葬儀と結束と決意
父の葬儀には国衆を含め多くの者が参加した。幕府からも書状が届いていた。問題なく進んでいたが一人の家臣が駆け込んでから一気に雰囲気が変わった。
「申し上げます。毛利家重臣、福原貞俊が毛利の代理としてやって来ました!」
「なんだとぉぉ!!」一斉にその報告をした家臣に注目が集まった。
「何をしにやって来たのか!」幸清が叫ぶと報告した家臣は「毛利家の代理として焼香しに来たと申しておりました」と幸清の威圧に押されながら報告した。
「ふざけるな!」「毛利とは敵同士そんなのありえるか!」「今ここで血祭りにあげ毛利領に攻め込もうぞ!」など多くの罵声や怒声が響きだした。
「静まれぇぇ!!」俺は目一杯叫んだ。
「皆、決して手を出すな!手を出すということは毛利に大義名分を与え我々は幕府を敵に回すことになるぞ!」皆静かになり聞いている。
「毛利は我々を滅ぼしたいと思っている。しかし、今は不可侵を幕府の仲裁で結んでいる。我々が福原を殺せばどうなる?奴等に大義名分を与えこちらが幕府の仲裁を破った形にされ幕敵にもされかねない。そんなことされていいのか!」皆、我慢をして聞いていた。
「三年だ。後三年耐えれば我々は毛利と堂々と戦える。その時に今回の屈辱を晴らそうではないか!」
「そうだ!そうだ!」国衆や家臣から声が出てくる。
「毛利は卑劣にも調略をしかけ我々を分断してくるかもしれない。しかし、我々には鉄のように硬い結束があるではないか!」
「そうだ!!」この場にいる者の声が大きくなってくる
「皆父が死んで不安があるだろう。しかし、我々の硬い結束があれば問題ないと私は思っている!!」
「葬儀が終わった後に皆に伝えようとしていたが今伝えよう。今回私は父が幕府から頂いていた八か国守護と相伴衆を引き継ぐ許しを得た」
俺は持っていた幕府からの書状を開いて見せる。
「私は父と同じように皆と協力し我らが領地を守り抜く!!そして毛利と決着をつける!!」
「そうだ!毛利を倒そう!」など色んな声が聞こえだした。
「すまないが今は耐えてくれ!私も耐える!三年後今日の屈辱を奴等に返そう。我ら尼子の結束が如何なるものか奴等に見せつけようではないか!!!」
「おおぉぉぉぉ!!!」式場にいる家臣、国衆が一斉に声あげる。皆の心が1つになった感じがした。
「毛利の代理をここに連れて参れ。望み通り焼香をさせてやろう」俺は指示をしすぐに連れてきた。
「毛利家家臣福原貞俊にございます。此度は...」
「それ以上表面上の言葉いらん。焼香されたいのならばどうぞ」と俺は先に進めさせた。
福原は異様に感じていた。静かすぎる事に。そして、誰も彼に敵意を向ける事無くいることに。そう、元からいない存在のように扱われている、そんな気がした。
来る前、福原は調略出来る者が数人はいると思っていたが出来る気がしなくなっていた。
焼香を終えると無言の威圧でその場には居られなくなりすぐに葬儀場を後にした。
「これはすぐに伝えなければ」福原は焦った。
毛利に対する怒りの為か調略が出来そうにないこと、そして、今回来るべきではなかったこと。尼子の家臣と国衆を1つにしてしまったことが大きな失敗だった。
その後、葬儀は問題なく終わった。
俺は倫久、秀久と七老中、若年寄、忍び衆、鉢屋衆を集めて話をした。
「今回一時的だが皆が一つになれたと思う。尼子の結束が証明された葬儀だったと思っている」俺が言うと
「毛利からの調略、必ず来るでしょうな」秀綱は言うと「後三年と言いましたが相手が破る可能性もある」幸清は指摘する。
「奴らは、大友とも争ってます。ここは大友と同盟などを結ばれてはどうでしょう」久綱は提案する。
「あの場にいた国衆は当面問題はないだろうが、国境沿いの国衆は対策をしておかなければまずいだろうな」清宗は言う。
「若、いや、殿、殿には何かお考えがあるので?」久包が聞いてくる。
「まずは国境沿いに砦を作り守りを固める。また狼煙台も国中に設置しどこが攻められても早期に連絡する手段を作っておく。次に、国衆の者を家臣として召し抱えていき、父の残した中央集権を完成させる。その後、山名に調略をしかけ、因幡を完全に我らのものにする。
浦上はある男に接触をしている。上手くいけばそいつが浦上を消してくれる。その後そいつを取り込む、正直危険だがやるしかない」
「殿、その男とは誰にございますか?」久兼が聞いてきたので
「宇喜多直家だ。上手くいけば引き込めるが最低同盟国としていてもらう」
「宇喜多は浦上の重臣、いつの間に手を回されていたとは...」久綱以外は驚いていた。
「まぁ、そっちは時間がかかる。それよりも中央集権の完成と因幡を完全に我々のものにするのが重要だな」
「鉢屋衆、忍び衆、動けそうか?」
「申し訳ありませんが半数程度しか動けません。怪我人が多く、回復しておりませんので」兵太夫が謝罪する。
「我々の方も同じような状態です」弥之三郎は言う。
「そうか、怪我人は十分に休ませろ。毛利への間者と領内の結界を優先してやってくれ」
「ははぁ」四人とも平伏する。
「次に兵士についてだが、七老中の皆には俺と同じことをやってもらいたい」
「同じこととは常備兵と鉄砲隊のことですか?」久信が言う
「そうだ。常備兵を組織してもらいたい。鉄砲隊は数に限りがあるから俺の部隊が主体になる」
「しかし、殿のようにいきなりそんなことをすれば赤字で金が足りなくなりますよ」正光はあの頃を思い出す。
「それなら、一領具足だな。俺が流民にしたことをしてもらいたい。それなら、すぐにできるだろう」そういってどちらかをやってもらうことにした。
「当面は防衛に勤める。常光、石見は頼んだぞ」
「はっ!来月には山吹城も完成しますのでお任せください。兵糧も搬入を始めております」と説明してくれた。
「それでは皆、頼んだぞ」
そういって話し合いは終わった。
尼子家が一致団結しました。これが長く続けば毛利など恐れるに足らないのでしょうけどどうなるでしょう。
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