺は七老中を集めてある政策をすることにした。楽市楽座だ。

「殿、楽市楽座とはどのようなもので?」

清宗が聞いてきた。

「楽市楽座とは既存の独占販売権、非課税権、不入権などの特権を持つ商工業者(市座、問屋など)を排除して自由取引市場をつくり、座を解散させるものだ。絶対的な領主権の確立を目指すとともに、税の減免を通して新興商工業者を育成し経済の活性化を図る為に行う。

これにより城下を発展させる事が出来る」

と説明した。

「しかしそれでは税が減って常備兵を維持できなくなります」

久綱が言う。

「ならば、一部の地域でのみ行うか?」

と聞くと

「始めは殿の直轄地のみで行われてみてはいかがでしょうか?」

久信が提案する。

「確かに、米子城や月山富田城周辺でなら街道も整備されてますしな。試すにはうってつけかと」

清宗も久信の提案に乗るのであった。

「他にやれるとしたら出雲大社周辺くらいかの」

常光が言うと確かにと皆、納得した。

「あそこは人が多いからな。儲けるならいいかもしれん 」

盛清は賛成した。

「それでは、今回楽市楽座するのは月山富田城、米子城、出雲大社周辺のみにしよう。成功の是非によってはさらに実施箇所を増やすことにする」

と俺が言うと全員平伏して承諾するのであった。

「重盛、そういえば三村からはあれから何か言ってきたか?」

と確認すると

「いいえ、最後通牒以来何も言ってきません」

どうやら完全に無視を始めたようだ。

「我等もなめられたようだな。殿!ここは一気に攻めましょうぞ」

幸清はやる気だ。

「お前達は最大どれくらいの兵は集められる」と問うと


牛尾幸清 牛尾城 約一万人

本城常光 山吹城 約一万人

佐世清宗 佐世城 約七千人

赤穴盛清 赤穴城 約七千人

立原久綱 尾高城 約九千人

宇山久信 甲山城 約七千人

多胡重盛 刺鹿城 約八千人


と言われた。

「今回の備中の三村攻めは久綱と久信、後、米子城を管理させてる久経に任せよう。三人で約二万五千もおれば行けるだろう。」

「ははぁ!必ずや落としてみせます。」

「幸清、清宗、盛清は美作を完全に支配してきてくれ」

「御意!」


「あぁ、三村がもし降伏するなら受け入れろ。ただし条件は当主三村家親の切腹だ。代わりに全ての、一族、家臣、兵士は許すと伝えろ」

「御意!」

こうして美作と三村攻めが決まった。将来を考えると備中までは絶対に必要な所である。

「織田とやりあうことも考えておかないとな...」

義久は一人思うのであった。

無茶振りを頼んだ久信が帰ってきました

次回、宇喜多が動きます

感想などありましたらよろしくお願い致します

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