閑話休題 秋との夫婦仲
時は遡り
永禄七年(1564年)三月
毛利秋
尼子義久と祝言をあげて一月経ったが未だ、まともに会話が出来ない...会話をしても直ぐに途切れてしまう。周りの者に夫がどんな人物か聞こうとしても避けられてしまう。それに、城にいる者から敵意を向けられる。
「私は何でこんな目に遭わないといけないのだろう...」
戦国の習わしと言え、こんな事になるならこんな所には来たくなかった。せめて、夫となる義久とはどんな人なのか話をしたいと思っていた。
一方その頃義久は頭を抱えていた。
祝言をあげてから一ヶ月、秋とはほとんど喋れてなく、夫婦関係はほとんど最悪な状態だからだ。殺しあいをしていた間柄の婚姻だから仕方はないのだけど...
「はぁ、どう向き合っていけばいいんだ...」
一人苦悩していた。
「殿、どうかされましたか?」
久経が聞いてくる。
俺は一応今のことを相談してみた。
久経は悩んだが答えは出なかった。
「秀綱様や久包様に相談されてはいかがですか?」と一つの案を出した。
「しかしなぁー、こんなこと相談できるか?」と言ったが答えがでない以上相談するしかなかった。
秀綱の所に来ている。
秋との現状を伝えている。
「と言う状態なのだが何か手はないか?」
と何故か頭を抱えていた。
「殿は奥手なのですね。一度正面から話されてみてはいかがですか?」
「いや、だから会話が続かないのだ、返事くらいで済んでしまうし」
「でしたら、奥方を連れて領内を回られながら話されてはいかがですか?殿は民とは仲良く話されるではありませんか」
「確かにそうだが...」
俺は悩んでいた。連れ出していいのか、本当に話せれるのか。
「殿、やらないよりやった方がいいですよ」
と秀綱に言われてしまった。
俺は城に戻り、秋の元に行ってみた。
「秋はいるか?入るぞ」
部屋に入ると、書物を読んでいるところであった。
「殿、如何されましたか?」
「明日領内を見回るからついてこないか?」
言った後についてこいって言わなかったことに後悔した。
秋は少し考えてるようだったが
「わかりました。ついていきます」
それだけ聞いたら部屋を出た。と言うのもこれ以上何を話せばよいか思い浮かばなかったから逃げたかったのであった。
一方秋は
「はぁ、殿から声をかけてもらったのに返事しかできなかった...」
と、こちらも後悔していた。
「けど、明日領内を見回るからその時に話せたらいいな...」
と淡い思いでいた。
次の日
俺は秋が来るのを待っていた。
はぁ、見回りがきっかけで話せればいいのだがと、一人思っていた。
すると、侍女と共にやって来た秋を見て驚いた。馬に乗る格好で来たからだ。
「秋、お主馬に乗れるのか?」
「当たり前です!毛利の者は誰でも乗れるようになっております!」
怒られた。
秋に至っては「本当の事とは言え殿に怒ってしまった...」
と内心悲嘆にくれていた。
俺は「そんなことも知らずに悪いことを聞いてしまった」
と後悔していた。
そんな、雰囲気の悪い中、見回りに出た。
護衛はつけていない。二人で話すことができればと思った為、今日は来ないでもらった。城の周辺だけなら賊などは幸盛のお陰で居ないからだ。だが久経のことだから鉢屋衆や忍び衆をわからないところに手配していると思った。
義久の予想通り久経は護衛を配置していた。
義久に、護衛はつけないと言われて直ぐに配下の鉢屋衆の若手と正永を呼び出し配置につかせたのであった。久経は次期鉢屋衆頭領として父親に若手の統率を任されていたのであった。
当の久経本人は義久が急遽見回りに向かったので義久がサボっ...残した仕事を誠秀と共にしているのであった。
さて、場所は戻り義久達だが領内の村を回って領民と話したりしているのであった。
「殿様~ええ野菜が出来たから持ってって下され~。殿様の言われた通り肥料変えたら凄く野菜が出来たよ!!」
子供からお年寄りまで話しかけてくるのであった。
「まぁ、待ってくれ。俺は聖徳太子じゃないから一人づつ言ってくれんとわからんわ」
と笑いながら声をかける。
秋はと言うと一人義久の、後ろで取り残されていた。
「こんなに領民に好かれてるなんて、まるで隆元兄上みたい」
と、秋は思っていた。
子供の一人が「殿様、その女の人は誰?」と聞いてきたので。
「俺の嫁さ、秋って言うんだ」
と言うと周りに居た者も驚いて平伏してしまった。
