ウルちゃん
曰くの原因がわかったことで俺たちは問題なく部屋で休むことが出来た。
夜中の間も古代機械人形は掃除をしてくれていたようで朝、俺が目覚めたときにはすでに埃一つないきれいな家に早変わりだった。
しかし、肝心の古代機械人形の姿がなかった。
「あれっ? あの人形はどこ行ったんだ?」
「そういえば私も見ていないわ」
ミーナがそう答えてくれる。ニャーも首を傾げていたので見ていないのだろう。
すると、シャルがオドオドとテーブルの上になにかを乗せてくる。
「あの……これ……なんですけど」
シャルが乗せてきたのはウルフをかわいくデフォルメしたぬいぐるみだった。
もしかしてシャルが持っているのかと思ったが違うようだった。
「そのぬいぐるみがどうしたんだ?」
そういうと突然ウルフのぬいぐるみが二足脚歩行し、俺の方へと寄ってくる。
「えっ!?」
そして、そのぬいぐるみが必死に俺の頭をよじ登ってくると頭をポンポンと叩いてくる。
どうしてぬいぐるみが動いているんだ?
もしかして新しい魔法……ではないよな。【人形使い】のスキル効果か?
俺が首をひねっているとシャルがモゾモゾしながら答える。
「それ、古代機械人形です」
「えっ!?」
なにかおかしな言葉が聞こえた気がする。
これが古代機械人形? どう見ても昨日と姿が違うんだけど……。
訳がわからずにシャルを見ると更に詳しく説明してくれる。
「昨日の人形が怖いって思ったら、気がついたら私が持っていたこのぬいぐるみに魔核が移ったみたいなんです」
もしかして、古代機械人形が姿が怖いと思ったシャルのそれを命令だと思って、別の姿に乗り換えたのか?
まぁこれで怖くないのならいいのか?
なぜか俺の頭の上でくつろいでいるぬいぐるみの古代機械人形。
それを見て、シャルたちは笑みを浮かべていた。
「そういえば、こいつに名前はあるのか?」
何でもないことを聞いたつもりだったのにシャルは顔を赤めて小声で言う。
「……ちゃんです」
しかし、その声はあまりに小さくて聞き取れなかった。
「えっ? なんて言った?」
「ウル……ちゃんです」
今度はなんとか聞き取れた。この子の名前はウルちゃんというのか。
ただそこまで恥ずかしがることはないのなと思いながら頭に乗っているウルちゃんを軽く小突きながら言う。
「よろしくな、ウルちゃん」
するとウルちゃんもよろしくと言っているのだろう、俺の目の前にやってきて片手をあげてくれた。
なので俺はその手を取り、小さく上下に揺らしておいた。
しかし、ウルちゃんの名前を言う度にシャルが顔を真っ赤にして照れていた。
どうしたのだろう?




