大盛況
すでにここに来るだけで息も絶え絶えになっていた。
しかし、これくらいでへこたれるわけにはいかない。
これからあの人数をさばいていかないといけないのだから……。
俺は気合いを入れ直すと早速ミーナと応援にニャーを付け、客の誘導をしてもらう。
まずはスキル取得効果のある実を持ってる人から優先で順次この中に入れていくように頼んだ。
すると、まず最初に全身を鎧で着込んだ男の人が入ってくる。
白銀で汚れ一つない鎧を着ているところを見ると買ったばかりか、ダンジョンなんか入ったことのない初心者なのだろうと想像出来る。
【白色冒険者証、レベル1】
【剣術、レベル1】
うん、やはり初心者のようだ。でもそんな人がどうして実を?
たしか好みが取れるダンジョンに入るためには冒険者証レベル【5】以上必要なはずなのに……。
お金か……。
お金がない自分のことを考えると少しガックリとくるものの仕事をきっちりとこなす。
レベルの部分は抜いて、出てきたスキルを紙に書く。
この人の場合は【剣術】とだけ書いてそれを渡す。
当然それをみた男の人は俺の服を掴もうとしてくるが、シャルが杖を向けてくれたので、男の手がそこで止まる。
「あれだけエビナフの実を食べたんだ。スキルがこれ一つのはずがないだろ!」
その男は俺にくってかかってくるが鑑定結果は嘘をつかない。
それが【鑑定】というスキルだ。まして俺の場合は【詳細鑑定】。
普通の【鑑定】より更に詳細に表示される鑑定だ。
間違えるはずがない。
ただ、そこまで言うのならともう一度だけ調べておく。鑑定所をする以上間違いだけは避けないといけないからな。
【白色冒険者証、レベル1】
【剣術、レベル1】
やはり鑑定結果に間違いないようだ。
「やはり間違いないですね。あなたのスキルは【剣術】だけになります」
すると男は「ケッ」とツバを吐きつけてくると乱暴に扉を開き、外へと出て行った。
そんな態度を取る人が一人ではなく複数人いた。
それが鑑定所を遅らせている理由かもしれない。
それにしてもどういうことだ? たしかにエビナフの実を食べると得ることが出来るらしい。
それは鑑定中に何人も喜んで話してくれた。
彼らは実際にスキルを得た人たちだったが。
どうもエビナフの実を食べても百パーセントの確率でスキルを得ることが出来るわけじゃないらしい。
ただ、これ以上は実際に実を見てみないことにはわからない。
とにかく今は並んでいる人達を減らすことを考えよう。
そして、本日の営業時間が終わった。
鑑定が終わった人間は並んでいた人数の約半数と言ったところだ。
エビナフの実を持ってきてくれた人達は終わらせることが出来たので中々良いペースだろう。
俺は冒険者組合の受付に行き、本日の営業が終わったこととどうも、思うとおりのスキルが得られなかった人達が時間をかけているから鑑定所が回らないのであろうことを説明した。
そのことは冒険者組合内でも問題になっていたらしいが、具体的な解決案がないらしかった。
とにかく明日は組合長自ら俺の護衛に立ってくれることになったので一安心だろう。
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