圧倒
その合図を見たニャーは嬉しそうにランドルフに斬りかかる。
といっても流石に毒牙のナイフを使うのは気が引けたようで訓練用の木の短剣を使っているようだった。
力一杯斧を振りかぶってくるランドルフ。
しかし、振り上げた時点でニャーはランドルフの背中側に回っていた。
どこに行ったのかと困惑しつつも振り上げた斧は止まらずに誰もいない地面へと振り下ろされる。
そして、その間にランドルフの後ろに回り込んだニャーが木剣で斬りかかる。
はっきりと見えたわけじゃないが、複数回切りつけていたのが見えた。
まぁ、木剣を使っているのでランドルフの動きが止まらない。
普通に毒牙のナイフを使っていたらもう倒していたはずなのに……。
斬りかかっては離れるニャーに対して、ゆっくりと向かって行くランドルフ。
そして、ニャーの腕を掴み、ニヤリと微笑んだ。
「お前、すごいな。さすがレベル【6】の冒険者だ。たしかに今の俺じゃ勝てないわけだ。色々とすまなかったな」
ランドルフはそれだけ言うとニャーの手を離す。
何があったのかわからずに目をキョトンとさせているニャー。
そして、ランドルフが俺の前へとやってくる。
「疑って悪かったな。俺もまだまだだったということだな」
俺と握手をした後、ランドルフは笑みを浮かべながら出て行った。
満足してくれたようでよかったな。
そして、元の冒険者組合へと戻ってくるとこれ以上俺たちに絡んでくるような人はいなかった。
俺たちは受付のお姉さんに魔石の報酬を受け取ると俺たちは冒険者組合を後にした。
さすがにあれだけ強い魔物と魔族の魔石。更に依頼分の報酬も合わさって相当な金額になっていた。
これならそろそろ安めの家なら買えるかもしれない。
「これから家を見に不動産屋へと行こうと思うけどいい?」
確認の意味を込めてシャルたちに聞いてみる。
もちろん、シャルとニャーは全く反対しない。どことなく嬉しそうに頷いてくれる。
問題はミーナだった。
この町に家があるミーナは毎日宿に泊まらずに家に帰っていた。
俺たちが家を持ったとしても当然そうするだろう。
そう思っていたが、色々な表情を代わる代わる見せていたミーナは最後に頷いたかと思うと、大きな声で言い放った。
「私も一緒に行くわよ!」
本当にいいのかと思ったが、ミーナの目を見てるとこれ以上何も言えなかった。
そして、俺たちは不動産屋へとやってきた。
もちろん、色々な家の間取りが並んでいたが、さすがに大きな家は高いなぁ。
俺たちが買えるのは町外れにあって、門までの距離が遠い家だけだった。
みんな住むとなったら部屋数が四つとリビング、キッチン等の部屋が必要だからな。
元々住んでいたのは変わり者の老人だったらしい。
かなりの金持ちだったらしいが、辺鄙なこんな場所に家を建てて孤独にその生涯を過ごしたらしい。
どういう家なのか見に来た俺たち。
目の前にあるのはさすが元金持ちの家、その見た目はミーナの家にも引けを取らない。
これってすごい掘り出し物の家なんじゃないのか?
そう思いつつ、その家の扉を開ける。




