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第51話 到着、王都


リリーガーデンと合流して二日、俺達はついに王都にたどり着いた。


「あれが王都か」

目の前にした王都に喜びながらパワーウィンドウから顔を出して王都を一望する。


王都の外観は海沿いを背にしてそびえ立つ正に城! と言った白い城が一番高い盛り上がった地形の上に建っていた。

そして海沿いの王都の城下町の海では水着になって砂浜で遊ぶ獣人、獣耳が生えていない人間が混じって泳いだりキャッチボールをして遊んでいるのが見えた。

キャッキャウフフなその光景は平和を象徴し、揺れる胸を見ながら平和を感じた。


「これが海ですか~! 凄い大きいです!」

海を見ていたのは俺だけではなくアリスとシーナも海に見入っていた。


「あら? シーナは海は初めて? 知ってる? 海の水はしょっぱいのよ」

「そうなんですか!?」

小学生レベルの知識を披露してシーナから尊敬の眼差しを貰い羨ましいとドヤ顔のアリスに少し苛立ちを覚えながらもシーナの水着姿を思い出して心を落ち着かせた。


近いうちにシーナの水着姿を又拝めるのか……ありがたやありがたや。

心が弾む。


「にしても本当に長かった……」

異世界転生から長い道のりを経てようやくたどり着いたエストラスの王都を目の前に力が抜ける。


 本当に長い道のりだった……異世界転生して野原に放り出されて魔法が無い田舎村で事件に巻き込まれて出発してアリスを助けてしまった事によりシストに行くことになってこき使われてひと悶着あってドラゴンに会って死にかけて女神に会って生き返って戦闘に巻き込まれて十人の色とりどりの美少女に会って……


やっと王都に着いた。


と王都への道を守る番兵にセミトレーラーとなった車を睨まれながら王都のへの重厚な門を潜り王都に車を入れると歓声が上がる。


「ドラゴン倒したんだって? よっ! ドラゴンハンター!」

「第一軍もやるじゃねぇか! 今回の手柄で紋章貰えるんじゃないか~!?」

「あれは何だ? あんな魔装兵器あったか?」


男の声、女の声、騒ぐ声、歓声で一人が何を話しているか分からない程の雑音を帰還パレードで奏でていた。


「何か俺めっちゃ歓迎されてる?」

感慨にふけり旅路を振り返るミキトは王都の人々からものすごい歓迎に目を丸くする。

こんなパレードの様な催しはどこぞの皇太子でもなければ経験できないだろう。しかし王都の人々の眼は直ぐにリリーガーデンの面々に向かう。


「ユイズさーん! 結婚してくれー!」

「ユイズさーん!!」

訂正、男達の眼はリリーガーデンのユイズ・アイランに向いていた。


「あはは……」

魔装兵器を超低空飛行で前進するユイズは困ったように男達の野太い声援を受け流しながら手を振っていた。

それを見て身悶える信者ファン

異様な熱気がその場の空間を捻じ曲げていた。


「ライラたそ~!」

ん? 何か他の人を応援する声も聞こえたな。ライラってユイズたそ~って引っ付いていた白い子だったっけ? 因果応報だな。


騒がしく盛り上がる王都で俺はセミトレーラーを運転しながらパワーウィンドウ越しの王都の住人を見やる。

街並みはシストと同じく三階建ての中世ヨーロッパ風の家が隙間なく建ち並び密接していたが時々見える裏路地への道の先は太陽の光が届かず夜の様に暗く、その闇の中で何か動くものが見えたが孤児だったのだろうと思いながらも車の運転に集中した。

裏路地の住人に対して王都の住人は獣人、人間が混ざり俺達を迎え入れてくれているが王都に住んでいるとだけあって服装は煌びやかで布地も綺麗に織られているものが多かった。


そして白い胴着の男達は居なかった。

良かった、白い胴着を着たやつは居ないな……


もしこの王都で白い胴着を着た男を見てしまったら完璧に再現された中世ヨーロッパの景観を損ねてまたも落胆せずにはいられなかったはずだ。


「シストと街並みは同じですね」

「白い胴着の奴は居ないけどな」

チラと隣のアリスを少しからかったような眼で見やる。

「馬鹿にしてるのかしら? 低俗ね」

ミキトの低レベルなからかいを払いのけ前を見据えている。


こいつ……見た目幼児体型のくせして変に大人だから癪に障るな。

ご飯作ってくれるし洗濯してくれるしお金持ちだし顔は可愛いし。あれ? もしかして非の打ち所がない?


