コンビネーション
それから俺たちは毎日五階層へと赴いて、コンビネーションの特訓を行った。
さすがに四階層のロック系の魔物ではコンビネーションを試す前に倒れてしまう。
ということなので俺たちはオークの連戦を行っていた。
しかし、魔法を使いながらニャーの攻撃を生かす。そんな行動はできなかった。
やはり、一旦ニャーには離れてもらって、それで撃つ。
それしかないかな……。
そんなことを考えながら戦っていると今までしてこなかったオークの手に持つ棍棒を投げてくる……という行動に対しての反応が遅れてしまった。
「危ない!」
シャルが声を上げるが、とてもかわしきれない。
ニャーもその素早い動きで俺の下に寄ろうとするが、追いつかないだろう。
あの棍棒……当たったらとても正常ではいられないだろうな。
そんなことを思っていると突然目の前に炎の壁が現れ、棍棒を燃やし尽くしてしまう。
それも一瞬で……。
今のは?
俺は辺りを見る。すると俺の方に手を突き出したシャルの姿があった。
「はぁ、はぁ……」
少し息を荒げているのは急に魔法を使ったからだろう。
やはりシャルの魔法の威力は最高だ!
いや、俺は思い違いをしていたのか? なんで高威力を放てるシャルと相手より速く動いて撹乱するニャーを同時に戦闘させようとしていたんだ?
他に戦い方はあるだろ!
ちょっと視野が狭くなっていたのかもしれない。俺は反省し、それぞれ指示を出す。
「シャル、まだ魔法は撃てるか?」
「はい、大丈夫です」
「なら、全力でオークをブチ抜け! ニャーはオークが逃げないように動きを封じることに徹しろ! 魔法のタイミングはおれが言う」
「わかったにゃ」
そういうとニャーは早速オークに斬りかかっていった。
その間、シャルはなるべく魔法が強く撃てるように構えておく。
そして、オークがニャーの攻撃に耐え切れず、膝を折ったタイミングでシャルとニャーに声かける。
「今だ! ニャーは離れろ!」
「はい、にゃ」
ニャーが飛び避けたそのタイミングでシャルが呪文を唱える。
「△△◯△□、ファイアー」
いつもより少し威力が落ちている気がするが、それでも高威力の火の玉がオークを襲う。
元々オーバーキルだったためこれでも十分すぎるほどだ。
オークは火の玉に包まれ、倒れた瞬間に魔石へと姿を変えた。
やっぱり、このスタイルが一番合ってるな。
……あっ。
オークを倒し終えたあと、俺はとんでもないことに気がついた。
わざわざ特訓させてるのにミハエルが入り込む余地がない。どうしよう……。
考えていても仕方ないため、俺たちは一度宿に戻った。
そして、翌日。
いつも通りミハエルを【詳細鑑定】する。
【白色冒険者証、レベル4】
【剣術、レベル4】
【水魔法、レベル3】
ついにミハエルの水魔法のレベルが3になった。
これでいけるかどうかはわからないが、試しに行く価値はあるだろう。
そう思った俺はミハエルに対して一度頷く。
「っし!!」
ミハエルはガッツポーズをしながら喜んだ。そこまで嬉しかったのだろうか。
「これでいよいよダンジョンに入れるんだな!」
「そうだな」
これでようやく地下六階層のタイラントワームとまともに戦えるだろう。
そのあとはどうするか……。
そのあたりは全く決めていないし、そもそも住んでいる魔物がわからない。
日もなくなってきたのでなんとか攻略したいところだ。
ただ、強さで婚約者が決まると言っていたミーナの父親。その意図を組むならば確実に今の相手と破棄させる方法……それは。
「いざという時はその相手と直接争うしかないか……」
俺は喜ぶミハエルを横目に誰にも聞こえないようにそう呟いた。




