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謀神の策略 停戦...ではなく同盟

俺は山科言継に二人まで供を許されたので久綱と久経の二人を連れていくことにした。

秀久にはもし俺に何かあったら小倉山城に火をつけて退却し、出雲の守りを固めろと、指示をしておいた。

吉田郡山城に着くと兵士に殺気を向けられる。

言継は何食わぬ顔で進んでいく。広間に着くと更に凄い殺気を放ってくる者達が集まっていた。それはそうだ、俺はかなりの重臣、家臣を討ち取り、隆元に銃弾を浴びせたからである。

言継は上座に座り、俺と久綱、久経は下座の右側に座らされた。

「さて、元就殿久しいな~、調停を行いたいから早く家臣を下がらせよ」

と言うと元就は二人残して下がらせた。

残ったのは吉川元春と、福原貞俊だった。

「さて、元就よ、尼子家は停戦を求めておる。我ら朝廷でも忠節するそなたたち両家の関係を憂いておる。その為朝廷では、此度停戦を命じることにした」

「恐れながら条件次第にございます」

元就はそう言う。

「ではまず、義久、そなたらの条件を申せ」

「石西を毛利のものに、小倉山城を返還し五年の停戦を、求めます」

「それで話にならんな。山吹城までこちらのものとしなければ納得できん!」

そう、元春は言う。

「元就殿の条件は?」

「石見を山吹城まで割譲と小倉山城の返還」

「なんだと!山吹城は我らにとって最重要の城、やれるわけないだろ!」

めずらしく久経が反論する。

「久経の言うとおり山吹城はやれませんな。あそこは我らが手塩をかけて造った城。落とせないから寄越せとは冗談にも程がある。それなら、我らは苦しいが戦い続けよう」

俺は常光達が命懸けで守った山吹城を渡すことは絶対にできなかった。

「なら、話し合う価値はないな。その首だけおいていけ!」

元春が脇差しを抜こうとした。

「辞めんか!」

元就の一喝が入る。

「朝廷からの使いの者の前で何をしでかそうとしてるのか!」

と、元就から激が入る。

「言継殿、申し訳ありません」

「まぁ、よい、それで、尼子は受け入れないと申すが他に条件は無いのか?」

元就は思案した。このまま尼子と戦を続けるにしては毛利に余力がない。石見の銀を取れていたら話は違ったが今は隆元のお陰でなんとかやりくりできていただけだった。。ただ、停戦しても尼子に力をつけさせるだけだと考えていた。元就はいくつもの策を考えたが石見の銀が取れない以上一番したくなかったことを選ぶことにした。

「では、条件を変えましょう。ただし、これが飲めなければ先程の条件を飲んで頂く」

元就は二択にしてきた。しかも、飲めなければ終わると言う。

「条件次第にございます。先程のようなふざけたものでなければ考えましょう」

俺はもう一つの条件に賭けた。

「うむ。では元就殿、申せ」言継が言うと

「大友との手切れ、石西は頂く、小倉山城も返してもらう」

大友との手切れとは痛いがここまで大丈夫だな。

俺は次の言葉に呆気をとられる。

「尼子義久とわが娘、秋との婚姻同盟、それと、尼子家一門秀久を五年間人質として貰う」

「なぁっ!」

元就以外全員が驚いた。

どうやら、元春達二人も知らなかったようだ。

「父上!秋をこんなやつに嫁がせるなど何を言っておるのですか!」

元春は激怒し元就に詰め寄る。

貞俊は思案し答えが出たのか、何やら納得している。

こっちに至っては、

「秀久様を人質とは殺すために呼び込む口実ではないのか」

久経は、そう考えていた。

「殿...」

久綱が、声をかけてくる。

俺はと言うと毛利家との婚姻と言われて呆気にとられていた。

久綱の呼び掛けで我に戻り考える。何故、婚姻同盟なのか。しかも、誰も知らなかったと言うことは今思い付いたのではないか。俺は考えるが

「元就殿、同盟ではなくなぜ婚姻同盟なのですか?」

「先程言ったようにどちらかを選べ、もしくは終わりじゃ」

答えは帰ってこなかった。


他の条件の理由はわかるが婚姻同盟にこだわる理由がわからなかった。

俺は言継様を見て一つのことに気がついた、

「私は謀神の手のひらで遊ばれたと言うことか...」

福原が納得したのもわかる。元就は顔色を変えずにいる。

「これを断れば我らが朝敵になりかねないということですか」

「どういうことです?」

久綱は、わかったのか苦い顔をしてる。久経に、簡単に説明した。

「今回始めに朝廷が両家の関係を憂いておると言ったであろう。それに、こちらから朝廷にお願いして来ていただいた。しかし、もし今元就が言った条件か先程の条件を飲まなければどうなる?」

