完治
魔法を使い続けたことでどんどんと自己強化魔法のレベルが上がっていく。
本当なら光魔法の方も上げてあげたいところだが、ここで使えないからな。
レベル【1】だと基本攻撃魔法とあと光魔法だと聖魔法と同じく回復魔法を使えるだけだからな。
怪我もしていないものに回復魔法をかけるなんて論外だし、攻撃魔法はもっと論外だ。
そう考えるとただ自分の体を強化するだけの自己強化魔法しか選択肢がなかった。
そして、気がつくと自己強化魔法のレベルは【7】まで上がっていた。
そこでようやく過魔吸病の表示がなくなった。
ひとまずはこれで大丈夫か。ただ【魔力過剰供給】スキルがある以上常に魔法を使い続けないといけないだろう。
「これで体の方は大丈夫だと思うけど、毎日……そうだな。暇があったら今の魔法を唱えてくれ。これで病気が再発することはないからな」
それを聞いたあと、少女は手を何度も開いて閉じて、そのあと、ベッドから降りてその場に立ってみた。
それでも大丈夫だとわかった少女はその場でぴょんぴょんと跳ね、部屋の中を走り始める。
「しんどくないよ。うそっ、信じられない」
嬉しそうに笑顔を見せてくれている……と思う。
何重にも強化魔法を重ねた少女の速度は相当早く、顔の表情は読み取れなかった。
「お、おい、何騒いでるんだ!?」
部屋の外に追い出したグランが中の騒音が気になって入ってくる。
「あっ、お兄ちゃん」
その姿をみた少女がグランへ向かって突っ込んでいく。
本人からしたら飛びついただけなんだろうが、その威力は凄まじかった。
「ぶへらっ」
それをまともに受けたグランはそのまま部屋の外まで吹き飛ばされていった。
戦闘スキル持ちで【体力】スキルまであるグランをこうもあっさり……。この子、使えるな。
飛んでいったグランは気にせず、俺は冷静に少女の力を分析していた。
グランも大した怪我はなくすぐに部屋へと戻ってきた。
「一体どういうことだ? さっきまで歩くこともできなかったのに……」
困惑するグランに病気の症状について説明する。
「なんだ……、そんなことで治ったのか……。それじゃあ今までの俺の苦労は一体なんだったんだ?」
グランが喜びながらも少し落ち込む。ただ、元気そうにしている少女を見て、苦笑いを浮かべていた。
まだ病み上がりなので無理はしないようにと注意した後、俺たちは自分の部屋へと戻った。
そして、次の日。
俺たちは鑑定所の仕事をしていると、グランとその妹も一緒に鑑定所へとやってきた。




