降露坂の戦い(後編)
永禄二年八月
援軍に来たが間に合わず小笠原は降伏してしまった。
「殿の予想通りになってしまいましたね」と久経が言うと誰かがやって来た。
「伝令、殿(晴久)から山吹城の援軍に向かえとの事です」
俺は考えていた。ここで援軍に向かえば史実通りになるであろう。でもここで毛利に一撃を食らわせたい、この戦以降全て負けているからここで何とかしたいと思っていた俺は決断した。
「隊を二つに分ける。まず、久綱と幸盛の部隊、遠藤の鉄砲隊は援軍に向かえ。久綱、別動隊の指揮を任す」
「ははぁ!」
「他のものは俺と共に毛利の退路に潜む。兵太夫、正永、正保」
「これに」三人が俺の前に出る
「お前達は今いる忍び衆全軍で周囲の世鬼衆を狩れ。俺たちが伏せていることを悟られるな」
「御意」
久信が「殿、毛利の退路を断つとしてもこの人数では厳しいのでは?」と言ってきた。
「それはわかっている。だから今回は奇襲で敵の虚をつく。奇襲の狼煙は雑賀衆に任せたぞ」
「やっと俺達の出番か!雑賀衆の凄さ見せてやるよ」と、重秀は笑いながら答える。
「重秀、一斉射撃の後、突撃をかける。その時お前達は後方からくる毛利軍を味方がくるか、弾がなくなるまで撃ち続けろ」
「それではみなやるぞ!」
「おおぉぉぉ!!」
数日後、立原達は援軍として山吹城に入り、本城常光の指示のもと防衛をしていた。
ここ数日毛利の猛攻を凌ぎきり士気は最高潮だった。
「これなら勝てるな」久綱が言うと「殿達は大丈夫でしょうか?」幸盛は義久達を不安に思っていた。
「殿の指示通りすればよい、常光殿の所へ行くぞ」久綱はそういい本陣に向かった。
本陣で久綱は義久の策を伝えていた。
「なるほど、奇襲で足止めをして我らと周りの城の兵で挟撃か」常光は少し悩んだが
「よし、毛利が撤退するなら我らは追撃し、毛利に仕返しをするぞ!」
久綱は安堵した。もし追撃しなければ義久の命が危なくなるからである。
一方、毛利本陣では軍義が行われていた。
「このままでは、山吹城は落ちん。何か手はないか...」と謀神毛利元就は悩んでいた。正直ここまで手がかかるとは思っていなかったからである。
「父上、ここは兵糧攻めに変えてはいかがでしょうか?」小早川隆景はそう提案する。
「いや、再度全軍で突撃すれば突破できます」猛将吉川元春はそう言う。
「しかし、兄上、ここまでそうやって来ましたが落とせなかったではないですか」と隆景は言う。
そうした中に一人の伝令が飛び込んできた。
「申し上げます!門司城、大友義鎮により襲撃を受けました」
「なんじゃと!!」軍義に集まっていた者が一斉に驚いた。
「撤退する。今なら撤退するとは思っていまい。殿は桂元澄と小笠原に任す」
そうして毛利は撤退を始めた。
降露坂周辺
「殿、毛利が撤退を始めました」
「よし、久綱に伝えよ。反撃を始める。重秀に見事な狼煙を見せてやれと伝えておけ」
「ははぁ」正保と正永は消えた。
「久家、白い鉢巻を腕に巻いてない奴は全員敵だ。一人も生かして帰すな」
隣に居た久家に指示をし毛利が来るのを待った。
しばらくすると甲冑の揺れる音が聞こえて来た。
「そろそろだ」と呟いた瞬間、鉄砲の一斉射撃の音が鳴り響いた。
「重秀が見事な狼煙を上げた!一人たりとも生かして帰すな!!全軍突撃!!」
「おおぉぉぉ!!」
潜んでいた軍が一斉に突撃を開始した。
毛利軍は殿を残していたためか安心しきっておったため、すぐに混乱した。
混乱した軍を攻めるのは容易かった。必死に立て直そうと毛利方の武将が鼓舞するがその武将の周囲以外は立て直せていなかった。
鉄砲の音が聞こえる。まだ久綱達が来ないようだ。
一刻経つ頃には辺りは血の海だった。まだ、戦っている者もいる。