対して俺は高卒、パチンカス、借金持ち。あれ? 打ちどころしかない。パチンコだけに。


アリスと自分を対比して圧倒的な格差を突き付けられたミキトは気を取り直してハンドルを握る。


(いや、大丈夫。俺の異世界成り上がり物語はこれからだ)


心の中で安定を図り思わず笑いが漏れる。


「ミキトさん何笑ってるんですか?」

「聞いちゃダメよシーナ。只の妄想よ」


笑いを隠せないミキトに二人は距離を置き可哀想な人を見る目で見ていたがそれに気づいたミキトは余裕の表情だ。


「ふっアリス。俺はこれから金持ちになるかもしれないんだ、言葉には気を付けろよ?」

「は? 何言ってるのかしら? 寝言? ちゃんと運転しなさい。あと借金返しなさい」

「分かってるよ」

なぜこんなにもミキトが余裕の表情なのかこの溢れる自信は何なのか二人には理解しがたい物だった。

そんな理解ができない二人を見てミキトはこの後の成り上がり計画を教えてやる。


「よく考えてみろよ。俺はドラゴンを撃退したんだぞ? それに窃盗団だって撃退した。これはもう金一封どころじゃないぞ。豪邸と伯爵の地位、それに謝礼金が出てもおかしくはない! いや! 出ないとおかしい!」


自分の功績からこれから王様に貰える謝礼として大金を手にできると確信していたミキトは爛々と目を輝かせ数時間後にはお金持ちになっている自分を見据えていた。


「確かにすごい功績ね。でも世の中そんなに上手くいくものじゃないわよ」

と楽観的なミキトの妄想に水を差す。


またこいつはお母さんみたいなこと言いやがって……


「数時間後の俺にもそんな事が言えるといいな」

アリスの言葉に反抗して挑発する。

ミキトの挑発に一瞬むっとした表情を作ったアリスだったが直ぐにすまし顔に戻り視線を前に固定した。

が二人の会話の区切りを見つけてミキトに話し掛けたシーナの言葉に驚き視線はシーナに向いた。


「豪邸もらえたらトレーニングルーム欲しいです!」

「シーナ? 何言っているの?」

「うん、同じ言葉を俺もシーナに言いたい」

「何か変でしたか?」

信じられないといった表情のアリスとミキトがこちらを見てきたので何か変な事を言ってしまったかと首をかしげたシーナは俺達が何を驚いているのか分からないようだった。


シーナさんマジですか? 大胸筋鍛えちゃうんすか? そのままでいいよ。


トレーニングと聞きシーナの親父のヤンの立派な大胸筋が脳裏をよぎる。

獣人もどきの女性の事については良く知らないけれどおっぱいから大胸筋に進化しないでね? そのままの君が良いよ……


未来のシーナの胸を心配しながら今のシーナの胸を見つめる。


「ミキト。何処見てるのかしら?」

それを邪魔するようにいつものようにアリスが阻む。


どけよ。見えないだろうが! お前は逆に大胸筋鍛えて胸大きくしろ! 


アリスに阻まれ諦めて前を向いたミキトは隣の二人の会話に聞き耳を立てることにした。


「えっと獣人もどきは習慣的に筋トレをするのかしら?」

「……? 父が普段から行なっていたので私もやっているだけですが」

「そうなの……トレーニングは程ほどにね」 

アリスもシーナの胸が大胸筋になるのではないかと心配してかトレーニングは程ほどにと注意した。


「豪邸もらえたら海に近い所にしようぜ!」

話を切り替えこれからの事に付いて話す。もうワクワクが止まらなかった。


そう、海の近くに家を構えればきっと二人は海に行く。そうなれば必然的に水着にならざるを得ない。つまり水着をいつでも拝める。眼福。


「いいですね! 魚も採れそうです!」

「まあ、いいんじゃないかしら」

シーナの賛成に続いてアリスも賛同する。


「ああ……いいよな……」

心の中で笑いが止まらない。

 海近くに家を構えれば三日に一回はシーナの水着姿が拝める。ミキトの策略は二人に何の不信感も与えない完璧なものだった。


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