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002 終業式の後に

 

「お前ら高校入って初めての冬休みだからってあんまり羽目を外し過ぎるなよ?」


 体育館で終業式を終えた潤たち学生は教室で担任の教師から冬休みの課題や注意事項の説明をされるのだが、生徒たちは話が早く終わらないかとそわそわしてほとんど聞いてはいない。


「ったく、これでこいつら意外にきちんとしていやがるからな」


 担任のそんなボヤキがありながら手短に済まされ担任が教室から出ると学生達は解放されたようにそれぞれが口々に話しだし、一気に教室内が賑やかになる。そこかしこでどこどこに遊びに行こうや彼氏彼女とうんたらかんたらと話している。



 そんな中、帰る準備をしていると少し離れた席に座っていた真吾が声を掛けて来た。


「なぁ潤?」

「どうした?」

「いや、さっき凜から連絡が来てこのあと駅前のカラオケに行かねぇかってさ」


 真吾はカラオケに行かないかと提案して来たのだが、潤は少し思案気に悩む様子を見せて口を開いた。


「んー?カラオケかぁ。ってかそれ凜と2人で行ってきたらいいじゃねぇか。お前ら付き合ってるんだし、俺がいても仕方ないだろ?」

「別にお前がいても俺らが気を遣わないの知ってるだろ?それに今日は凜が友達を連れて来るから俺だけだとバランスが取れないじゃんかよ。凜も潤を誘って来いって言ってるしさ」

「はぁ?ったくどうしてそんな話になってるんだよ」


 潤はカラオケに行くのを少しばかり渋るのだが、真吾は潤の返答を受けるとあからさまに不満を露わにする。さらに真吾の彼女の凜が友達を連れて来るのだと言うことで潤は尚更一緒に行くことに少しばかり嫌気が差した。どうして知らない女と一緒にカラオケに行かなければいけないのかと少しばかり呆れる。


「おいおい、なんて顔してやがんだ?だいたいお前そこそこモテるんだから彼女ぐらいいい加減作ればいいじゃねぇかよ」

「彼女なー。別に今はいいかなー」

「お前いつ聞いてもそう言うよな?まぁ無理に付き合ってもどうせ上手くいかねぇしな」

「そうそう。だから今回俺は行かないってことで」


 真吾が潤のことをモテると評しているのに潤は彼女を必要としている様子を見せない。真吾が無理に付き合っても仕方ないと言うと、潤が話は終わったとばかりに立ち上がり帰ろうとする。


「おいおい、本当に良いのか?それに来たら潤もきっと喜ぶと思うぜ?」

「ん?どういうことだ?」

「それは後のお楽しみってことで」

「ったく、いやらしい誘い方するよな。わかったよ、行くよ。行けばいいんだろ」

「よし、じゃあ決まりだな!」


 真吾が少しばかりニヤついているのが気になったのでどういうことか聞き返すがそれ以上は言わなかった。気になるなら来いと言わんばかりの様子を見せる。

 実際どういう意図なのか気になったは気になったのでまぁ別にいいかと思いながらカラオケの誘いを仕方なく承諾する。


「駅前のカラオケだな?ちょっと先生に用事あるし俺はチャリだから後で追いかけるよ。先に行っててくれ」

「ん、わかった。ちゃんと来いよな?」

「あのな、約束したことは守るぞ俺は」

「ははっ、知ってる」

「ったく」


 潤は用事があるので自転車だということもあって後から行くと言う。真吾は潤に念押しして笑いながら教室を出て行った。


「彼女かぁ……。そういやあれからもうすぐ一年になるのか…………」


 教室の外、窓から天気の良い寒空を眺めながら回想するように物思いに耽る。


「さて、と。過ぎたことを考えても仕方ねぇ。さっさと用事を済ませて行かねぇと遅れちまったら真吾と凜に何を言われるかわかんねぇしな」


 教師への用事を素早く済ませて足早に駐輪場で自転車に乗り、十分程度で駅前のカラオケ店に着いたのだが真吾達の姿がなかった。スマホを取り出し真吾に連絡をするとすぐに返信が来た。


 確認すると『もう中に入ってるぞ。部屋は21番な!』とだけだったので、待っていないのかよと溜め息を吐く。まぁ遅れたのは俺かと思いながらカラオケ店に入って21番の部屋を探して、ガチャッと扉を開けた。



「えっ!?」


 中に入ると思わず驚きの声を上げてしまう。


 部屋の中では、ドアに一番近いところで丁度真吾が気持ちよく歌っていたのだが、その横でソファーに腰掛けていたのは凜だったのはもちろんのこと、さらに凜の隣で一緒に曲を選んでいたのは隣のクラスの浜崎花音だった。


 思わずドアを開けたままぼーっと立ちすくんでしまう。


 すると歌っている曲の途中の真吾が歌うのをやめ、「おいおい、いつまでそんなとこでぼーっとしてんだよ。俺の歌声を他に聴かせたいのはわかるがよ」と潤の腕を掴み部屋の中に引っ張り入れた。


 潤は勢いでとりあえず部屋の中に入るが真吾に引っ張られた腕を今度はこちらから引っ張り返して耳元で小さく話し掛ける。


「ちょっと待て!どうしてあの子が、浜崎花音がいるんだ!?」

「ん?だから言ったろ?潤も喜ぶって」

「おまっ!?それであんなニヤニヤしていたんだな?」

「まぁいいから潤も座れって。凜も花音ちゃんもびっくりしてるじゃねぇか」


 真吾から視線を外して凛と浜崎花音に視線を送ると2人共こちらを見ていた。どうやら部屋の入り口で2人して話し込んでいるのが凜は気になったようなのだが、浜崎花音と目が合うと視線を外されてしまったのだった。



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