それを聞いた久経は、やっと理解した。

「断れば交渉は終わり、朝廷の顔に泥を塗ることになる。毛利は断ったことを理由に我らをこの場で殺すことができる。そして、朝廷を踏みにじったとして尼子家は朝敵になりかねない」


それともう一つ思ったことがあった。

「俺とその秋と言う娘との間に子供が生まれて俺が死んだとする。毛利家は子供が毛利の血を持つことを理由に尼子家に関与し石見どころか統べた全ての領地を毛利は手にできる。ようするに乗っ取りだ」

俺が説明すると元就はニヤリと笑ったように見えた。これを断りたいが断れない。断れば守りきった石見を捨てるか、朝廷との縁を切ってしまうことになるからだ。

「言継様、一つ条件を変えてもらってもいいですか?」といい一つだけ変える。

「もうしてみよ」言継は承諾する。

「秀久の人質だがその間こちらにも人質として幸鶴丸を預かりたい」

元就は予想していなかったのか少し驚いていた。

「そんなのできると思うか!兄上の子だぞ!」元春は言ってくる。

「婚姻同盟を持ちかけておいて人質を取るなら我らも取っても問題なかろう」

俺は悔しいので悪あがきをした。

「元就殿どうかな?」言継が聞いて来る。

「その話に乗ろう」

そういって一人の男が支えられてやって来た。

「兄上!!」

元春が驚き叫ぶ。

元春が、兄上と呼んだので誰だかわかった。

「...本当によろしいので隆元殿。あなたの子ですよ」

俺は警戒しながら言う。

「ああ、ただし、二年だ。二年ほど互いに交換しよう。その間に供をつけるが問題ないな」と、隆元が言う。

「わかりました。その条件飲みましょう」

俺は言継に対して平伏し礼をした。

「うむ、これで毛利と尼子の同盟成立じゃ」

言継は、気分よく言う。


その後、俺達は小倉山城に戻った。そこには幸清と、久包の援軍が着いていた。

俺はいる者を集め、今回の結果を話した。

幸清が騒いだが、朝敵という言葉で黙った。

「皆、すまん。俺の考えが甘かった」

と集まったものに頭を下げる

「秀久、すまん。俺のせいでお前を人質に出さないといけなくなった」


「兄上、仕方ありません。それしか方法がなかったのでしょう。」

秀久は行ってくれることになった。


一方毛利家も荒れていた。

「父上、今回のこと納得できません!」

元春は大声で元就に言っていた。

「元春、毛利に戦う余力があったと思うてか?」

元就は戦を継続する力は無いと考えていた。

「元春殿、大殿は先を見こして、今回の同盟を結んだのですぞ」

福原には元就の考えがわかっていた。ただの停戦だったなら、銀山のある尼子が力をつけることは明白。毛利家との戦力差が広がるのは目に見えていた。

婚姻同盟にすることで尼子が毛利に攻め込まないようにし、あわよくば乗っ取りもと考えていたのであろうと推測していた。

「父上の考えはわかりますが、同盟を破る可能性があるのではないでしょうか?」

隆景は元就の考えを理解していたが同盟を破られることを考えていた。

「それはない。朝廷を通しての同盟だ。破ると言うのは朝廷を無視し朝敵になる事に繋がる。あれがそのようなこと見逃すことはない」

元就は断言する。

「兄上もなんか言ってくれ!」

と元春は隆元にふったが、

「俺が兵糧など軍事物資を管理していたからわかるが後二ヶ月で底をついていた。この意味がわからん訳ではないだろ」

隆元は、あの時自分が猿掛城に助けに行けていたらと後悔をしていた。もし、行けていれば山吹で敗退することは無かったと思ったからだ。

隆元も同盟に理解を示しているのがわかり、元春は黙り込んでしまった

「これでは死んでいったもの達に顔向けできない...」

元春は一人部屋を出ていった。


今回の毛利との話しは各地にいる者達にも届いた。反応は様々だった。


それから、三ヶ月後

永禄六年(1563年)十月

石西と小倉山城の引き渡しと人質交換が行われた。今回は倫久も来ている。

倫久は無事に因幡を平定して、鳥取城を居城にした。

秀久は供を一人と忍び衆から、手練れを一人連れていった。毛利からは幸鶴丸と護衛として吉川元春の子、吉川元長と国司元相の子、国司元武がやって来た。三人のことを立原久綱に任せた。

「元長が来てるけど大丈夫なんだろうか...」

引き渡しには隆元本人が来ていた。杖をついてまだ、少し支えられていた。


その場で俺と毛利秋との婚姻を来年二月にすることがきまった。


調べてみたら石見の銀があるのとないのでは戦をするのにも大違いなんですね。戦費って大事..

タイトルですが、近いうちに変えようと思っております。

変えた場合は 新タイトル(旧タイトル) といった形で当面は表示するつもりです

今のは一応、仮でつけていたものですので...(汗)

どうか今後もよろしくお願い致します


感想などありましたらよろしくお願い致します

誤字報告もあわせてお願い致します


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