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山吹城の決戦

場所は山吹城に戻り永禄六年(1563年)二月

本城常光

「皆のもの、良い知らせと悪い知らせが入ってきた。

良い知らせは吉川元春が約七千人の兵士を連れて退却した。恐らく、殿の策がはまったのだろう。それによって人数はこちらが有利になった。

悪い知らせは矢筈城、矢滝城が落城した。守備隊二千人全員が死亡討死にした!!全員見事な最期だったそうだ!」

この発言に皆が驚いた。全員死亡など滅多にないからである。

「そして残りの高城、温泉城も限界であるという」

常光は周りを見ながら

「皆のもの、人数はこちらが有利になった今、矢筈城、矢滝城の者達の無念を晴らそうではないか!!」

常光は、決戦を考えていた。このままでは高城、温泉城も同じ目に遭うと、思ったからである。

「確かに殿からは人数が有利になれば攻めてよいと言われております。ただし、追撃は禁止されましたが」久家が言う。

「しかし、決戦となると鉄砲隊は防衛と違いあまり使えなくなります。普段なら柵などを利用して戦います」俊通がいう。

「では、三日後城を出て決戦をする。正面を鉄砲隊の半分を置き、残りを城の防衛に回そう。

開始は鉄砲隊に、二回射撃し、その後全軍で突撃する」

「常光様、先陣は私達に任せていただけないでしょうか?」幸盛が言う。

「何ゆえだ?」

常光が聞くと

「殿に教えていただいた陣形を用いたいのです。連携が大事なため我々のみでしかまだ出来ませんが...」

「相手は怪我人含めて一万二千程度、そなたらは鉄砲隊を除ければ七千しかいないではないか?」

「はい。なので、我々が敵の注意を引いている間に常光様たちには敵の後方を押さえて頂きたいのです。最終的に挟撃の構えを取ります」

久家も説明していく。

常光は悩んだが、鉄砲隊の事を考えてみると任せてみてもいいのではと思った。

「わかった。そなたたちに任せよう」

評定は済んで俊通、久家、幸盛の三人は連携に向けて話し合う。

「幸盛よ、本当にあれをするのか?」

俊通が聞くと

「ええ、決戦用の陣形だと言われてたので今がその時と思ったので」幸盛が言う。

「失敗すれば我々は全滅も免れない。それにあれは犠牲もかなり出ると言われたではないか」久家は、賛成はしながらも問題点を挙げていった。

「我々は私の私兵に久家の常備兵と精強な者ばかりです。領民を集めただけのような兵士など問題ありません!」

幸盛そう言って自陣に戻っていった。

「俊通殿、もしもの時は頼み申す」

久家も、そう言って戻っていった。

三日後城の前に出陣し円陣を組んだ。

そのまま、進軍し、鉄砲の届く距離になると一斉に発射した。

「皆の者、練習の成果を見せてやれ!」幸盛が士気を上げると先陣を切り動き出した。

全員が一つの物のように動いた。

久家の本陣を中心とし、各隊が放射状に並び風車のように回転しながら敵に当たっていった。

最初に敵に当たった部隊が一旦退くと、すぐ次に次の部隊が攻撃を仕掛けた。

そう、車懸かりの陣である。

これにより、包囲してた毛利軍の一部を完全に食い破った。

しかし、元就はその間に他の者を呼び戻して方陣を作り待ち構えた。前衛に貴重な鉄砲隊と弓隊を配置し、向かってくる幸盛達に浴びせた。

しかし、勢いは衰えずそのまま突っ込んできた。鉄砲隊、弓隊との距離が短くなったので、槍隊を前面にだし構えた。

幸盛の先陣と衝突した。流石に毛利の精鋭なのかなかなか崩れなかった。毛利はぶつかっている槍隊の後ろに弓隊を配置して、矢が尽きるまで放った。これにより僅かだか幸盛達の勢いは落ちていった。

戦闘が始まって一刻半、戦況が大きく変わった。幸盛、久家の方は、毛利の弓隊のせいで多くの怪我人や犠牲をだし、数が減っていた。

一方の毛利の槍隊も限界なのか一部崩れだした。

久家達も、限界は近かった。

「まだ、来られないのか!」

久家は周りを鼓舞しながらも、内心焦っていた。幸盛も同じである。

「久家。このままでは、こちらが先に崩れかねんぞ!俺達が時間を稼ぐから立て直せ!」

俊通がそう言うと鉄砲隊に用意をさせた。

そんな時に法螺貝が鳴った。

久家達が待ちに待った者が来たのである。

そう、本城常光の本隊である。

「皆の者、矢筈城、矢滝城の者達への弔いじゃ!!蹂躙せよ!!」

常光が号令すると一斉に突撃した。

「おおぉぉぉぉ!!!」

この援軍により、今まで凌いでいた毛利軍前衛の士気が、がた落ちとなり一気に崩れた。

「好機は今ぞ!!全軍突っ込め!!」

久家の激で全軍突っ込んだ!

「鉄砲隊!毛利側面に回り込み撃ち込め!!」

俊通は鉄砲隊を毛利側面へ移動させた。

「大殿!この戦は負けでござる。儂が殿をするから退いてくだされ」そういって宍戸隆家は部隊を率いて本城に対抗すべく向かった。

「大殿、我らも残ります!急いで退いてくだされ!!」

口羽通良も幸盛達を止めるために残ったのである。

「全軍撤退だ!宍戸隊と口羽隊以外は撤退せよ!!」

通良はそう叫び戦場に戻った。

宍戸、口羽隊は一時は押し返したが、数に劣るため、尼子軍に呑み込まれてしまった。

結果、毛利軍は降露坂以来の大敗を期してしまったのである。

久家と幸盛達は常光と合流した。

「いや、遅くなってすまんかった。途中毛利軍に合流しようとしていた裏切り者共を始末していたら時間がかかってしまった」常光は遅れた理由を説明した。

「そうでしたか...常光様、申し訳ありませんが我々が退くことを認めてもらえないでしょうか?犠牲が大きすぎましたので建て直したいのです。鉄砲隊はこのまま残しておきます」と、久家は帰還を願い出た。常光も久家達の兵士を見て認めた。

「しかし、殿の命とはいえ追撃はしたかったな。また、元就を逃してしまった」

常光はそう言うが実際には追撃したら更に犠牲者が増えると思っていた。

今回の戦況をまとめた。


戦況報告

毛利軍一万二千

負傷者約三千人

死者約八千人

討ち死に 宍戸隆家、口羽通良


石西国衆

約四千人全滅。


尼子軍(久家、俊通)七千五百人

負傷者 約二千人

死者 約三千人

鉄砲隊 二千五百人ほぼ無傷(負傷者あり)


本城常光軍 七千人

負傷者 約二千人

死者 約千五百人


山中幸盛私兵 二千人

負傷者 八百人

死者 約五百人

元就は藤掛城に無事にたどり着いた。

「元春は、間に合っただろうか...」

援軍が間に合ったか気になったが疲労困憊で倒れてしまった。それから三日間眠り続けていた。

こうして山吹城を巡る戦いは尼子の勝利で終わった。


常光のお陰で石見(石央、石東)は完全に尼子の物のになりました。しかし、犠牲は多かったです

次回は毛利家最強の鬼が動きます


感想などありましたらよろしくお願い致します

誤字報告もあわせてお願い致します


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