地下十二階層
家を手に入れた俺たちは地下十二階層を目指して進んでいた。
本当なら家で留守番させておくつもりだったウルちゃんは、シャルのカバンから顔を出して一緒についてきていた。
いつの間にかそこに入っていたらしい。
ダンジョンの中に入ってから気がついたので置きに帰る訳にもいかず、仕方なく、邪魔をしないという条件でシャルのカバンの中に収まった。
そして、ようやく地下十二階層への階段を見つけた俺たちはそのまま下の階層へと向かう。
クルードフダンジョン、第十二階層——ここは十一階層と同じ細い通路と広い空間からできていた。この階層の通路の壁は土で出来ており、通路内ではあまり強い攻撃は使えなさそうだ。
そして、ここを闊歩しているのは風属性の魔法も操るウルフ——エアリアルウルフだ。
種類は一種類だけだが、何体か集団で行動しているため、厄介な相手だ。
いつものようにミーナが本を読んでくれる。
「しかし、魔法を使ってくるのか……。早めに見つけることが大事だな。ニャー、周囲をしっかり警戒してくれるか?」
「わかったにゃ」
ニャーが真剣な表情で大げさに顔を動かしながら周囲を警戒してくれる。
すると、急に尻尾をピンと立てた。
「この分かれ道、右に行くと魔物がいるにゃ」
ちょうど分かれ道でよかった。魔物のいない方に進める。
ニャーの言葉を聞いた俺たちは魔物がいない方の通路を進んでいく。
しかし、いつまでも魔物に会わない……ということはなく、さすがに魔物がいる空間を通らざるをえなかった。
「この先、魔物がいるにゃ。一、二、……五匹くらいいそうにゃ」
五匹か……結構多いな。
ニャーなら二匹くらい引きつけられるかな?
俺がなんとか一匹担当して……それでも二匹余るな。
さすがにミーナとかじゃ一匹引きつけるのも大変だろう。
なら……。
「シャル、魔物の姿が見えたら魔法で攻撃してくれ。それで二匹以上倒せたら魔物の相手をする。倒せなかったら逃げるぞ」
「責任重大ですね……」
シャルの顔が少し強張る。
そんなシャルを慰めるようにウルちゃんが頭を撫でていた。
そして、目の前にエアリアルウルフが見えるところまでやってきた。
青白い毛並みをした狼型の魔物。集団で行動しているのは厄介だが、それほど強そうにはみえない。
『エアリアルウルフ、レベル6』
【咆哮、レベル3】
【風魔法、レベル0】
風魔法使えるって本当にただ使えるだけって感じみたいだ。
レベル0だとまともな攻撃力はないだろう。
同じ風魔法レベル【0】のミーナの顔を見る。
「何よ」
「なんでもない……」
ミーナが睨んできたので、俺は視線をエアリアルウルフの方へと向けた。




