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第一章の6 大樹の都セウブケス

自分でも誰に語りかけているのか分からないが、みんなは大樹と聞いてどのようなものを思い浮かべるだろう。

身近にある大きな木?それともファンタジー世界で画面越しに観たあの樹だろうか。

この世界の大樹とはファンタジーでありながら想像とは少し違っていた。


「フリシア様と兄ちゃん達の部屋は208号室だよ」


「ありがとうございます!」


「それではごゆっくりぃ」


俺たちは大樹の都に着いた後、まずは暫くの生活の拠点となるであろう宿屋へと向かうことにした。

街はこの領地で最大の街ということもあり、2階建て以上の建物も多く見られた。それに今までの村などでは見かけなかった珍しいものも目に飛び込んできたのである。そうオタク気質な俺としては無視できないものが。


身長は150cmくらいだろうか。この世界では一般的な衣服のデザインに包まれた女性だがその衣服は一箇所多めに穴が開けられていた。

そう、そうである半獣人、獣っ娘である!!!


諸君、私はファンタジーが大好きだ。

諸君、私は獣っ娘が大好きだ!!


...申し訳ない。少々興奮してしまった。


それだけではない。獣っ娘が居るということは獣っ男も居るということだ。

他にもドラゴン族という感じの人たちや身長の小さな種族、エルフ耳に走り回る観たことも無い生き物の引いた荷車も行き交っている。


「なるほど、ここは天国か。」


二人には勿論、周りにも聞こえない声で呟いたりもした。


少々本筋から外れてしまったな。

本題に戻ろうか。


「でだ、俺たちがここに来た理由は簡単に言えば仲間集めでいいんだよな??」


俺は改めて確認する。

こんな異世界で情報の正しさは何よりも大事だ。


「ええそうよ、屋敷を出る前に言ったとおり、エクセア領最大の街であるここセウブケスにはエクセア中...いや、時にはアザレアの様々な場所から物や人が流れ着くわ。」


「へえ、そんなにこの街は何か重要なものでもあるか??」


いくら大きな街とはいえ、首都や王都でもないのに物や人が特に集まるということはそれだけ理由があるということだろう。


「知らねえのも無理はねえな。お前は”外国”から来たはずだしな。」


カルミアが答える。


「そうだな、この世界の事は幼稚園児より知らないと思ってくれ」


「幼稚園児ってなんだ?」


「あーえっとまあ、あれだ。俺の国で小さな子どもって意味だ。」


言葉は通じても単語などは通じない。実に不便だ。


「まあこの街になぜ人が集まってくるかは、今から行く目的の場所で分かるさ。」


「目的の場所といえば、この街に仲間を集めるために行くとは言われてたがこの街の何処に向かえばいいんだ??」


まあこの宿に来るまでの間に観てて思ったが、今まで観てきたこの世界の何処よりも人がいるのは確かだ。


「この街にはギルドがあります。ギルド自体は王都管理のものなのでそこに所属している方には直接、仲間になってもらうことは出来ません。出来ないのですが、わけあってギルドを辞めた方などには助けをお願いできるはずです。」


「それにギルドで仲間になってくれる人に出会う事は正直、難しいでしょう。しかしこの街で人を集めたり、物を集めたりするのにはピッタリの場所だと言える場所なのです。とは言ってもギルドの上ですけどね。」


フリシアが答えてくれる。それにしてもギルドの上?あーなるほど、ギルドは王都管理の物とか言っていたな。

国が関わっているって事は金がかかってるということ、それにフリシアは上とも言ってたし5階建てとか元の世界で言う所の大型商業施設みたいな事になっているのかな。この世界のデパートはどんなものなのか少し楽しみだ。


「よし、じゃあ早速ギルドに向かおうぜ。」


「ギルドはここから街の中央へと向かいます。」


やっぱり大きめの施設は街の中央にあるんだな。

そのへんはどの世界も...とは言っても2つしか知らないわけだが変わらないと言うことだな。


「お、そうだオワリ せっかくここまで大きな街に来たんだ。何か気に入った武器でも買うといい。お前にやったその剣は勿論、良い物だがやっぱり自分で選んで買ったものは愛着が湧くもんだ。お代なら気にすんな。俺が出してやるよ。」


