【鑑定】スキル持ち
ただ、これで実の効果ははっきりとしてきた。
取れるスキルは自分が経験したもので、取得の確率もかなり低いようだ。
まぁ、それでも実を食べただけでスキルを得ることが出来たらありがたいが。
ただ、食べれば高確率でどんなスキルでもとれると思われているのだろう。
今の現状をなんとかしないと鑑定所は人であふれたままだろう。
翌日も同じように人が並んでいるのを見て俺はそう思った。
そして、順番に鑑定を行っていく。
もちろんスキルが増えずに怒り出す人もいたが、ノービスさんが睨みをきかしてくれているおかげで特に問題なく鑑定は終わっていく。
これは見た目だけでも怖そうに見える人を雇うと良いかもしれないな。
そんなことを考えながら鑑定を進めていくと宿の少女の番が来た。
「うー、鑑定所って初めて来たからドキドキするなぁ」
どうやら初鑑定らしい。まぁそんなに緊張するようなことでもないし、見てたらこっちまで緊張しそうなので早く済ませてあげる。
【鑑定、レベル1】
【速筆、レベル1】
うーん、これは困ったな。本人に伝えてあげると喜ぶだろうけど、今の俺でもこんな状態だ。
何も知らないこの子に【鑑定】スキルがあるなんて伝えたら、表にいる人らが群れのように襲いかかってくるだろう。
俺は首を傾げ、どうするか判断に迷っていた。
それを緊張した面持ちで見つめる宿の少女。
「そういえば名前聞いてなかったね」
判断がつかないので別の会話にすり替える。
「もう……、何度も言ってるよ。私はエミリだよ」
呆れ顔で言ってくるが初めて聞いた気がするのは気のせいだろうか?
そして、また場が静寂に包まれる。
「(おい、どうしたんだ? 早く書いて渡してやれ。次がつかえてるんだ)」
ノービスさんが小声で聞いてくる。
「(いえ、ちょっとスキルが今の現状だと危ないもので……、伝えるかどうか迷ってるんですよ)」
「(どういったスキルだ?)」
「(鑑定です)」
「(なるほどな。ならこういうのはどうだ? しばらくここの鑑定所で見習いとして働く。そして、一人前になったらここを任せるというのは? 冒険者のお前はいつまでもいるわけじゃないんだろう?)」
やっぱりそれが一番無難かな?
俺は覚悟を決めて、エミリに言う。
「エミリはここで働く気はないか?」
それを聞いたエミリは一瞬固まる。
何を言われたのかわからないだろう。鑑定に来たはずが職を勧められてるわけだからな。
「……どういうことですか?」
ようやく口を開くことができたエミリが聞いてくる。
そこで俺はようやくエミリが持つスキルを見せる。
【速筆】はともかく【鑑定】の方はさすがのエミリでも驚いたようだ。
「えっ、でも……、私【鑑定】なんてしたことないよ……」
困惑している様子だった。【鑑定】スキルは相手を見て、【鑑定】を使うぞとしっかり思わないと発動しない。
持ってるかどうかもわからない時に【鑑定】を使おうとしても心のどこかでそんなもの持ってるはずないと思って使えない。
だから今まで発動しなかったのだろう。
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