第18話 三日間執事
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「にしてもこの魔装兵器面白いわね」
アリスは車の内装を端から端まで眺め所々いじり始める。
「あの、あまり触らないで……」
「何かしら?このスイッチ」
俺の忠告を無視してアリスはパワーウィンドウのスイッチを押す。アリスによってパワーウィンドウが開く。
「此処から魔法を放ち敵を狙撃するのね、操縦者と魔法士を守りつつ敵を追跡、狙撃、革新的ね」
違う、車は人によって作られた人類最高のマシンで人にとっては無くてはならないものだ。そんなどこぞの戦車みたいな兵器じゃない。
口では反論せず心の中で訂正するミキトは前方に町があるのに気づく。
「あれがシストか」
「シストか~どんな町なんでしょうね?ミキトさん」
「きっとモヒカン頭のマッチョが奇声上げている町で食料を奪い合っていると思うよ」
「そんな物騒な街じゃありません、多くの武人、武術家が集まる町で鍛錬の町とも呼ばれています」
俺の勝手な世紀末イメージをシーナに伝えると俺の言葉をアリスは否定した。
シーナさんの前情報では暗殺術とかあるって聞きましたよ?
「アリスさんは色々な魔法を使えるんですか?」
「勿論よ、むしろ魔法使えない人とかいるのかしら?」
この車内に二人います。
「私魔法使えないんです」
「そ、そうなの……そんな人もいるわよね失礼」
「いえ」
「実は俺も魔法知らないし使えないんです」
「つまらない嘘はやめなさい」
「本当なんですが……」
シーナに対する風当たりと俺に対する風当たりが違うことを感じながら俺の車はシストへと入る。
シストはクルックスとは違い広い石畳の道、中世の街並みが並ぶヨーロッパの景観をしていた。そして獣耳を生やした獣人が町を……!歩いてる!!道行く獣人の着ている服は女性はドレス姿と男は胴着姿の獣人が多く見受けられる。中世ヨーロッパの街並みに胴着は場違い感が凄い。
だがこの車内の空間が一番異常だ。白いワイシャツに黒いスキニーパンツの男、薄手のワンピースの腰にブランケットを巻いた女、極めつけに銀色のセミロングの髪をツインテールで縛り部分、部分しか守れていない西洋甲冑を付け腰に日本刀のようなカーブのある刀を帯刀していて西洋甲冑と日本刀の組み合わせの女。
「魔剣士見習いやってたのか?」
「まあね、でも何か違う感じがして辞めたわ」
「ふうん、でアリスさんの家はどの辺?」
「あの丘の上よ大きな建物があるでしょう?あれが私の家」
車の後部座席から目で伝える様に右手に見える大きな丘の上を指した。そこには大きな建物のシルエットがあった。
「アリスさんはお嬢様?」
「そんな所ね」
人を顎で使うのがうまいのと、この言葉遣い、なるほど納得。初めの”お前馬鹿だろう!?”は無かったことにしよう。
「おぉ~すごい……」
俺とアリスの会話をよそにシーナはシストの街並みに目を奪われ歓声を上げている。
――「どうぞ、入りなさい」
「すっげぇ」
「……」
シーナは言葉すら出ていない。
アリスに招かれた家は家ではなく豪邸だった。
万里の長城かと思える横に長い門、その百メートルほど先の広大な敷地の中に建つその豪邸は綺麗な白色の三階建てで三棟に分かれている、窓の数は一階部分だけでも五十は有に超えていた。屋敷に入る扉の前には石造りの階段が堂々と鎮座している。
しかし、広い敷地の庭園には花が一輪もなく使用人がいる気配もない。豪邸には付きもののプールにも水は張っておらず大きな深い窪みしか見えなかった。
「執事とかは?メイドは?メイドは?居ないの?」
「使用人はいません」
メイドは居ないらしい、”いらっしゃいませ、お客様。”のフレーズを聞きたかった。
「お前達がメイドの代わりかしら?」
え?俺達がメイド!?俺達がメイド服着るの?
「この家には使用人がいないからお前達を泊めても何の問題もないのだけれど家の掃除が面倒でね、三日だけ泊めてあげるからこの家の掃除をしてちょうだい」
どうやら俺とシーナは二人でメイドになってこのデカい家の掃除をしないといけないらしい。だがヤンキー女神様からの依頼がある。此処で油売っていたら後でどやされる。
「すみません、お気持ちは嬉しいのですが俺達は車の中で泊まるので大丈夫です」
「荷馬車を壊すだけでなく馬も逃がしたわよね?」
「三日間だけですが精一杯頑張らせていただきます!」
俺の三日間執事が始まる。




