忍原崩れ(後編)
義久の言ったとおり毛利が温湯城に本気で攻めてきた。
晴久は急遽評定を開いた。集められたのは重臣のみだ。
「温湯城が毛利に攻められている」晴久が言うと
「殿、すぐに援軍を送りましょう」兼久が言う。
「先鋒として五千の兵を送れ、直ぐに本隊も向かう」晴久は言う。
「いや、本隊は間に合うまい。ここは山吹城に攻めかかるのはどうでしょう?」秀綱は提案した。
「それでは温湯城を見捨てるということですか?」幸清が聞いてくる。
「見捨てるのではない。援軍は五千送り時間を稼ぎ、本隊は山吹城を攻め落とします。」秀綱は言うと
「あの城を落とせるのか?」晴久は聞いてくる。
「兵糧攻めを行います。万の軍勢ならこちらに分があると思います」秀綱はそう言うと頭を下げる。
晴久は悩んだが、山吹城を落とすことに決めた。
「秀綱の案でいく、直ぐに準備せよ!」
「ははぁ!」
重臣達は皆準備へ向かった。
秀綱は準備をしながら一人考えをしていた。
今回の案は義久が伝えていたのであった。
「もし温湯城が攻められたら援軍は雨のため間に合わないと思います。なので、ここは最低限の援軍を出して残りは山吹城を落としましょう。ここを落とせば石見を制圧出来ます。」と書状が送られていた。
秀綱はかつて仕えた主を思い出していた。
「若はあの御方に似てこられた。何とかして殿とのわだかまりを無くさねば」秀綱は思い耽っていた。
それからしばらくして謹慎中の義久の元に戦の報告書が届いた。
史実通り山吹城は陥落し石見銀山を手に入れることに成功したようだ。
温湯城については本城常光のお陰で落城する前になんとか合流することができて守りきったらしい。
本城はその功績で山吹城の城代になった。
「ここまでは史実通りか」一人呟いてると小姓が来客を知らせてきた。
「殿、亀井秀綱様、中井久包様がお越しです。」
「わかった。通してくれ」俺はそう言うと書類を片付けた
二人がやって来た。
「若の予想通りになりました。」秀綱が言うと
「若はどこまで予想をされていたのですか?」久包が言う。
「父上には内緒で頼む」俺が言うと二人は顔を見合せ
「わかりました」と言った。
「まず、温湯城でなぜ小競り合いをしていたか。俺の考えだが、小競り合いをすることによって地形を調べ、わざと負けることによってこちらに油断を誘う。大規模な軍を編成して、わざと他の場所を狙ったかのような行動をする。」二人は頷いている。
「実際我らは亀谷城に攻めてくると思うておりましたからな」久綱が言う。
「まして小城を、大軍で来るとは思いもしませんでした。本城はよう間に合ってくれました」久包も言う
「しかし、なぜ援軍をそんなに送らずに山吹城を狙ったのですか?あの城は堅城ですので落とせるとは思わないはずでは?」秀綱はそう言うと不思議と思っていた。
「堅城故に毛利はそんなに援軍を送らずに守りに入ると思ったからだ。あそこは起伏が激しい山合故守りに有利。なれば兵糧攻めにして誘きだし叩き潰す方がやり易いからな。亀谷城からも軍を出せば挟撃を狙える。それに我々はあの土地について詳しく調べていたから父上なら上手く勝てると思ったからだ」俺はそう言うと二人は黙っていた。
義久の言う通り、今回兵糧攻めにして城主刺賀を誘きだし毛利援軍の宍戸と一緒に山合を利用して上から落石などで攻撃し、亀谷城から来た軍と本隊とで挟撃し撃破したからである。
「ただ、再度援軍が来るのは分からなかったな。ましてや元就本人なんて」俺はそう言って頭を掻いた。
「しかし、そこまで予想されていたのに何故あの評定で言われなかったのですか?」久包と秀綱は不思議だった。
「言ったところで誰も信じないし、私が温湯城のことを言ったとき物凄く嫌そうな顔をされていたから言わなかった。結局謹慎になってしまったしな。」そう言うと二人とも何も言わなくなった。
秀綱が「それでは次は何を考えてらっしゃるのですか?」と聞いてきたので俺は
「幕府との関係を深め、朝廷から更なる官位を貰うことだな。正直、大樹には会ってみたいが謹慎中だから無理だな」俺は笑うと久包が「謹慎が解ければ動けるのですね」と聞いてきたので、「幕府や朝廷に貢ぐだけの銭があれば直ぐにやれる。俺が持ってる銭だけだと幕府くらいしか無理だけどな」
「一体どうやってそんなに集められたのですか!?」二人は驚いた。
「父上に報告した澄み酒、清酒、椎茸の収入でな。皆がよくやってくれた」
「謹慎に関しては我ら二人が何とかします。幕府と朝廷についても賛同します」
「わかった。よろしく頼む」そう言って話は終わった。
それから数日後、父に呼ばれた。
その場には秀綱と久包も居た。
「話は二人から聞いた。謹慎を解くから幕府に行ってこい。銭はあると言っていたらしいから献上する分も自分で出せ」
「朝廷はどうされますか?」
「行かなくていい、大樹に会って幕府との関係を深くしてこい。供に秀綱をつける」
「はい。」
こうして幕府のもとに行くことになった。
こんどは京都に向かいます
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