表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/171

今後の方針 と二人の宿将の死

永禄八年(1565年)六月

京都で永禄の変が起こった知らせが入ってきた。この事は毛利にも届いたらしく、両家で話をしたいと隆元から使いが来た。その為、今評定をしている。

「さて、将軍が殺されたわけだが、三好は新たに将軍を置くであろう」


「我らは一応相伴衆である以上、将軍の敵討ちを大義名分とし、上洛されてはいかがでしょう?」

幸清は上洛を目指してはと言った。


「しかし、それでは誰も納得はしまい。しかも三好が新しい将軍を立てて幕敵にされませんか?」

重盛は反対のようだ。

「我らには三好との伝があるではないか。その伝を頼り三好との同盟もしくは、協力体制を作った方がよいのでは?」

盛清は三好との同盟を考えていた。

「盛清、三好との伝はもう無いぞ」

俺が言うと静かになった。

「なにゆえにございます」

盛清が皆が思っていることを聞いてきた。

「親交があったのは長慶殿と久秀殿だけだ。久秀殿とは俺個人としては繋がっているがその久秀殿も三好から離れようとしている」

と説明した。久秀とは忍を使って手紙のやり取りをしていた。

「では、上洛されますか?」

「いや、まだ上洛はしない。まずは、後ろを固め、備前まで取る」

「宇喜多の件を利用するのですか?」

「そうだ。あの件を受けいれる。ただし半分までだ。後は自分でやらせろ」

「そう伝えます」


「さて、三村からは何か言ってきたか?」

俺が訪ねると

「それがしから。三村ですが従属ではなく同盟を希望しておるようです」

重盛が報告してくれた。

「今さら同盟とか笑わせる。条件は何か言ってきたのか?」

「それが、倫久様か、秀久様のどちらかと婚姻同盟をしたいと...」

「婚姻同盟とか可笑しなことを申すな。笑いが止まらぬではないか」

盛清を含めて数人笑っている。

「話にならんな。再度通達を送り、副案がなければ攻め滅ぼす」

一同「ははぁ!!」


永禄八年(1565年)7月

毛利吉田郡山城

俺と久経、正光の三人で来ている。

毛利側にも以前ほどの殺気はない。

...一名を除いて...

「元春殿、相変わらず恐ろしい殺気を放っておりますね」

俺は反対側にいる元春に声をかける。

「お前と話すことは無い!」

一蹴された...

