甲賀と伊賀の忍びとまたしても暗殺者
十二月も後半、望月と言う者が立原からの書状を持ってやって来た。
書状の内容は交渉での禄高を千石にしたこと、望月出雲守の代理人が来ていること、また、一年たっても望月出雲守が来ない場合は領地を減らすことを決めたと書いてあった。
俺は小姓に代理人に会うことを伝えた。
なぜか、広間ではなく庭のある縁側で会うことになった。
「なぜ、ここなのか?」と聞くと代理人の女は
「忍びは基本部屋に入れず外で命令されるものです」と答えたので俺はつい怒鳴ってしまった。
「俺は召し抱えると言ったではないか!それに、待遇も武士と同じにすると言ったが聞いてないのか!」
怒鳴ったのに驚いたのか女は驚き、土下座をしていた。
「申し訳ございません」女は必死だった。自分のせいで今回の話が無しになるのではないか心配だった。
「とにかく、まずは部屋に上がれ。話はそれからだ。」俺は来た者達を部屋には入りきらないので広間に来させた。
俺の護衛に久信と久家の二人がついている。
数はおよそ四十人、後でもう十五人程度来るらしい。
広間に集まった甲賀の忍び達は顔を見合わせていた。
普通、忍びは頭領を除いて入れてもらえることがないからである。
「さて、これで話をできるな。まず、条件だが立原が説明した通りでいいな。なんか問題があれば言え」
「条件になんの異論もありません。」代理の女を含め忍びたち全員が頭を下げた
「異論が無いのならば命を下す。」俺はすぐに命令を出して。
「まず、半分は鉄砲長屋の護衛と監視をせよ。」
「次に山に行き山窩の者と協力して椎茸栽培の情報を隠せ。間者は一人たりとも生かして返すな」
「最後に浦上と山名に間者を送れ。情報が第一として絶対に無理はするな。生きておれば次に活かせる、以上だ」俺はそう指示をした。
た。
「すっかり忘れていたがお主の名はなんと言うのだ?」俺は代理の女に聞いた。
「はい、望月千代女と申します」俺は名前を聞いて開いた口が塞がらなかった。
「どうかされましたか?」と千代女に言われて我に帰り、
「なんでもない」と誤魔化した。
望月千代女とか、こんなところにいて武田は大丈夫なんか!!内心物凄く焦っていた。
「千代女、お主は孤児を集めて歩き巫女による諜報部隊を作れ」
俺はもうどうにでもなれと思い武田の作った歩き巫女を真似たのであった。
千代女達甲賀の忍びとの謁見を終えて年が変わった頃、立原が伊賀の忍び達を連れて帰ってきた。
「久綱よう戻った」俺は労うと
「勝手に内容を変えたこと申し訳ありません。それと、伊賀の者についてもまだ、決めかねている為、義久様にあって決めたいと申したので連れてきました。」
「そうか、ならすぐに会おう。部屋に呼んでくれ」久綱に指示をし、待った。少しして久綱と三人の男が入ってきた。
「お初に御目にかかります。私は伊賀の忍び頭領が一人百地正永と申します。こちらの二人は我が配下の者です。」そういって後ろの二人が頭を下げる。
「わざわざ来てもらって申し訳ない。私が尼子義久だ。それで、来てみてどうだった?」率直に聞いてみた。
「ははぁ、ここは伊賀とは違い民も笑顔で溢れており田畑も整備されており驚きましてございます」正永はそう言った。
「他国のそなたから見てそう見えるなら良かった。」俺は安心した。他の国と比べて劣っているようでは夢の実現など出来ないからである。
「それで、私に仕えてくれるか?」直球過ぎるかもしれないが変に考えるよりは、いいやと思い直接聞いた。
「その件でございますが、伊賀では私を含めまして三人頭領がおりまして、そのうち二人ほど仕官したいと思っておりますが、知行をどうしようかと思いまして。」そう言われたが正直これ以上は無理である。すでに、予定を大きく越えてしまってるからである。悩んだ末
「申し訳ないがこれ以上は与えられる土地が今は無い。それで提案だが、一人七百五十石、残り三百石分を金銭ではダメだろうか?」ダメ元で聞いてみた。
「望月より劣りますが仕方ありませんね。それでは御願いがございます。領地が増えたあかつきには必ず望月と同じ石にしていただけると御約束していただけるなら我ら伊賀の忍、仕えさせて頂きます。」
「そうか、約束しよう」
こうして伊賀の忍を召し抱えることには成功した。..金はかかるが。
「それでは私は伊賀に戻り此度の件を話してきます。ここに居ます二人は伊賀でも手練れですのでどうぞお使いください。」百地正永はそう言った。
「そういえば、名を聞いてなかったな」俺が訪ねると
「私は城戸弥左衛門と言います」
「私は伊賀崎道順と申します」二人は名前を言い頭を下げた。
二人の名前を聞いてまた固まった。二人とも信長を狙撃したことで有名な二人であった。
「どうかされましたか?」百地正永は不安そうに聞いてくる。
「いや、まさか音羽ノ城戸がおるとは驚いてな。」そういって一番驚いたのは言われた城戸本人だった
「それがしのことを知っておいでなのですか!」城戸はつい顔を上げてしまう。
「すまんが、名前だけしか詳しいことは知らん」と釈明した。
「いえ、名前を知っていただけているなど光栄の至り」そういって深く頭を下げたのであった。
こうして伊賀の忍と暗殺者が二人増えたのであった。
前回の遠藤兄弟に続き、城戸弥左衛門に伊賀崎道順と暗殺者が集まってきました。
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