鑑定所の新人
「さすがにお母さんに聞いてみないとわからないよ」
エミリのその言葉で一旦ここで働いてもらうというのは保留になった。
宿の売り子みたいなこともしていたわけだから当然といえば当然か。
ただ、これだけは念には念を入れて伝えておく。
「くれぐれも【鑑定】スキルを持ってることを誰にも言ったらダメだよ!」
するとエミリは頷いてくれていた。
ひとまずはこれで安心だろう。
エミリが部屋から出て行くと俺は残りの人たちをさばいていった。
そして、今日も鑑定所が終わり、宿へと戻ってくるとエミリが宿の女将さんと話し合ってるみたいだった。
「あんたが鑑定所? そんなことあるはずないじゃない」
「で、でも……、本当にやらないかと頼まれたんだって。それにほらっ、鑑定結果見てよ!」
必死に鑑定結果が書かれた紙を見せるエミリ。
しかし、女将さんは半信半疑だった。
「こんなのどうとでも書けるわよ」
「でも……、あっ、お兄さん……、お兄さんからも言ってもらえませんか?」
エミリが俺を見つけると女将さんの前へと連れていく。
「え、えっと……」
いきなり女将さんの前に引きずり出された俺は困惑して口をつぐんでしまう。
すると女将さんは慌てて俺に謝ってくる。
「お客様……申し訳ありません。この子がとんでもないことを……」
女将さんがエミリの頭を押しつけながら一緒に頭を下げて謝ってくる。
「い、いえ、エミリに鑑定所で働かないかと言ったのは俺ですから、困惑させてしまったみたいで申し訳ありません」
俺も同じように頭を下げると女将さんが驚いた顔を見せる。
「つまりこの子の言っていたことは?」
「はい、本当です」
「ねっ、言ったでしょ。おにいさんが私を勧誘してくれたの。せっかくだから一緒に働いてみたいの」
「えっと……本当に良いのですか?」
女将さんが心配そうに聞いてくる。
「はい、というより鑑定所をしないともっと大変なことになりそうですから……」
「そうよね。この村だと【鑑定】を使える人が不足してるみたいだもんね。もし本当のことなら大変なことになるわね」
「鑑定の結果は俺が保証します」
そう言うと女将さんは少し悩み出す。
そして数分、そのまま待っていると女将さんが真剣な表情で言ってくる。
「わかりました。娘のことをお願いします」
「やったー」
それを聞いてエミリは嬉しそうに手を上げる。
そして、俺に抱きついてくる。
「ありがとう、おにいさん」
すると、シャルやミーナが少し慌て出す。
どうしてここまで喜ばれているのだろうと考える。まぁ、思い当たる節はあるけど。
俺は冒険者になりたくてやめてしまったが鑑定所は賃金がよく、【鑑定】を得ることが出来たら誰でもつとめることが出来る。危険もないので人気の職業ではあった。
まぁ、エミリが普通に働けるようになると俺も楽になってダンジョンに行きながらエビナフの実も増やすことができるかもしれない。
そんなことを少し考えながら俺たちは自分の部屋に戻っていった。
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