「マジで!いいのか??」


「おうよ。」


「素直にありがとうございます!カルミアパイセン!!」


最低限の荷物を持ち、宿屋を出た俺たち3人はギルドがあるという街の中央の方へと向かう。

宿屋にあった地図を見る限り、遠目であったために詳しい所までは分からないがこの街は真ん中の大樹を中心に円形に街が形成されているようである。

街への入り口は4箇所あるようではある。


「お、ここの武器屋なんてどうだ?」


カルミアの指指す方を見ると小さなこじんまりとした武器屋があった。


「俺はあんまり武器屋の事は当然だが分からないからカルミアに任せるよ」


「それは安心ですね。なんたってカルミアは私の認めた騎士である上にお店を見つけるのがとても上手なのよ。雑貨屋でも屋台でもなんでも。」


「ならここで決まりだな。」


俺達はお店をドアを開き中に入ることにした。


中には剣に鎖鎌、短刀にモーニングスターのようなものまであった。

それにカウンターには口ひげの生えたおじさんと獣耳の生えた赤髪の女の子が居た。


「いらっしゃいませ。何をお探しで...ってフリシア様!?このような小さな武器屋に何用でしょうか??」


「今日は新しく私の騎士になった彼に1つ武器を。」


「ああ、それでしたらこちらの弓などどうでしょう?扱いやすく質も良いものですよ。」


そうやって店主は壁に掛けられた弓をおすすめする。

しかし俺は遠距離武器など使える気がしない。剣の扱いさえまだ上手くいかないのだ。


「んー良い物だと言うのは分かるのだが、他には何か無いか??」


「他には短剣などはどうでしょう?」


短剣か。短剣なら剣と弓ほど離れてなく、扱いもだいぶしやすそうだ。


「今ある短剣だとこの2本がおすすめですね。」


カウンターの上に短剣が2つ置かれる。

左から順番に手に取ってみるが1つ目の短剣は少し重さが重たい。刀身は使い勝手のいい大きさだ。

2つ目の短剣は重さは良いのだが、少し大きめであり使いづらく感じる。


俺が店主からおすすめされたナイフを手にとって見ているとカウンターの後ろにもう1つ短刀が置かれていることに気がついた。


「あっちにあるあの短剣は?」


「ああ、あちらはこの娘が...「兄ちゃん!見る目あるなぁ!あれはウチが作った短剣なんや!ええやろ?」


「おいおいビックリするから急に大声を出すなっていつも言ってるだろ。」



目を輝かせ、店主の言葉を大声でかき消して関西弁に近い言葉で話しかけてきたのはカウンターで静かに別の剣を磨いていた半獣人の女の子。見たところ年は俺と変わらないくらいに見える。



「そ、そうか。それならえっと...すまん名前を聞いてもいいか?」


「ウチの名前はリナリア。リナリア・リマアリス。リナリアでええよ。」


「えーとそれじゃあリナリア、その短剣見せてもらってもいいか?」


「ええよ!ウチの最高傑作や。まだまだおやっさんに認めてもらったばっかりで店の商品として棚には並べてへんのやけどなぁ?」


そういってリナリアは嬉しそうに尻尾を振りながらカウンターの後ろの短刀を俺へと持ってきてくれた。

短刀を手に取ってみる。うん。重さも丁度良い。軽く振った感じ扱いにくい感じもしない。それに刀身はまるで星のように美しく見える。


「良い感じだ。重さとかもしっくり来る。良かったらこれを売ってもらうことは可能か?」


「お客さん買ってくれるん!?ふへへえ、うちの短刀に目をつけてくれたんはお客さんが初めてやわ。なんや認められた気がして嬉しいなぁ。あ、もちろんええよ!」


この世界に来て初めての買い物が短刀、所謂ナイフになりそうだ。ナイフを買う18歳というのは元の世界では明らかに危険人物だな。


「いいんですかい?リナリアの腕は私が保障しますが...。」


「これが良いんだ。」


俺は強く頷く。

それを見たカルミアが言う。


「武器ってのは自分で選んだものが一番だ。オワリ、お前が良いならそれにしろよ」


「ああ、そうする。それでお代なんだが、いくらで売ってくれるんだ?」


「お代?いやいやお代なんてええよ!ウチかてまだ駆け出しや。お客さんがウチを認めてくれただけでも嬉しいしなぁ」


「いやいやそういうわけには行かないだろ!」


「本当にええってー。そやなーじゃあ今度ウチが困ってたらそんときは助けてくれたらそれでええよ!これならお客さんも納得してくれる?」


「あーそうだな...。ここまで言われたら仕方ないな。ありがたく使わせてもらうよ。それと俺のことはオワリで良いよ。」


ということで頑固な獣っ娘に押され嬉しい限りだが短刀が格安で手に入った。

可愛い女の子の最高傑作の武器。なんだ俺も騎士らしい感じのものをゲット下で来たじゃないか!

お店のおやじさんとリナリアにお礼をいい、店に悪いので消耗品を購入して店を後にする。


「それじゃあオワリ!また何かあったら今後共おやっさんと私の商品買っててな!待っとるよ!」


店の扉を半開きにして俺たちに笑顔で手を振ってくれるリナリア。

ああ俺、今幸せだ。


そして武器屋を出て暫く歩く。丁度木の下まで着いた時フリシアが立ち止まる。


「着きましたわ。」


「え?どれがギルドなんだ?」


「目の前にあるじゃねーかよ」


カルミアとフリシアは指をさす。

その指の先には大樹があった。

大樹に空いた穴の前には看板がありこう書かれていた。



大樹街ウーチア。

そう、この世界の大樹はそれ自体が一つの街なのである。

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