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殺戮と終焉

石垣山 尼子軍本陣


「上様、準備が全て整いました」


遠藤が報告してくれた。俺は小田原城を見ながら頷き、開始するよう命じた。


「狼煙上げ!」

遠藤の指示で狼煙が上げられると、四方から大筒隊、海上から水軍と一斉に砲撃が始まった。


今回、面で砲撃していき、敵を本丸に押し込めて行くよう指示をしていた。

誰一人逃さないためだ。


轟音と共に小田原城の城壁や櫓などは木っ端微塵になっていった。


その頃、小田原城の北条氏政は呑気に汁かけ飯を食っていた。


「尼子の切り札である大筒隊など、この小田原城には効かんわ!」


しかし、家臣達の顔色は今一だった。と言うのも、予想より遠くまで弾が跳んできていたからだ。


「殿、敵が近付いてきた場合、本丸まで届くかもしれません」


「海上からの砲撃は二ノ丸付近まで届いております。また、集めた領民の被害も多くなってきており、本丸に逃げてきております」


氏政はそんな家臣達の言葉を無視しながら食い続けた。


砲撃が続き、北条家臣は青ざめていた。

既に夕暮れになり、辺りも暗くなっているからだ。


大砲は予定どおり夜通し撃ち続けられた。

兵士達には前もって伝えていたので問題はなさそうだ。


「上様、これ以上は届かず無駄玉になります」


2日目の午前中の時点でほぼ破壊し終わり、二の丸の一部にも当たり崩壊しているところもあった


「まぁ、仕方ないか...。撃ち方を止めて、半日程待ってやるか。氏直、これ以上は譲れぬぞ」


「あ、ありがたき幸せ!申し訳ありませんが失礼します!」


本陣にいた氏直は大急ぎで出ていった。これ以上、民を失いたくないからだろう。


「では、諸将は明日の日の出と共に総攻めに致すので準備をされよ」


「「ははぁ!」」


全員出ていくなかで、方久と元久を呼び止めた。


「二人には先に話しておく。この戦が終わり、国替えをして落ち着けば儂は隠居する」


「「...はい?」」


方久と元久は二人して呆けていた。

元々、弟の倫久と秀久の二人には伝えておいた。二人からは国が安定することを条件ならと言われてしまった。

仕方ないかと思い承諾したのだ。


「この戦が終われば日ノ本で尼子に対抗出来るものは居なくなる。また、外国に攻めることも考えていたが、儂の代では難しいだろう。良くて、高山国(台湾)と呂宋 (ルソン、フィリピン)、朝鮮くらいだろう」


「なら父上はなぜ、辞められるのですか?」


「戦の時代が終わり、新しい時代が来たことを知らしめるためだ」


元久はそれを聞いて納得した。父から兄へ変わることで世襲制で尼子の時代が続くことを知らしめるためだと。


「では、父上、条件として、高山国と呂宋を領地にしたらにしてください」

方久の条件に俺は驚いた。なので理由を聞いてみた。すると、その二つを制すれば南蛮と対等に戦えるからだそうだ。貿易の拠点を抑えつつ、日本から守りきれる範囲だからだと言ってきた。