「奥方様とは知らず無礼を働いてしまい申し訳ありません」
と集まった者は謝罪していた。
「別に構いません。私にも義久様と同じ接し方でいいです」
と優しく言った。
「奥方様はどこの国の人なんですか?」
と子供が聞いてくる。
「私は安芸の国から来たのよ」
と言うと
「殿様、どうして安芸から来たの?」
と言ったので
「隣の毛利家と仲良くするために来たんだよ。もう、争うことはないんだ」
「毛利」と言うと皆反応した。
「毛利は敵じゃないんですか?多くの者が死んだんですよ」
と領民達が言ってくる。
秋は凄く居づらくなっている。
「今まで毛利とは争ってきたが、今後は協力していくことになった。皆は納得出来ないことも多いと思う。俺もそう思うことがある。実際ここまで攻めこまれたこともあるしな」
秋は俺の言ってることを聞いて半分涙目になっていた。
「けど、今後はそういうことはもう二度と来ない。毛利と婚姻同盟を組んだ今、皆が笑って暮らせるようになる。この地は二度と戦禍に見舞われない土地になる」
そう言うと皆考えていた。
「けど、毛利の殿様って裏切ってばっかりだよな~。信用できないですよ」
元就のことを言ってるのだろう。毛利が裏切りと言うか謀略でのしあがって来たからそう思われてるのだろう。
「確かに、元就は油断できないな。けど、息子の隆元殿は家臣や領民に好かれているぞ。お陰で俺は死にかけた」
と笑いながら言った。
猿掛城からの撤退と吉田郡山城での交渉で思い知らされた。
「ねぇねぇ、殿様~奥さんとは仲いいの?」
子供に言われた。
俺は「いいや、あんまり話も出来ん。話しても話が続かなくてな~。わかり合いたいと思うがどうすればいい?」
と領民に聞いてみた。
「奥方様のことは好きなんですか?」
聞いてきたので考えた上で
「わからん」と答えた。
「まだあって一ヶ月しか経ってないし、話したくても何を話せばいいかわからんし、どんな性格かもきちんとはわからん」
「じゃぁ、殿様は奥方様のことどう思っているんですか?」と聞かれ悩んだ末
「今まで見た感じだと、綺麗で物静かで書物を好んで読んでたりしたかと思えば城内や屋敷内を散策したりして活発な所もあるな。後、誰にでも声をかけてるらしい。俺のことを調べているようだがどう対応していいかわからないと家臣に言われたな。俺としては直接聞いてもらいたいと思うんだけどな~、それで話ができたらと思うし」
と思ったことを言っていた。
「どうすれば、話せると思う?」
領民の一人が
「奥方様に思ってることを伝えられたらどうですか?今言われたこととか」と言ってきた。
「今言ったことか~、本人の前では恥ずかしくて言えんな~」
と、悩んでいたら一人の子供に突っつかれた。どうしたのかと思い見ると秋の方を指差してた。
「あ...」
俺は秋がいるのをすっかり忘れていた。
秋は泣かないように我慢していたようだか我慢できず泣いていた。
「秋...」
俺が声をかけると
「殿がそのように思っていたなんて...」
と泣きながら言っていた。
「あの~え~と」
と何言おうか悩んでいると
「殿はそこまで私のことをそこまで見ておきながらなぜ今まで私自身に言わなかったのですか!私が色んな方に殿がどのような方か聞いても答えてもらえず、わかり合おうとしても出来なかったのに!」
と泣きながら詰め寄ってくる。
「わかり合おうとお思いでしたら殿のことを私に教えて下さい。私のことは教えますから。私がどんな思いでここに来たかわからないでしょう!私は父上に言われて嫁ぎましたがそれでも仲むつまじくやっていけたらと思いここに来ました。しかし、殿はご自身のことを何一つ教えてくれません。何もかも隠そうとしています。それではやっていけません。なので教えて下さい!」
と必死に言ってきた。
俺は秋を側に寄せて謝った。
「すまなかった。なら戻ってから話そうか」と言い、見回りを終えて帰ることにした。
戻ってから二人だけで話した。
秋が自分のことを話したので俺も話した。それと、今後毛利との関係についても思っていることを話した。
今回の見回りで少しは近付けたかなと思った。それ以降見回りに秋がついてくることになった。もちろん護衛は忍びのみで。
ちょっとした息抜きです。
本当の夫婦ってどんなもんだろう?(未経験)
感想などありましたらよろしくお願い致します
誤字についてもあせてお願い致します