大型ウルちゃん
町を出ると俺たちはゆっくりと歩いてシャーロッテの村を目指していた。
しかし、ものの一時間も歩くとミーナが音を上げ始める。
ダンジョンでは全然平気なのに……。
「疲れたー、なんで馬車を用意しなかったのよ」
大きな岩を発見するとそこに座り込むミーナ。
さすがに休憩が早いと思うがミーナが動いてくれないのなら仕方ない。
「しょうがない。少しだけ休憩にするか」
そう言って予定よりだいぶ早い休憩を取ることにした。
「これで今日の間に宿まで付くの?」
心配そうにシャルが聞いてくる。
普通に歩いても一日かかる距離。こうすぐに休憩を取っていては間に合うものも間に合わないだろう。
「ちょっと厳しそうだな」
俺がそう言うと、シャルのカバンに入っていたウルちゃんがクイッ、クイッとシャルと手を引っ張る。
「なに? ウルちゃん。どうかしたの?」
そんなウルちゃんを不思議そうに見るシャル。するとウルちゃんはなにかを伝えようと必死に手を動かしていた。
もちろん何を言っているのかわからない。
ただ、シャルはなにかわかったようだった。
ヒソヒソとウルちゃんと喋って、「本当にそんなことが出来るの?」と驚いていた。
そして、ウルちゃんの頭に手をあてたシャルは目をつむり、手からはなにか魔法のようなものを使っていた。その姿はいつもシャルが回復魔法を使っているときにそっくりなのだが、相手はケガもしていない古代機械人形のウルちゃんだ。
見た目はかわいいぬいぐるみなので、ケガのしようもない。
一体何をするのだろうか?
興味本位に眺めていると、シャルの魔法を受けたウルちゃんは次第に大きくなっていった。
「うそ……!?」
その様子に俺は驚き声を上げる。
ウルちゃんをそのまま大きくしたような巨大な生物が目の前に現れる。
「うん、うまくいった……」
どこかホッとした様子のシャル。これで成功みたいだ。もしかして、新しいスキルか?
そう思った俺はシャルを【詳細鑑定】してみることにした。
【白色冒険者証、レベル5】
【聖魔法、レベル2】
【火魔法、レベル3】
【魔法威力強化、10倍】
【人形使い】
うん、以前調べたときと何も変わっていない。
どういうことだろう?
そう思っていると急に俺はウルちゃんに咥えられる。
「な、何するんだ!」
じたばたと動き、なんとか離れようとするものの離れることが出来ず、そのまま俺は上へと放り投げられる。
そして、そのままウルちゃんの背中へと乗っかる。
「あれっ? ここって?」
ぬいぐるみだけあってもふっとした背中。そこに乗った俺は困惑しながらも下にいるシャルたちに手を振る。
するとウルちゃんは俺以外も口にくわえては背中に乗せていった。
そして、全員が乗るとウルちゃんはシャーロッテの村がある方向へ向かって走り出す。
「うん、本当に私たちを乗せて運べるんだ……」
こうなることがわかっていたのか、シャルは小さく呟くとウルちゃんの頭らへんを撫でてあげていた。




