vs.ミグドリー(3)
シャルが魔法を唱えると俺たちを守るように半球体の透明の壁が現れる。
そして、爆発をその壁が防いでくれる。
ただ、俺たちはその壁が守ってくれたがニャーたちが……。
「危なかったにゃ。シャルのおかげでたすかったにゃ」
驚きの表情を見せているミーナの首元を掴んでいるニャーが、いつの間にか俺たちを守る半球体の壁の中に入って来ていた。
「よ、よかった……」
両手を前に突き出して魔法を維持しながら安堵の声を出すシャル。
するとその時、強い衝撃が壁を襲う。
少し苦い顔をするシャル。
その衝撃はしばらく続き、次第に壁にひびが入り出す。
「ま、まずいんじゃないの?」
ミーナが慌て出す。
まさか【魔法威力10倍】のシャルの魔法が破られそうになるなんて……、そうだ!
「ミーナ、シャルに強化魔法を使ってくれ!」
「そ、そうね。そうよね。……□△◯△、魔法強化」
慌てた様子のミーナが急いでシャルに強化魔法をかける。
鈍い色の光がシャルを包み込むとひびが入り始めていた壁が少し直る。が、それでも焼け石に水程度だろう。
何とかこれで耐えられるといいんだけど……。
永遠とも思える時間が過ぎ、爆発音が収まったとき、まだシャルの壁は無事だった。
至る所にひびが入り、いつ壊れてもおかしくないほどだったが……。
そして、黒煙も晴れると自信ありげな表情をしていた魔族の男の顔が驚愕の表情に変わる。
「な、何で無傷なんだ!?」
確かにあれだけの威力だ。シャルがいなかったら防ぎようがなかった。
魔族の男も相当無理をして今さっきの魔法を放ったようだ。
再び俺たちに攻撃を加えようとして、少し足がふらついていた。
その隙を見過ごすニャーではなかった。
一瞬の隙をつき、魔族のお腹に斬りつける。
威力は弱いものの普通の体の部分を斬りつけたことで、その短剣は魔族の体を少し傷つける。
その瞬間に魔族は毒の状態異常を帯びる。
「ぐっ……、その剣は……」
恨めしげにニャーの短剣を見る魔族。
猛毒ではないので、大ダメージは与えられないものの少し動きが鈍くなったようだ。
ニャーと動きが拮抗していたので、この少し鈍くなるというのは致命的だ。
ニャーの攻撃の当たる回数が次第に増えていく。
「わ、我がこんなところで――」
悔しそうに声を上げる魔族。【詳細鑑定】をするといつの間にか状態が猛毒へと変わっていた。
魔族の男の姿もいつの間にか赤黒い皮膚から元の人間の姿へと戻ってきていた。
そして、そのまま魔族の男は倒れた。
ふぅ……、なんとか倒せたか……。
そう思い気を緩めようとした。俺だけでなくニャーたちも魔族に背を向けようとした。
ただ、【詳細鑑定】で調べた感じだとまだ魔族の表示が残ったままなんだよな。




