vs.ミグドリー
エビナフダンジョンの三階層へとたどり着いた。
以前はこの階層には魔物が住んでいたが、今はそのような気配がしない。
これも全て魔族の男の仕業なのだろうか?
周囲を警戒しながらクドゥの実の反応がした方へと向かって進んでいく。
しかし、クドゥの実があるはずの場所には壁があり、中には入れなかった。
「どうしたの? 早く先に行くわよ」
ミーナが急かしてくる。でも俺の【詳細鑑定】が間違えるようなことはないからな……。
何もないというのが信じられずに俺はクドゥの実がある方向の壁を調べていく。
軽く叩きながら調べていくと一カ所、壁だと思っていた場所が隠し扉になっていた。
模様は周りの壁と同じ――。ただ、押すと開く……。
うん、これはこの場所に隠し部屋があると知らないと気付かないな。
ただ、この場所をグランが見つけられたかというと疑問が残る。
とにかく調べに行ってみよう。
隠し通路を進んでいくと先に普通の部屋の扉が付いていた。
そして、中から誰かの声が聞こえてくる。
「言え! 私の計画を邪魔したやつは誰だ!」
この声は魔族の男のものだろうか? 前と雰囲気が違いすぎるので別人のように思える。
「ふん、誰が言うか!」
もう一人、聞こえてきた声はグランか!?
捕まっていたのだろうか? それとも自分から? 扉越しに声を聞くだけでは状況がいまいちわからないな。
「お兄ちゃん……」
思わず声を漏らすニコル……。
慌てて自分の口を押さえる。
気付かれただろうか?
俺は慎重に聞き耳を立てる。
「それに、ニコルを魔物にするつもりなら初めから俺にクドゥの実を渡しておけばよかっただろ! なんであんな回りくどいやり方をしたんだ!」
「あの子を魔物にするのは当然として、でもそれだけじゃ面白くないだろう。お前が苦労して取ってきたクドゥの実を食べた結果魔物になる……。それを見て絶望するお前の姿も見られて最高じゃねーか」
「くっ……外道が――」
すぐに魔物にしなかったのはあいつの趣味だったのか。決して良い趣味ではないが。
ただ、そのおかげでニコルを助けることが出来たんだ。それだけは感謝しておこう。
「ハクさん、どうしますか? グランさんを助けるにはあの魔族の人と戦うことになりますが……」
「うん、シャルは魔法を準備しておいて。遠慮はいらないから全力でね」
「はい、わかりました」
とシャルに指示を出したもののあとはどうするか……。
「ハク、そろそろ入らないとグランがマズくない?」
ミーナが言ってくる。たしかに中から殴ったりするような音が聞こえてきている。
「そうだな。みんな、戦闘準備を頼む。ニコル、戦えるか?」
「うん、ボクなら大丈夫!」
「ミーナ、前もってニャーに強化魔法を。魔族の姿を見たら全力で妨害魔法を使ってくれ」
「わかったわ」
「ニャーは……まぁ全力で戦ってくれ」
「任せるにゃ」
これで指示は大丈夫だろう。
俺は扉を開け、隠し部屋の中に入る。




