真エビナフダンジョン、第一階層
簡単に周囲を見渡せるこの場所では姿を隠すのも一苦労だった。
まして、俺たちは五人組……。しかも好戦的なミーナとニャーがいる。
「どうして隠れないといけないのよ!」
「戦うかにゃ? 戦っちゃうかにゃ?」
どうしても戦う方向へと持って行こうとする。
とその時にブラッドウルフに見つかりそうになる。
思わず二人の頭を無理やり下げる。
「へぶっ」
「にゃにゃ!?」
無理やり頭を下げさせたので、二人は驚きの声を上げる。
俺自身も頭を下げ、見つからないように警戒する。
幸いなことに気づいたのが早かったおかげでブラッドウルフに見つからなかったようだ。
ただ、この状態だといつか見つかるだろう。
階段の位置さえわかれば……しかし、階段の位置は【詳細鑑定】では出てこなかった。
やはり、何か条件があるようだ。
クドゥの実が【詳細鑑定】だと位置の表示がされた。
でも、階段となると表示されない。
小さなものしか表示されない……とかか?
試しにクドゥの実ももう一度【詳細鑑定】をしてみると、このエビナフダンジョン、三階層からその反応が感じられた。
おそらく魔族の男はそこにいるのだろう。
そして、しばらく見つからないように階段を探し回り、ようやく発見したのだが――。
「魔物、いますね……」
「あぁ、あれは回避出来ないな」
階段のすぐそばにブラッドウルフが三体、うろついていた。
見つからずに階段を降りるということは出来ないだろう。
「魔法、使いますか?」
シャルが聞いてくる。やはりそれしかないかな?
そう思っているとニコルが俺の服を少し引っ張ってくる。
「よかったらボクにやらせてくれないかな? このくらいの魔物も倒せないようじゃ足手まといにしかならないだろうし」
そうはいってもニコルに倒せるとは……そう思ったのだが、今のニコルは自己強化魔法を十分すぎるほどかけていた。もしかして……という気持ちもあった。
「わかった、ただ無理をするなよ」
「うん、大丈夫だよ」
「あと、ニャーはニコルのフォローに回ってくれ。ミーナはニャーに強化魔法を。シャルは魔法を使う準備を。あとは待機だ」
ニコルを生かす形で指示をしていく。
まずはニコルがブラッドウルフへと向かって行く。その速度はニャーに追いつくかもしれないほどだった。
しかし、その速度で迫っていても先にブラッドウルフが気付き、ニコルの攻撃を躱してしまう。
そして、ニコルが姿勢を正す前にブラッドウルフがその鋭い爪で切り裂いてくる。
いや、切り裂いたかのように見えたが自己強化をしっかりかけたニコルにそれは通用しないようだ。
本人は思わず目をつぶってしまっていたが、その爪は刺さらずに服を少し裂いただけにとどまっていた。
ニコルは何があったのかわからずに首を傾げ、相手の攻撃が効かないことが分かるとニッコリと笑い、手に持った短剣でブラッドウルフを切り裂いていく。
スキルを持たないので時間はかかったが、結局かすり傷以外傷が付くことなく、三体のブラッドウルフをニコル一人で倒してしまった。




