巨大ワニ
歩いてきた魔物は巨大ワニだった。
『ビッグアリゲーター、レベル25』
【斧術、レベル12】
【体力、レベル8】
【近接攻撃に強い、レベル8】
【魔法攻撃に弱い、レベル2】
まだ俺たちに気づいていないようだ。気づかれたらその瞬間逃げないとダメな相手だ。
すぐに飛び出そうとするニャーを制止する。
「ちょっと様子を見よう。あいつ、相当強いぞ」
俺の言葉を聞いてシャルが少し怯える。
俺たちのそばに寄ってきたビッグアリゲーター。何かを探すかのように辺りを見渡している。
もしかして気づかれたか?
俺はグッと息を飲み込む。
無意識のうちに手は剣の柄を触っていた。
しかし、ビッグアリゲーターは俺たちに気づくことなくどこかへと行った。
「はぁ……、なんとかどこかへいってくれたな」
俺は額から流れる汗を拭うと人心地つく。
「でも、どうしてあんな奴が?」
「さぁ、それはわからないけど、もしかすると行方不明になった人と関係がある……わけないか」
さすがにあんなのに見つかっていたら命がないよな。
そして、俺たちはビッグアリゲーターに見つからないようにあいつが行った方向と反対の方向に進んでいった。
しばらく進むと再びニャーが話しかけてくる。
「また何かいるにゃ」
またかと思いながら俺はニャーが指差す方向を【詳細鑑定】する。
『フェアリープリースト、レベル8』
【聖魔法、レベル4】
【強化魔法、レベル4】
【魔法全般に強い、レベル3】
【近接攻撃に弱い、レベル10】
今度は別の魔物だった。また小柄でニャーでも当てられるかどうかほどの大きさの魔物。しかし、一度倒しているおかげで今度はあっさりと倒すことができた。
「当たれば簡単にゃ」
ニャーが笑いながらいう。その当てるのがすごく難しいんだけどな。
俺も何度か攻撃してみたが一度も当てることができずに、少し落ち込んでいた。
そして、さらに進んでいくと降りる階段を発見する。いつもならここで降りていくのだけれど、今回はこの階層で人探しだもんな。
無理やり渡された似顔絵の紙を開き、もう一度どういった人物か確認する。
といっても髪の長い少女……ということしかわからない。この階層まで降りてこられるということはそれなりに腕の立つ冒険者のはずだが、見た目からはそのようには見えない。
まぁそんなことを言ったらシャルも冒険者には見えないもんな。
顔をこわばらせて進んでいるシャルの横顔を見ると不思議そうに聞いてくる。
「どうかされましたか?」
「いや、なんでもない」
シャルが俺の顔を覗き込んできたので、俺は顔を背け、先へと進んでいく。
念のためにと思って十一階層の地図も書きながら進んでいたのだが、一通り見たはずなのに女性の姿はなかった。
「あれ、おかしいな?」
俺は首をかしげる。もしかしたらこの階層にいるわけではないのか?
するとまた急に地響きが起こり出す。
またビッグアリゲーターか……。
すぐに身を隠す場所を探す。そして、通り過ぎてくれるのを待つ。