「兄上、こちらから呼び出しているのですから抑えて下さい」

隆景は抑えようとする。

「そうだぞ、私のことで怒ってるのならもう気にしなくていいぞ」

と隆元も言う。

「さて、呼び出して申し訳ない。話したいのは公方様のことだ」

やはりか、と言うかそれしかないからな。

「毛利はどうされるおつもりですか?」

俺が聞くと

「毛利は三好が立てた公方には従わない事にした。其方達はどうするつもりだ」

「尼子は幕府から手を引く。相伴衆だが別に恩などないからな。しかし、三好のと言うことは、他に誰かが立てたら従うつもりですか?」

と聞くと不思議がっていた。

「他に将軍になれる者がいるのですか?」

隆景は誰かいるのか分からなかった。

「一人いる。将軍の弟覚慶がな。恐らく、藤孝殿辺りが連れ出しているだろう」

俺が説明すると驚いていた。

「それで、もし来られたらどうするつもりだ?」

「さっきも言ったが尼子は幕府から手を引く。来たら誰か推挙して送り届ける」

「そう言うってことは既に誰か目星を着けてるのですね」

隆景が追求してくる。

「尾張の織田だ。一度会っている。あいつは美濃を落とせば京を目指すだろう。その為の大義名分が覚慶だ」

「やけにその織田とやらを買っているんだな」

やっと元春が喋った。

「先見の明だけならここにいる誰よりあるだろう。そして、古いものに囚われない」

「先見の明だけでは戦など勝てない」

「元春殿でも相手にするのは厳しいと思いますけど」

「なんだと!!」

元春は立ち上がった。

「まぁ、待て、元春。それはどうしてですかな?元春の武は一番ご存じのはずですがそれでも厳しいと?」

隆元は不思議でならなかった。

元春の強さと恐ろしさは一番知ってる。何だって彼との戦いが初めて大敗を喫した戦いだったからな。

「戦い方の違いですね」

「戦い方の違い?」

隆元は不思議がっていた。

「織田は我ら尼子と同じく鉄砲を主体としているからだ。鉄砲での戦の事はそちらの二人がよくご存じのはず」

隆景と元春は苦い顔をした。降露坂の戦いで味わっているからだ。

「まぁ、当分動きはしないでしょう」

俺はそう言い隆元に訪ねた。

「毛利は何を求めてるのですか?」

「求めるとは?」

「例えば、天下泰平や天下統一、領地安泰など何を求めてるのかということです」

「私は父が築き上げたこの毛利を守りたいだけだ」

「そうですか...」

俺はそれだけしか言わなかった。

こうして毛利との会談は終わった。



永禄八年(1565年)八月

隠居していた中井久包が亡くなった。

筆頭家老だった久包の葬儀に多くの国衆、家来が集まり尼子家をあげてのものとなった。

「殿、わざわざ父の為ありがとうございました」

「久家、今後はお前が仕切っていかないといけないんだぞ。それと、久包の領地はそのままお主が引き継げ。よいな。久包に負けない領地運営をしてみろ」

と鼓舞しておいた。

しかし、まさか史実より早く死ぬなんてな...


永禄八年(1565年)九月

実りの秋だがまた一人旅立とうとしていた。

亀井秀綱である。

「殿、お呼びして申し訳ありません」

「構わん、せっかく隠居したんだ。もっとゆっくりせんか」

「ははは...大殿(経久)や久包が呼んでるのかもしれません」

「そうか...それで願いとはなんだ?」


「養子についてにございます。私には子がもうおりません。なので養子をとりたいのです」

そう秀綱が言う。

「それで、誰を養子に欲しいのじゃ?」

俺は史実通り山中幸盛か湯国綱かと思ったがとんでもない名前を出してきた。

「京都に居られます孫四郎殿にございます」

「お主知っておったのか!!」

俺は驚きを隠せなかった。

「はい。殿の命で何度も京に行っておりましたのでその際知りました」

秀綱は頭を下げる。

「お前はまた同士討ちをさせるつもりか!!」

俺は声を荒げて言った。

「そのようなこと、考えておりません。しかし、親族が倫久様と秀久様だけではもしもの時に対応できません。一人でも多くの血を残すべきと考え今回の養子を思い付きました。養子にした後は殿の小姓にお願いします。そうすることで殿に忠誠を誓わせるのです」

俺は悩んだ。この件だけは俺だけでは決めきれない。

「倫久と話して決める。それまで待て。孫四郎はどこにいるんだ?」

俺が聞くと

「殿の許しがあれば直ぐにお連れすることが出来ます」

と秀綱は言った。

「わかった、五日待て。倫久と決めなければならん。これは一族の問題だからな」

そういって亀井家を出て倫久の元に行くのだった。しかし、鳥取まで行くと遠いので間くらいにある八橋城で話すことにした。

「兄上!書状のことほんとなのですか!」

倫久は大声で言う。

「倫久声がでかい。今回の件は俺とお前。それに秀久、秀綱だけの秘密だ」

俺は静かに話すように言う。

「すいません、しかし、誠久の子を戻すとなると家臣が納得しないのでは?」

倫久も同じ事を考えていた。

「それが問題だ。秀綱は伏せるから問題ないと言うが...秀綱の言うことも、もっともであるし...」

俺が悩むと倫久が

「兄上の小姓にするのですな?それなら兄上が問題ありと思ったら始末してはどうですか?秀綱には申し訳無いですが...」

倫久が言う。確かにそうだ。あってないからどんなかわからない。ならば知ってから判断すればいいか。

「倫久の言う通りにしよう。秀久には戻ってから伝える。他の者には伝えるな」

と、念を押して帰った。

直ぐに秀綱の所に行き、認めることを伝えた。

それから数日後

孫四郎と秀綱の所にいる。

「殿、それではお願いします」

秀綱は頭を下げる。孫四郎もだ。

「一つ聞きたい。恨みはないのか?」

俺が孫四郎に聞くと「ある」といった。

「なら、なぜ、この話を受けた。俺を殺すためか?」

「いえ、恨みはありますがそれよりも家を再興したいからです」


「わかった。今日から俺の小姓として働け。家の復興はそれから考えてやる」

と、言うと

「ありがとうございます」

と深く礼をした。

「名前だが、亀井誠秀かめいまさひでと名乗れ。いいな」

「ははぁ!」

それから三日後、孫四郎は亀井誠秀として養子となった。

その二日後、秀綱は全てをやりきって満足そうな顔をして静かに逝ったのであった。


しかし、この判断がのち大きな騒動になるとは夢にも思ってなかった。

松永久秀とは長いお付き合いになりそうです。

誠久の子を迎え入れましたが後に大きな騒動の種になりかねません


感想などありましたらよろしくお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