真エビナフダンジョン
皆が起きた後、急いでダンジョン前までやってきた。
しかし、ダンジョンの様子が今までのそれとは違い、沢山の葉がついていた大木が今は枯れ木になっていた。
これは魔族が入った影響なのだろうか?
グランが入ったのかどうかを調べるために俺たちもここに入らざるを得ないだろう。が、今まで以上に警戒した方が良さそうだ。
俺は自分のカバンの中から以前ニャーが使っていた短剣を取り出し、それをニコルに渡す。
突然のことで呆然としたニコル。
「ここは魔物が出るからな。なにか武器を持っていたほうが安心出来るだろ」
「そっか……そうだよね。うん、ありがとう」
短剣を大事そうに抱える。ただニコルには【短剣】スキルがないため、戦力としてはあまり期待出来ないだろうな。
そして、覚悟を決めると俺たちはダンジョンの一階層へと降りていった。
以前は沢山の冒険者がいて魔物の姿なんて見えなかった一階層……しかし、今日は誰一人として冒険者の姿がなかった。
そして、闊歩する魔物の姿が見える……のだが、その相手が問題だ。
ブラッドウルフ――真っ黒な毛並みと血のように赤い瞳を持つウルフ。それがこの階層の魔物のようだ。
そして、ダンジョン内の様子も変わっている。
以前は緑生い茂る空間だったが、今は枯れ草と砂塵が吹き荒れる砂漠のような空間が広がっていた。
「一体どうなっているんだ?」
あまりの変貌ぶりに俺は困惑する。
しかも、ここの魔物――ブラッドウルフ。どう考えてもこんな低層階を歩く魔物ではないだろう。
【詳細鑑定】をした俺の感想がそれだった。
『ブラッドウルフ、レベル15』
【咆哮、レベル8】
【俊敏、レベル7】
【爪術、レベル9】
【索敵、レベル11】
俺たちだけで相手にするのは苦しいだろう。
グランを探すだけが目的なんだから、むやみな戦いは避けておきたい。
ただ、この【索敵】スキルのレベルを考えると見つからずに進む……なんてことは出来ないだろう。
それなら——。
「シャル、魔法の準備だけしておいてくれ」
「はい、わかりました」
もし見つかった時を考えてシャルに指示だけしておく。
「ご主人様、ニャーは? あの魔物倒してきたらいいの?」
俺がシャルにだけ指示を出したので、うずうずしながらニャーが聞いてくる。
ただニャーの動きにもついてこれそうな魔物だからな。
下手に任せて怪我でもされたら困るか……。
「いや、この場はなるべく戦わないようにしたい。ニャーは接近してきた魔物だけ相手をしてくれ」
「うぅ……、仕方ないにゃー」
不満げな表情を見せるニャーだったが、渋々従ってくれる。