いつの間にか鉄砲の音は無くなっていた。そう思っていると久綱が現れた。
「殿、御無事で!毛利はほぼ全滅、重臣などの首級を挙げたようです」
「まだ戦っておるようだが誰だ?」
そういい、久綱と後から来た久経とその場を見に行った。
恐らく百人足らずであろう毛利軍と、一騎討ちをしてるのが二つ...いや、正確には一対二と一対一だ。
まず、二対一の方は、傷をおっている武将に対して幸盛と常光の二人がかりで攻めているが攻めきれてなく、一対一の方は久家が相手をしていた。
毛利方百名足らずは二人の後ろを守るかのように半円の形で槍衾を構えていた
「久綱、あの二人は誰かわかるか?」と問うと
「怪我の方は恐らく吉川元春かと。もう一人はわかりません」
「もう一人は口羽通良です」と久経が言う。
「鬼吉川だと!!」俺は驚いた。ここで撃ち取れば、未来は代わりもしかしたら生き残れるかもしれないと思った。それと同時に隆元が死んだ時の毛利を思い出していた。
どうする...一人悩んでいると「殿、どうかされましたか」と久経が聞いてきた。
「久経、今ここでこの二人を殺すのと生かして捕らえて交渉材料に使うのどちらがいいと思う」
「私なら殺しますね。元春を逃せば今後に響くかと」久経はそう言う。
「殿、交渉材料とは何をお考えで?」久綱が聞いてくる。
「毛利の石見の完全放棄と不介入」と言うと驚いていた。
「それなら、可能性はありますね。ここで殺さなくても毛利が断れば後で殺せますし」と久綱は言う
俺は決めた。元春を生かして捕らえることにした。
「双方武器を納めろ!」俺が叫ぶとどちらも手が止まって距離をとった
「殿、なにゆえにございますか!」幸盛は叫ぶと「義久殿、ここで殺してしまえば毛利も弱体化しますぞ、なぜ止められる」と常光も激怒している。
「吉川元春、口羽通良降伏せよ。降伏すればそこにいる全員の命は助ける。また、兵士は帰還を認める」
「何を言っておるのか!!」常光は激怒しながらこちらに向かってくる。
「常光殿、この二人は交渉材料になってもらう。石見の全てを得るために」
「後でこの事は殿(晴久)に伝えますぞ」と言って行ってしまった。
鉄砲隊に周囲を囲ませて返答を待つ。
「誠に命を助け、兵士を帰還させてもらえるのか?」口羽通良が言うと
「あぁ、兵士はこの場で解放する。お主達は我々が引き取り監視させてもらう」そう言うと毛利方の方で言い合いを始めたが少ししたら終わったようだ。
「降伏します」口羽通良がそういった。元春も刀を捨てた。
すぐに元春達を拘束し、治療を行わせた。監視は幸盛、久家、久信の三人とも部下に任せた。
俺は毛利の残党を集め、解放することを伝えさらに元就に伝言を伝えた。
「こちらは交渉する構えがある。半月待つので返答されたし。返答なき場合は二人の首を贈る」と脅迫もかねていた。これで、毛利がどうするかが今後に大きく関わってくる。
毛利の残党を解放した後、父の元へ行き今回考えてることを説明した。初めは怒鳴られたが重臣、主に兼久、久包、秀綱のお陰で納得し交渉することになった。元春達は月山富田城で監禁されることになった。
今回討ち取った首は
桂元澄、小笠原長雄、赤川元保、粟屋元親
熊谷信直、平賀広相、渡辺通など多くの者を討ち取り、毛利軍も約一万四千人のうち生き残ったのは二千人足らずであった。
ちなみに隆景は先陣にいたらしく逃げられ、元就も何人も自ら元就と名乗りを上げた者が居たため逃してしまっていた。
お見方大勝利!吉川を、捕まえれて石見も狙える。毛利はどんな反応をするのでしょうか?
感想など、ありましたらよろしくお願い致します。
この場でありますが、誤字報告大変助かっております。ありがとうございます