帰還と拾い者?
横道正光
雑賀郷から雑賀衆九百人、鉄砲鍛冶師三名とその家族と共に米子まで目指している。
美作国なのでもう少しで米子に着く。
「この辺で少し一休みしたら一気に米子に行くか」正光は敵国の中なので急いでいたが鍛冶師とその家族がいるので無理はできなかった。
「私達のせいで申し訳ありません」鍛冶師の一人は言う。
「なに、もうじき着きますので気にせんでください」と伝える。
やはり数が数なだけに目立ってしまっていた。
休んでいると二人組の男が声をかけてきた。
「あんたらそんなに鉄砲を持ってどこにいくんだ?」
鉄砲は布で来るんでわからなくしていたのにこの二人に気づかれた。
警戒しながらも正光は
「なに、近くで戦がなさそうなので西に向かってみようと思ってな。あんたらこの辺のもんか?」答えながらこの二人のことを調べようとした
「いや、仕官先を探しながら近江から流れてきたもんだ」と言った。
「近江からなら色んな国があるから仕官出来たんじゃないか?」と警戒しながら不思議に思った。
「俺たちは鉄砲に詳しいから鉄砲を使える所に仕官したかったがなかなか無くてな。三好なんか門前払いじゃった。」 男は残念そうに話す。
正光は悩んでいた。義久にいいのがいれば勧誘してこいと言われていたからである。
「あんたら鉄砲に詳しいんだよな?」
「そうだが?俺はどっちかといえば作る方だが弟は撃つ方が得意だ」
この二人は兄弟だったのか...
正光は悩んだが連れていくことにした。
「なぁ、あんたらがよかったら一緒に行かないか?」
「うーん、俺達ここに来たばかりだからな。まぁ、それもいいかもな」二人は一緒に来ることに決めたみたいだ。
「名前を聞いてもいいか?俺は横道正光。」
「俺は遠藤秀清こっちは弟の俊通」
「どうぞよろしくです。」俊通は会釈をしてきたのでこちらもした。
「さて、そろそろ行くか」正光達は米子に向かった。
米子に着くと城に向かった。
「いったいどこに行くんです?」俊通は聞くと
「城だがどうかしたか?」正光は普通に答える。
「はぁ!!何で城に行くんだよ」遠藤兄弟は驚いた。
「あぁ、主に帰還の報告にな」
「はぁぁ~!!」遠藤兄弟は更に驚く。
「言ってなかった?俺は尼子義久様の家臣だって」
「聞いてねぇよ!!」俊通は大声で言う。
そのせいで周りに人だかりができてしまった。
「なぁ、俺達も着いていかないと駄目か?」重秀は面倒くさそうに言ってくる。
「駄目だ。最初くらいきちんとお会いしろ。」
「あんたらは知ってたんか!」秀清は重秀に言うと
「俺ら雑賀衆を勧誘してきたからな」
「雑賀衆~!」これには兄弟二人して驚いた。
「雑賀衆と言えば最強の鉄砲集団じゃないか!」
二人にとっては憧れでもあり、競いたい相手でもあった。
なんだかんだ話をしている内に城門まで着いてしまった。
人数の多さに門番が警戒したが正光を見ると警戒を解き招き入れた。
義久に会うべく重秀、重治、吉正の三人と遠藤兄弟が部屋で待っていた。
まさか、仕官の話になると思ってなかった遠藤兄弟は困惑していた。
その頃正光は義久に会っていた。
「ただいま帰還しました。御指示通り雑賀衆を引き入れることはできましたが禄が組頭一人辺り千石、雑賀郷が戦になれば一旦帰還することになってしまいました」と言い頭を下げる
「組頭ということは何人かいるのか?」俺は訪ねると
「三人にございます。兵士は九百人ほどです。」
せっかく正光が説得して連れてきてくれたのでその条件を飲むことにした。
「それと、二人ほど浪人で良さそうなのがいましたので連れてきました」
「その者達にも会おう。雑賀衆の組頭と共に連れてこい」
俺は会うことにした。
「初めて御会いします。私は雑賀衆組頭の一人岡吉正と言います。同じく土橋重治、同じく鈴木重秀」俺は名前を聞いて驚いた。
鈴木重秀、別名雑賀孫一がここにいたからである。
「よく来てくれた。条件は正光が説明した通りとする。硝石も出来るだけ用意するから尼子家の為に励んでくれ。」
「ははぁ!」そういって三人は頭を下げる。
「次、その方らが仕官先を探している者達か。名をなんと申す?」俺は訪ねると、
「それがしは遠藤秀清と申します。こちらは弟の俊通と申します。」「俊通にございます。」そういって頭を下げる
遠藤兄弟だって!内心物凄く焦った。史実では遠藤兄弟は宇喜多直家の元で暗殺をしていたからである。
「私たち兄弟は鉄砲を扱えますのでどうか鉄砲を任せていただきたく伏してお願い申し上げます。」そう言うと頭を下げるのであった。
「雑賀衆との契約で雑賀郷に何かあれば雑賀衆は戻ってしまうから別で鉄砲隊を考えてる。そこの指揮と訓練をやってみる気はないか?」俺は訪ねると
「喜んでお受けします!」鉄砲隊を任されるのがそんなに嬉しいのか秀清と俊通は額を床に擦り付けるくらい頭を下げている。
さて、鉄砲隊も揃った事だし、年が明けたら毛利との一戦だな。俺は忍原崩れを考えていたのであった。
なんだかんだで遠藤兄弟を召し抱えました。
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