驚愕
「お、おい……、これってもしかして、もしかすると……。鑑定人はいるか!? ってハクトールがそうか……。いや、別の人の方が……。まだエミリが上の部屋にいたか? ダメだ! 今日は宿の手伝いをするから早めに帰ると言っていた……。どうする……、どうする……」
魔石を見たノービスさんが動揺して、その場を行ったり来たりしていた。
当然だろう。
討伐隊を組むとまで言っていた相手だ。
そんなものの魔石をあっさり取ってきた……なんて誰も信じない。俺も信じられない。
ただ、これが魔族の魔石だという真実だけは変えられない。
仕方ないだろう、はっきりと俺の【詳細鑑定】がこう示している。
『魔石(魔族)』
以前見たものと変わらない、魔族の魔石という表示結果……。
まぁノービスさんの気持ちもわかるので俺はこの魔石をノービスさんに預け、宿へと戻っていった。
何度も、「本当に預かっても良いのか? もし俺がこのまま持ち逃げして――」みたいに聞いていたが、ノービスさんの立場上逃げると言うことはないだろうし、それ以上に疲れたから今日のところは休みたい……。
なので「良いですよ」とだけ言い返しておいた。
そして、宿へと戻ってきて、部屋へと入ろうとすると急にグランが立ち止まる。
「ハク、今日は助かった。あの魔族に仕返しをするつもりだったが、逆に返り討ちにされてしまってな。迷惑をかけた」
「もうそんな無茶だけはやめてくれよ。そんなことをしたらニコルも悲しむぞ」
「そうだな。それでハクに頼みがあるんだが……」
「俺に?」
一体何だろう? もしかして、俺たちのパーティに加えてくれとかそういったことだろうか? グランなら俺たちもよく知っているので大歓迎するところだが――。
「あぁ、実はニコルをハクたちのパーティに加えて欲しいんだ」
「えっ!?」
まさかニコルのこととは思わなかった。
というか、本人はまだ冒険者証すら持っていないはずだけど?
「ニコルは冒険者になりたいのか?」
「あぁ、病気で寝込んでいるときから俺の話を聞いては冒険者になりたいと常々言っていたからな。ハクと一緒に行動してくれると助かる」
「……俺としては歓迎するが、それはニコル次第だな。ニコルが俺たちと来たいと言ったらな」
「そうなるよな。わかった。このことはさりげなくニコルに聞いておく。すまんな、変なことを聞いて……」
「気にするな。ところでグランはこれからどうするんだ? なんだったらグランも俺のパーティに……」
「いや、俺は俺でハクに負けないパーティを作ってみようと思う。今回のことで改めて思わされた」
「そうか……」
それ以上、俺は何も言わなかった。




