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第8話 交流

9/16 修正

(低速での運転は少し難しいな)


通行人を轢かないように気を付けながらゆっくりと走っている為バランスが取りにくい。

公園に続く細い道は車が一台走れるぐらいの広さで道はアスファルトで整備されていない砂利道であるが馬車であったり荷車が通行できる程度には整備されているようだ。

 フルフェイスのヘルメットを被った俺と初めて見る兵器バイクのようなものに道行く人は恐れの為か道端に避けマフラーから出る音に少し警戒している様子だった。


「あれって昨日来た魔術師の人だよね?」

「多分そうだと思う・・・」


村長のおかげで身分は保証されたものの村人は珍獣でも見るように俺と距離を取っている。


(怖がらせたままはだめだよな?)


デート(違う)まではまだ時間はある、ちょっとした交流会でもやるか。

魔術師は人を喜ばせるもんだしね多分……俺のサービス精神に火が付く。

フルフェイスのヘルメットを脱ぎハンドルに引っ掛けて通行人に声をかける。


「みんな~!今からすっごい魔術がはっじまるよ~!」


どこぞのヒーローショーのお姉さんのまねをして声をかけたが通行人が集まってくる様子はない。

予想どうりだ、悲しいけど


「わたくしイセカイから来ました!魔術師の尾形幹斗です!ミキト又はマジシャンとお呼びください!」

「では始めにわたくしの右手にご注目!!」


右手を上に掲げ注目させる。通行人は集まってこないが確かに俺の右手に注目している。


女性が多いからな。女性受けしそうな日用品を召喚だ!!


(こい!石鹸!)

「はい、みなさ~ん見ててくださいね~右手に石鹸が……?こない?」


失敗した?そう思ったとき左手に何か握られている感覚があった。


「あ……左手にありました~」

「……」「……」「?」


通行人は瞬きもしない。


誰か時でも止めた?あ、俺でした(笑)


パチッ……パチパチパチ

  パチパチパチパチ!!


一つの小さな拍手が周りを巻き込み大きな拍手へと変化していく


「凄い!石鹸が出てきたわ!」

「あれは召喚魔法じゃないの?」

「召喚魔法は魔物とかの召喚でしょ?あれは召喚魔法じゃないわ」

「石鹸召喚能力って聞いたことないくらいのクソ能力じゃん……」


少しだけ心を開いてくれたようで警戒する様子は見られなくなった。


時は動き出した。良かった。今クソ能力って聞こえましたよ?自分が一番知っています。


次はセールスタイムだ。弟に自作スライムを高価で売りつけた俺のトーク(脅迫)を聞かせてやるぜ。


「なんとこの石鹸!香りが付いているんですよ!服の汚れ、体の汚れを落とすと同時にあなたの身体と服

は心地の良い香りに包まれるでしょう!さあさあ、見て見て、触ってください」


最後の一文が変質者っぽくなってしまったが通行人は石鹸を見るために集まってくる。

 皆、ナイスバディの持ち主だ。露出の多い薄着なのでたわわなものに目が行っちゃうよ~(#^^#)

通行人は石鹸を手に取り匂いを嗅いでいる。


「ホントだ。いい匂い~」 

「匂いの付いている石鹸か~王都の物かな?」


(凄く甘い匂いがする)

甘い香りが鼻孔を刺激してくしゃみが出そうになる。

俺にとっては貴方たちの方がいい匂いですよ。ありがとうございます。


「本当にこれ服の汚れとか落とせるの?」

「勿論! 水よこい!」


お客様からの質問に実演で汚れを落とす所を見せるために水を呼び出す。 


こねえな……


「水きてください!」


こない……そういえば水は日用品じゃなかった。


「……誰か水を持っている人いませんか!?」


客に助けを求めたのではない、あれだ、観客参加型の実演さ。

 困っているその時ちょうど川から水を汲んできたのであろう女の子が前を通る。


「君!水をくれないか!?」

「……」


反応はない。


「お菓子上げるからお願い!」 


ぐへへ、おじちゃんのとこにおいでよぉ~


「……」


やっぱり反応はない。


仕方ない、何か他のプレゼントにしよう。


「こい!ヘアブラシ!」


右手にヘアブラシが召喚される。


「これと交換しない?」

「どうやって取り寄せたの!?」


ヘアブラシを女の子に持たせると女の子はヘアブラシと俺の顔を交互に見て驚きと興奮、好奇心が混じる目で俺に質問をしてきた。


「教えられません、魔術師なので」


カッコつけて回答。教えられるわけがない自分もわからないんだから。


「交換!いいよ!」


女の子は水の入っている桶を俺の左手に手渡す。

教えられないと言われ少し残念そうだったが水とヘアブラシのトレードは成功したようだ。


バイバイ!ヘアブラシ!元気でな!


水を手に入れたところで石鹸のセールスに戻る。


「では、泡立ててみてください」


石鹸を持っていた女性は石鹸を桶の中の水に浸して手のひらで泡立てた。泡はすぐにきめ細かい弾力のある泡となって女性たちの手の平で山を作っている。


「すごい……こんなに泡立つんだ」

「私にも貸して!」

「私にも見せてほしいのだが 」

「貸して~!」             


他の通行人達が石鹸を手に取ろうと腕を伸ばす。


石鹸の奪い合いが始まった!石鹸争奪戦!開始!

成人女性、幼女、少年が入り乱れ石鹸を奪い合っているうちに泡が散乱し成人女性達のわがままボディを覆い隠す薄い服に付着し、わがままボディのシルエットを露わにしていた。


(鼻血が出そう。ティッシュ召喚しよ)――


――石鹸争奪戦は10分ほど続きようやく終戦を迎えた。

砂利道は泡によって一面白で覆われて道が掃除された様だった。


(ありがとうございます。ありがとうございます)


俺の心も洗われた。


(異世界来てやっといいことあったあ~)


これまでのひどい仕打ちと目の前の天国に涙を浮かべ満足した俺は泡だらけの通行人に軽く挨拶をして待ち合わせの場所にバイクを走らせた。


途中、バイクを走って追いかけてくる子供達がミラーに映っていた。かわいいやつらめ、と思いながらもどんどんバイクに追いついてくる子供達に恐怖を覚えた。


「アハハハハハッ」

「ひっ」


全員笑いながら走って追いかけてくるのだ、恐怖でしかなかった。

アクセルを捻りスピードを少し上げて距離を引き離した。


「獣人もどきってすげえな……」




――「来ないな」


ヤンに伝えられた待ち合わせに指定された場所と時間に着いたが立派な大胸筋を持った女の子は見当たらない。


ドタキャンかな?


「!!」


その時背後に人が立っている事に気が付く。

俺の背後に立つな……怖いんだよ

振り返るとそこには見たことのあるショートボブの猫のような印象を与える女の子が立っていた。

大胸筋は発達していないがそれなりに胸はある。


「君、追いかけられていた女の子だよね?」

「……」

「牢屋であったよね……?」

「……」


返答はない。しかし綺麗な茶色の目はこちらをずっと見ていた。


「案内よろしく……?」


「――ろしく」

小さな声で返答してくれた。


三回会ったんだからもう顔見知りだよね……?



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