067 所在不明
「おい真吾、何言ってんだ?一緒に居たんじゃなかったのか!?」
『いや、そうなんだけど、花音ちゃんが俺達を二人で遊べるように気を利かせてくれてさ。ちょっと時間もらったあとにはもう居なくなってたんだ』
わけがわからない。一体どういうことなのか。
真吾から詳しく説明を聞くと、潤達の班は当初5人で行動する予定だった。
真吾が言うには潤が抜けて響花がホテルで休んでいる。だけど実際はここにいる。残る真吾と凜と花音になるのだが、この3人の仲なら特に問題もないだろうと思っていた。ただ、花音が真吾と凜の二人で行動できるように気を遣ってくれたのだと。真吾も凜も花音の提案に甘えて時間を少しもらい、二人でデートをしていた。二時間後の待ち合わせ時間には間に合うように戻ったのだが花音の姿がなかったとのこと。当然連絡したのだが繋がらない。どうしたものかと思い身動きが取れない状態なのは、花音が戻って来た時に真吾たちがいなかったら困るのではないかということだったので急遽潤に連絡を取ることにしたのだった。
「事情はわかった。それで、お前らはどこにいるんだ?」
『今はそっちの駅から三駅ほど先になるな』
時間を確認する。その後隣にいる響花を見た。
「わかった、何もできねぇかもしれないけどとりあえずそっちに行く」
『えっ?大丈夫なのか?先生が近くにいるんじゃねぇのか?』
「いや、今はいないんだが、そんなに時間は取れないと思う」
『よくわかんねぇけどわかった。とりあえずいけそうなら頼む』
「ああ」
そうして一旦真吾との電話を切った。移動しながらでも話はできるが、まずは移動するための行動を取らないといけない。
「あのさ、響花」
「いいよ、行ってらっしゃい」
「えっ?」
まだ何も言っていないのに響花は潤を送り出そうとした。
「事情は後で聞くとして、その感じだと急いでいるんでしょ?見ればわかるわよ。で?あたしは何をすればいいの?」
「すまん、話が早くて助かる!あのさ、俺が戻って来るまで立花先生をそれとなく引き留めといてくれないかな?」
「わかった、潤君がお腹を壊してトイレにこもってるって伝えとくわね」
「その理由は後で審議するにしても、とにかくそんな感じで頼む!なんかあったら連絡してくれ!」
「はいはいー」
手短に話し終えて、潤はその場を後にして走って駅の方に向かう。
駅に向かう間に再度真吾に連絡して待ち合わせ場所の確認をする。改札を駆け抜けて電車に飛び乗った。
気持ちが混濁する。もしかしたら花音に何かあったのかと不安になる。
状況的には花音は一人で行動していたということになる。まだ陽は十分にあるので人目のつかない場所にでも行って偶然悪い人に目をつけられでもしない限りよっぽどのことにはならないのだろうという程度には予想をしているのだが、可能性はなくはない。だが、その可能性を考慮したとしても、問題はどうして連絡が取れないかということだった。
考えられるのは、スマホを落とした。充電をし忘れた。何かの拍子で壊れた。これぐらいしか思いつかない。更に悪いほうに考えれば悪い人に取り上げられたとかあるのだが、そんなことあるのだろうか。
逸る気持ちを必死に抑えるのは、電車の中で焦っても仕方がない。焦ることでそれでもし電車が着くのが早くなるのならいくらでも焦ろう。今必要なのは冷静な思考。しかしそうは思っても冷静ではいられない。
そうして三駅先、真吾達がいる場所の最寄りの駅に着いた。
先程の商店街のあった駅から少し街並みは自然が減り大きな建物が増えてくる。周囲には観光客はちらほらと見られるのだが、それよりも多いのは近くに大学もあるのか、若者が大勢乗り降りしている。
「さてっと、まずは真吾のところに行かないとな。時間はあとどれぐらいだ?――あって二時間ぐらいか」
帰りのことも一応気にして心配する。これで花音に特に何事もなくて結果俺がまた罰則を喰らう事態になれば目も当てられなくなる。まぁそうなったとしても、別に花音が無事ならそれでいいのだが。
そうして足早に駅を出ると同時に地図アプリを確認して走り始める。大学生らしき多くの若者は潤と反対方向に歩いて行っていた。
少し移動したところで一応周囲に視線を配りながら念のために花音がいないかどうか探して回る。
「っとと、ここラブホ街じゃねぇか。こんなところにいるわけないしな」
地図の道を基準にして最短距離を進んでいたので周囲の建物には気付かずいつの間にかラブホ街を直進していた。制服姿の潤がこんなところで一人でいたら目立って仕方ない。当然花音も制服姿なのでこんなところにいるはずがないと判断する。
ただ、場所が場所なだけにいらぬ想像をしてしまう。すぐに頭を振り過った考えを否定した。
いつまでもそこにいられないので素早くラブホ街を駆け抜けると小さな小川の堤防に出た。
「――――はぁはぁ、えっと、次は…………こっちか。走ればあと10分ぐらいかな」
とにかくこれで花音を探す時間を一時間以上は確保される。
そこで一度地図アプリを閉じて真吾に連絡をしようとしたのだが、そこで真吾から着信があったことに今更気付く。どうやら時間的にはどうやら電車の中で着信があったようなのだが気付かなかったみたいだった。
「あれ?俺がもうすぐ着くことわかってるだろうに、何か追加情報あったのか?」
いくつか可能性を考えるのはポジティブな内容。花音と合流することができたからもう大丈夫だ。そういう内容なら大歓迎だ。もしそうならすぐにでも引き返すつもりである。
そんなことを思いながらふと目線を遠くに送ると、遠くの小川の橋の上で該当の人物を発見してしまった。
「えっ?あれ?もしかしてあれ花音じゃないのか?」
目が良い潤の視界の先、百メートルは先にある橋の上で制服姿の女子と私服姿らしい男性がいた。
距離があるので断言はできないのだが、それでも自信を持ってそれが花音だということは言えた。
手に持っていたスマホは真吾に向かって発信ボタンをタップする直前だったのだが、花音がそこにいるのだから今はそんなことを気にすることなく潤は花音の下に一直線に走って行った。
なぜなら――――。
花音の腕が隣にいる男によって強引に引っ張られているように見えるのだから。




