クドゥの実
「そういえば四人パーティだったけど、俺と喋っていたのは一人だけで、後の三人は顔も隠していたな」
顔を隠していたのなら仕方ないか。
「その時にクドゥの実について教えてもらったんだ。能力が上がって病気も治るその実について……」
クドゥの実……それが地下五階層で採れる実の名前か。
『クドゥの実』
——っ!?
突然俺の目の前にその表示が現れる。
なんだこれ?
疑問に思いつつ、その表示へ視線を向ける。
『クドゥの実』
【一時身体強化、レベル9】
【時間経過後、魔物化】
〈位置情報を表示します〉
これはクドゥの実の詳細な内容?
それに俺が覚えているこの付近の地図に点のようなものが現れる。もしかして、この場所にクドゥの実があるのだろうか?
半信半疑ではあるもののこれが本当なら大変だ。
ほとんどは俺が行ったことのない場所を指しているが、三つだけこの村の中にあった。
一つは俺は行かなかったが、値段の高い宿屋を指している。
あとの二つは道具屋さん……だったか?
この村に来てから買い物に行っていないのであってるかどうかは不安だが、多分そうだ。
もうこの村を出て行ったと行っていたが、もしかしてまだこの村にいるかもしれない。
「よかったかもしれないな。そのクドゥの実、あまり良いものではないな」
「知っているのか?」
グランは俺に期待の眼差しを向けてくる。
病気が治る効果はないのでグランは完全に騙されたということだ。言うのははばかられるが、言わないわけにはいかない。
「あぁ、一時的に能力が上がるが、その後魔物になってしまう恐ろしい実のことだ」
「――なっ!?」
あまりに予想外だったのだろう、グランは思わず言葉に詰まった。
「実物は見たことがないし、グランが見たのは別の実だったのかもしれないが、クドゥの実はそういう効果だぞ」
「な、なら俺が見たのは別の――」
「でもクドゥの実と言ったんだろう」
とにかく、一度クドゥの実を持っている人のところに行ってみようか。
危険があるだろうし、みんな一緒に……。
俺たちは高い宿屋の前へとやってきた……が。
「おう、兄さん。この宿に泊まっていくか? 今なら安くしておくぞ」
勧誘がうるさい……。もう宿が決まっている、会いたい人がいるから来たと何度も行っているのだが、聞く耳を持って貰えない。
なんとかそれを振り切って該当の部屋へとたどり着いた。
クドゥの実はまだちゃんとここにあった。
つまり、この中にこれを持ち込んだ人が……。
思わず息をのむ。
しかし、部屋の前でいつまでも待機しているわけにもいかない。
覚悟を決めて俺は部屋をノックする。
「はーい」
中から聞こえてきたのはまだ若い男の人の声だった。