流石に笑ってしまった。そこまで考えてるとは思っても見なかったからだ。


「分かった。ならばそうしよう..」


俺は二人を下がらせた。

俺の背後には一人の男が膝をついて待っていた。


「正保、儂はお主の様に隠居させて貰えそうにないな...」


「上様は49とまだお若いです。ワシは既に80を越えておりますぞ」


そんなことを話していたらもう一人やって来た。


「ククク..ボヤきはもう少し小声でするもんですぞ」

松永久秀だ。小田原城を包囲した時に暇なので呼んでおいたのだった

既に80を越えているのに、体は健康そのもの、性欲旺盛な好爺になっている。


「久秀、 お主みたいに永遠に生きられるならこんなボヤキもしなくて済むんだけどな」


「フフフ...。それならまず、こちら、黄素妙論(こうそみょうろん)を読み、毎日お灸を欠かさずに行い、食事一つ一つ...」


「それをし続けた結果お主の様な性欲旺盛変人数寄爺いが出来たのではないか。その年で性欲旺盛とは...。久通も苦労してるだろうな~」


久秀は笑いながらも、その目はしっかりしていた。

「フフフ、あれは儂の息子ぞ?甘く見ていれば寝首を掻くぞ」

そんなことは分かってた。なんせ、将軍暗殺の首謀者の一人で唯一の生き残りだ。


「安心しろ、既に鈴はつけてある。鳴らせば主を殺す鈴をな」


俺が言うと久秀はニンマリ笑みを浮かべていた。

本陣は不気味に笑う声が響くのだった。


その頃、北条氏直は最後の投降を呼び掛けていた。

前回と違い、多くの百姓が逃げ出してきていた。理由は簡単で大筒の恐怖が勝ったからだ。


中には、武士がちらほら居たらしく、その者達は全員捕らえた。万が一それから逃げ延びても、最後は風魔によって全員始末されるのだった。


ただ、例外も居た。堂々と鎧を身につけて、民を守り逃がした者だ。

北条はあろうことか逃げ出した民を裏切り者として攻撃したのだ。それを防ぎ、民を逃がした一団を俺は捕虜としてではなく、客としてもてなした

その一団をまとめていたのは以前交渉に来た板部岡江雪斎だった。


江雪斎は民を攻撃した氏政を見過ごすことが出来ず、心を同じくする北条家の武士を集めて今回に至ったそうだ。

俺は家臣にしようとしたが、断られ、この戦で亡くなった者達を弔いたいと言った。

俺は了承し戦の後、寺を建ててやることにした。


そして、約束の半日が過ぎ去った。


翌朝、全軍が一斉に小田原城に突撃を始めた。

特に果敢に突撃したのは、信勝率いる新生武田軍と、信康率いる三河衆だった。

信勝の軍は崩れた二の丸の城壁をなんと騎馬で突撃していったのだ。

勿論、北条側も狙ってくると思い準備はしていたが騎馬で突撃してくるとは夢にも思わなかっただろう。


「敵は一人残らず討ち取れ!!命を惜しむな!!」

騎馬で突撃した馬場信春は全軍に激を飛ばしていた。本当は隠居していたのだが、最後の奉公と言い、老骨に鞭打って出てきたのだ。


「馬場様に遅れを取るな!!武田最強赤備えの名を取り戻すぞ!!」

赤備えを受け継いだ真田昌輝も馬場に並んで突撃した。


「武田の名を汚す裏切り者め!!返り討ちにしろ!!」

そう叫ぶのは、北条に逃れた元武田家臣達だ。

実際裏切り者と言えばこの北条側に付いた者達だが、この者達からすれば、勝頼を殺した尼子に付いた武田の者達が裏切り者と思っていた。


両軍が二の丸で激突したが、信勝率いる武田軍が一方的だった。


それもそのはず。武田は今回の戦に全てを賭けていた。氏政を討ち取り、功績を上げて甲斐を取り戻す。

信勝を筆頭に武田家臣全員が御旗盾無しの前で誓っていたのだった。


その勢いは凄まじく元武田家臣と北条軍は為す術無く潰されていくのだった。

また、北条兵の中には三増峠の戦いに参加していた者もおり、「信玄が来た!!」と発狂して逃げる者まで出るのだった。



武田軍とは反対側に陣を敷いた徳川軍も一人の男が先陣を切って北条軍に突撃..いや、逃走していた。


「どけ~!!殺される!!邪魔をするな~!!」

そう叫びながら突撃する男の名は徳川信康、徳川家嫡男であり、次期当主だ。


この行動に北条軍の兵士は困惑していた。

と言うのも、本当に何かに逃げているようで、道を防いだ兵士だけを撥ね飛ばして進んでいたからだ。


しかし信康の後ろからは、信康の単身での突撃に感化された徳川家武闘派集団三河衆が修羅の如く北条兵を血祭りにして追いかけていた。


「信康様に続け!!」

「三河武士の力!これにあり!!」

「信康様~!!単身ではいけませぬ~!!」

「信康様~ !お待ち下され~!」

後続の三河衆から色んな声が聞こえたが信康の耳には入っていなかった。


「いーやーだー!!」

信康の悲痛な叫び声と共に徳川は北条勢を圧倒するのだった。


ちなみに、信康が何から逃げているかと言うと原因は徳川本陣に来た援軍だった。


「方久様から許しを得て援軍に来たのに、兄上(信康)は単身で小田原城に突っ込むなんて阿保なのか勇敢なのか...」


そう困っていたのは信康の弟で次男の方康だった。

方康はきっと父家康はこの戦で戦功を上げて領地を広げたいと考えていると思い、主である方久に許しを得て援軍に来たのだ。

方久は親を思い、正直に話した方康に自分の右腕であり自軍最強の北畠久具も付けて援軍に向かわせて上げたのだった。


実はこの久具が原因だった。

久具の旗は笹竜胆だが、信康はこの旗を見て、自分の師であり恐怖の対象である北畠具教が来たのだと勘違いをしたのだ。


どれくらい恐れているか分かりやすく言うと、三方ヶ原の戦いで家康が味噌を流したのと同じ、もしくはそれ以上だ。


「・・勇敢だと思いたいが単身で行くなど大馬鹿者めが...」

家康は信康がなぜ逃げたか分かっていたが、信康の名誉のため黙っておくことにした。


二刻(およそ四時間)経つ頃には本丸に続く最後の門も破り、本丸で乱戦が始まっていた。

しかし、士気が圧倒的に高い幕府軍が一方的に押しているのだった。


北条家当主、北条氏房と前当主氏政はそれぞれ別れて逃れたが氏政は武田軍に捕縛され、氏房は海から逃げようとしたところを長宗我部軍に見つかり、最後は武士らしく散ろうと付き従う者達と共に玉砕し討ち取られるのだった。


小田原城は完全に燃え上がり、関東最大勢力だった北条家(反尼子派)は終わりを迎えるのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 皆さん活躍出来て何よりです。領地復活、拡大出来ることを願います。 [気になる点] これから活躍される武将達の戦い(特に騎馬で突っ込んでいった武田さん家)振りに心踊らせていたら、まさかの信康…
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