エビナフダンジョン、第四階層
エミリの鑑定の様子を見ていたがまったく問題がない……どころかただ鑑定所をするだけなら俺以上の力を持っているかもしれない。
エミリのスキル【速筆】は紙に文字を書き上げる速度が速くなるものだ。事務仕事なんかには使えるものだが、鑑定結果を紙に書く鑑定所の仕事でもそれが思う存分発揮されていた。
本人はそのことに気付いていないようだが、既に俺の【詳細鑑定】にはエミリの【速筆】のレベルが【5】と書かれている。
この短期間でよくそこまで成長させたものだと感心してしまった。
これなら安心して任せられるとエミリに言う。
そして、翌日。
俺たちはいつもの格好をしてダンジョンの前にやってきた。
すでにグランは準備を終えているようで、俺たちが来るのを今か今かと待っていたようだ。
グランが持っているのは前とは違い、俺から見てもいいものだとわかる槍だった。
「さて、それじゃあいつもみたいにハクが指示出してくれるか? 俺が先陣を切るから」
確かにそれが一番やりやすい。でもグランはそれでいいのか?
「そのためにハクを呼んだんだ」
微笑みながら言うグラン。
やはり俺が戦えないことを知ってるじゃないか! それならあの模擬戦はいらなかっただろ、と言いたくもなる。
とにかく気を取り直して、俺たちはダンジョンへと入っていった。
やはり前衛がニャー一人からグランも加わったことで戦い方が安定し、何の苦戦もすることなく地下四階層へとたどり着いた。
もう一人仲間を探してもいいかもしれないな……。
この安定した戦いを見ているとつくづくそう思えてきた。
エビナフダンジョン、第四階層——ここのダンジョンは内装が変わらないのだろうか? ずっと続く見慣れた風景がこの階にも広がっていた。
そして、ここにいるモンスターは……。
「なんか大きなお花が歩いていますね」
感心したように言うシャル。確かに真っ赤な色をした大きな花になぜか手と足がついて歩いていた。
まぁ動きはゆっくりで俺にも十分対応できそうなくらいなので問題はないだろうな。
そう思いながら【詳細鑑定】を開く。
『アカラフ、レベル3』
【毒花粉、レベル5】
【麻痺花粉、レベル5】
【混乱花粉、レベル5】
【火に弱い、レベル8】
モンスターを見てもそれほど強くないなぁと思いながらスキル欄を見る。
すごく厄介なスキルばかり……しかもどれもレベルが高い。
花粉ってことは歩いているだけでもばら撒いているんだよな?
念のために俺は仲間たちを【詳細鑑定】する。
シャル、ニャー、ミーナは何も異常がない。
これなら安心だな……。
そう思い、グランも調べる。
【麻痺毒にかかっている】
うん、よく見ると微妙に体を震わしているもんな。
ただ、どうしてグランだけ?
不思議に思いつつシャルに回復魔法を唱えるように頼む。




